何事も雨降って地固まるとは…このこと?
秀治にある意味難問が降りかかる、解決したんだか?してないんだか?でも何となくだが、良い方に収まった気がする。これそ雨降って地固まる!
第7部 何事も雨降って地固まるとは・・・このこと?
私は今、渡り廊下を歩いています。 冷気が漂っている気がします。 この廊下、こんなに冷たかったでしょうか。 気のせいだ、気のせいだと言い聞かせる自分がいます。 先の見えない戦いに向かうのって、こんなに恐怖を感じるのでしょうか。 足取りが重いです、いつもなら数分で到着する距離が、永遠のように感じます。
「はあ~。」
ため息が出ます。 飛鳥はどんな情報を持っているのでしょうか。 晴希は噂と言っていましたが、本当に噂の域を出ないのでしょうか。 それにしてもあの威圧感、ただごとではありません。 この世の終わりの閻魔様でもあんな圧力は感じないでしょう。(あったことないけど。)
「はあ~。」
またため息が出ます。 もう飛鳥の部屋が見えてきました。 何故か部屋の前にいる衛兵ですら冷たい目で見ている気がする。 かなりの重症です。 でももう戻れません。 行くしかないのです。 あきらめも肝心です。 無理やり前向きになろうとする自分がいます。 はい着きました! 勝てる気がしませんが、当たって砕けましょう。
「あ・す・か・さん。 秀治、入ります。」
部屋の中に入ると、背を向けた飛鳥が窓辺に座っていた。 背中越しでもわかるプレッシャー、そろりと部屋の中央まで進む。 様子を見るが反応がない。 もう少し近づいてみる。 様子を見るが反応がない。 おそるおそる声をかけてみる。
「飛鳥に似合うと思って買ってきた彩の国の首飾りと指輪です。 とてもきれいですよ。 あと飛鳥、お茶も好きでしたよね。 奥の国のお茶とその茶葉が彩の国へ行くと紅茶として赤い色のお茶として飲まれているんですよ・・・飲んでみませんか。」
一瞬ぴくっと反応したように見えたのですが、相変わらず後ろを向いたまま冷たいオーラを出しまくっています。 もう少し近づいて、触れるぐらいの距離まで近づきました。 何かしらの反応、反撃がかえってくるかと身構えていたのですが、何もなし。
「飛鳥、お話をしませんか。 いろいろと行き違いや勘違いなどもあると思いますから・・・話をして誤解を解いていきませんか。」
ここまで近づいて話をしようと呼び掛けてもこちらを見てはくれない。 意を決して勝負に出ることにした。
「わかりました! お話をさせていただく機会すら与えていただけないのであれば、秀治はこれにて失礼させていただきます。 もうお会いしてお話することもないでしょう。 本当にお世話になりました。 ありがとうございます。」
そう言い放って立つ振りをして、飛鳥の動きを待った。 ここで動きがなかったら、本当に部屋を出ていくつもりではあった。 とうとう飛鳥が動いた。 振り向く瞬間に両腕で飛鳥をぎゅっといきなり抱きしめた。 一瞬の抵抗はあったものの飛鳥は胸に顔をうずめて泣き始めた。
「わたしは怒っているんですからね! 何の連絡もせずに聞こえてくるのは女の子の話ばかり! そんなお土産でだまされる私だと思ったら大間違いですから! でもいきなり抱きしめるのはずるいです。 こんなことされたら怒るに怒れないじゃないですか。 さみしくてさみしくて、悲しくて悲しくて、でも会いたくて会いたくて、 あなたの腕のぬくもりを感じてしまったら、愛しさのほうが勝ってしまいました。 秀治はずるいです、私がこうなってしまうことをわかってて抱きしめたんですよね。 ずるいです。」
「そんな計算高くないですよ。 とても悲しかったですが、本当に出ていくつもりでした。 振り向いた飛鳥を見て、居ても立っても居られなくて、思わず抱きしめてしまいました。 あなたがそうさせたんですよ。 ずるいのは飛鳥です。」
そのあと、堰を切ったようにしゃべり始めた飛鳥は、彩の国へ入り込んでいる間者からの報告の中にところどころ女性従業員の話が出てくるのが気になって気になって仕方がなかったそうで。 その話に尾ひれ背びれがつきまくって、秀治はその女の子といい仲になったとか、秀治はその女の子のために稀の国を裏切ったとか、その女の子と駆け落ちしたとか・・・。 とにかく良いうわさが流れてこなかったそうだ。 だれがそんな情報を流しているんだか。
「女性従業員がいるのは事実です。 とても良い子ですよ。 あと海くんといって商売上の弟子がいます。
ちょっと生意気ですぐに調子に乗るけど、頭が切れる商売人です。 二人とも仲良くしてあげてほしい
のですが・・・。」
「それは・・・構いませんが、あくまでも正室は私ですよ。 彩音と言いましたっけ・・・
その子はあくまでも側室でお願いします。」
えっ? 飛鳥さん・・・側室って言いました? 飛鳥を正室に、彩音を側室に・・・いやいやそんな羨ましい設定・・・ありえないありえない。 いやその前に、わたし結婚の約束なんてしましたっけ?
「あ・あすかさん・・・? ちょっとお尋ねしたいのですが・・・。」
「なんですかあらたまって! 飛鳥!って呼んでくれていいのですよ。」
「いや、飛鳥。 私たちいつ結婚の約束をしましたっけ? 正式に申し込んだ記憶がないのですが・・・。」
「ひどい・・・秀治・・・ひどいです。 こんな大事なことを忘れてしまうなんて・・・。」
「とは言われても・・・ほんとに約束をした記憶がないのですよ。 それはいつのことですか?」
「秀治が彩の国へ旅立つ前に、お父様との話で決まったではないですか。」
あー・・・あの時ですか・・・。 確かにそんな流れにはなっていたような気がします。 しかしあの時は、その話は後日にと殿にはお伝えしたと思うのですが。 そういえば、飛鳥も立ち聞きしてましたね。 しばらく留守をすると勝手に話を進めるのだから・・・この親子はどうしたものか。 まあその気がないわけじゃないですし、どうも元の時代に帰れそうな雰囲気もみじんも感じられないですしね。 この世界に骨をうずめる覚悟をしなければならないのかもしれませんしね。 だからといって・・・。
「飛鳥! よく聞いてください! 今は結婚どころではありません! 稀の国と彩の国の同盟を成功させて、西の国からの脅威を排除しなくてはならないのです。 しばらくは交渉と戦の連続となるでしょう。 この話は、すべて片付いてからゆっくりと話しませんか。」
「すべて終わってからとは、いつ終わるのですか? どう考えても数週間、数ヶ月で終わるとは思えないのですが。 また秀治も無事とは限らないでしょう。」
まあこの先何が起こるのか全く分からないですし、敵に私のように異世界から転生・転移してきた人間がいないとは言えませんしね。 そうなると私の命もどうなることやら・・・。 まあだからといって今日明日に結婚する理由にもなりませんが。 そうはいっても飛鳥を説得するには材料が乏しいですね。
「飛鳥、飛鳥が言う通り無事に帰れる保証はまったくありません。 だからと言って今あわてて結婚して、もし私が無事に帰ってこれなかったら飛鳥はどうするんですか。 飛鳥をひとりぼっちになんかできませんよ。」
「その時は、私も武家の娘! 秀治の後を追って自害します! その覚悟がなくて武家の家に嫁ぐことなんてできませんよ。」
やはりそうきますよね・・・だからこの時代の人間は困ります。 まあある意味美学なんでしょうけど。 それに私は武家の家の出でもありませんし。 さあ困りましたね・・・どうやって説得したらよいのでしょう。 誰か助け船を出してくれる人はいないもんでしょうか。
その時、外にいた侍女から声がかかった。
「飛鳥様、殿がお呼びです。 至急来られるようにと。」
ナイスタイミング! 先延ばしにしかなりませんが、この場から逃げることができれば対策もできる・・・かもしれません。 まずは時を稼ぎたい。
「もう! お父様ったら! こんな大事な話のときに、間の悪いったら。 秀治!この話は後程、しっかりとお答えいただきますから。」
そういうと飛鳥は部屋を出ていった。 すると侍女の横から晴希が顔を出した。 にやにやと笑いながらこちらを見ている。 その後ろに大きいガタイのくせにちょこんとひっついて晴治が顔を出した。 あんだけ鍛えて大男になってるくせして、気の弱いのは変わらないのですか。 これは間違った鍛え方をしてしまったのでしょうか。 とにかく再特訓が必要なようです。 頭を抱えて悩んでいると晴希が声をかけてきた。
「秀治さん。 ありがたく思ってくださいね。 飛鳥はこうと思うとまっしぐらなところがありますから、ああなった飛鳥に聞く耳はありません。 秀治さんも飛鳥も大好きだから、二人が結婚してくれたら、とても嬉しいです。 でも今じゃありません。 今は片づけなければならない問題が山積していますから、それを片付けてからですよね。」
晴希は順調に育っているようですね。 お父さんはうれしい!もはや親の気分です。 立派な参謀に育つ予感がします。
「ありがとう。 よくわかっているね。 それでは、次に何をしなければならないかわかりますか?」
「そうですね・・・今まで戦ってきた相手との同盟ですから・・・根回しが必要ですね。 青銅のお父様のほうは大丈夫だと思います。 私が白と言えば、白の人ですから。 問題は白蛇でしょうか。」
えっ? 青銅はそんなに簡単なの? 白蛇よりは簡単だとは思ったけど・・・どの世界も親バカは存在するということなんですね。 ということは白蛇は大殿と美弥を押さえれば、なんとかなるのでしょうか。
「早速、白蛇の攻略に向かいます。 大殿の許可は下りているようなので、白蛇の吉高さまは美弥を押さえれば簡単なのですが・・・。」
やはり吉高様も人の親なんですね。 でも晴希の歯切れが悪いですね。 それだけでは済まない何か問題があるのでしょうか。
「乾の人間は問題ないけど・・・ってとこですか?」
「さすが秀治さん。 そうなんですこの赤虎と青銅は各有力武家を掌握できているのですが・・・白蛇については決して一枚岩ではありません。 吉高様が白といっても皆が白と言うわけではありません。 むしろ黒と言う武家のほうが多いかもしれません。」
「何割ぐらいが反発しそうですか。 5割、6割ぐらいですか?」
「・・・7割から8割でしょうか。」
えっ? よく国が収まっていますね。 7割から8割も反発されたら、普通国はなりたたないですけどね。 やはり大殿のカリスマのみでなんとか保っているとしか考えられません。 そうなるとその反対勢力をどのようにこちら側につけるかですが。 そんなことを考えながら頭をかいていたら・・・。
「秀治さん、私たちに任せてもらえませんか。 私と晴治がいればなんとかなるかもしれません。」
「晴治は交渉事にはむいていないでしょう。 武力ならこの国で右に出るものはいないでしょうが。」
「交渉事は私が行います。 晴治には私の後ろで仁王立ちしておいてもらいます。 実は晴治、この数ヶ月で国内の名のある武将を全員のしてしまって・・・みんな舎弟みたいな・・・弟子希望みたいな・・・。」
「晴治は乾家以外ににらみがきくということですか。」
なんか晴治、胸張ってドヤ顔してるけど・・・力だけって言われているのわかってるのでしょうか?
「わかりました、二人に任せましょう。 ただ困ったら無理せずに私を頼るように。 わかりましたか?」
そう言うと晴希は風のようにその場から消えた。 晴治はそのあとを追うがスピードではかなわない! ただ晴治も決して遅いわけではない。 晴希が早すぎるだけなのだ。
さて今すぐ殿のもとへ行っても飛鳥とバッティングしそうなので、少し間を置くとして・・・この国の現状を見ておく必要がありそうです。 晴希や晴治の成長ぶりほどではないにしても、あの二人が引っ張ってきたメンバーです。 どれくらい使えるのか、どのくらいの実力なのかを把握しておかないと作戦の一つも立てられないですからね。 早速、久しぶりの鍛錬場へと向かうこととする。
鍛錬場へやってくると、私が知っている鍛錬場はそこにはなかった。 すべてが作り替えられていて、というよりすべてがアップグレードしているのだ。 高さにしても幅にしても負荷にしてもすべてが倍近くにアップグレードされていた。
「あの馬鹿正直ども・・・勝手に回数を増やすだけでなく・・・負荷までかえて・・・。」
とぶつぶつ独り言を言っていると、一人の女の子が近寄ってきた。
「あの・・・違っていたらすみません・・・八森様でいらっしゃいますか。」
「はい、確かに私は八森ですが。」
そう伝えると、その女の子は目を輝かせながら叫んだ。
「みんなみんな! 大師匠様がいらっしゃいました! あの晴希様、晴治様の師匠でいらっしゃる八森大師匠様がいらっしゃってくださいました!」
するとどこからともなくぞろぞろと出るわ出るわ、あっという間に数百人規模の集団に囲まれることとなった。 ほとんどが少年少女の類でちらほらと成年組がいるかという感じだった。 その中から少し年配の、といっても晴治たちより少し上ぐらいか。 一人の青年が目の前に割って出てきた。
「八森様、若い者たちが失礼しました。 あこがれの神でもある八森様にお会いできて、みな舞い上がっておるのです。 かくいう私も先ほどから震えがとまらない。 晴治の前ですら感じられなかった圧力に押しつぶされそうです。」
「神様とはまた大げさな。 そんなに固くならずに気楽に気楽にね。 それで君は?」
「失礼しました。 わたくし晴希、晴治より留守を預かっております、教育隊隊長の片岡一八と申します。 以後お見知りおきを。」
「丁寧なあいさつをありがとう。 この施設もかなり作り替えられているようだし、パッと見たところ君たちもかなり鍛えられているようですね。 素晴らしいです。 晴希、晴治は厳しくないですか。 不満があったら言ってくださいね。」
「滅相もございません。 不満なんてこれっぽっちもありません。 行く当ても目標も何もなかった私たちに生きる道を示していただいたお二人には感謝しているのです。 もちろんこのきっかけをくださった八森様にはお礼を申し上げるだけでは足りないぐらいです。」
あの二人にこんな指示を出したつもりはまったくないのですが・・・、しかも私を神格化して・・・何を勝手にやってくれてるんでしょうか。 まあ、この鍛え方をみると結果オーライとはいえますが。
「お礼なんていいですよ。 君たちが頑張った結果です。 もしありがたく感じてもらえているなら、その力をいずれ貸してくれると助かります。」
少し離れた場所から、こちらを睨みつけているやつがいる。 その青年の周りには取り巻きだろうか、数人の若者がにやにやと笑いながらこちらを見ている。 睨みつけている奴が若干できるかなというレベルで、取り巻きは取るに足らないレベルばかりだ。 その取り巻きの一人が群集をかき分けて近づいてくる。 すると群集が割れるように道が開き、こちらを睨みつけていた集団が近づいてくる。
「おうおう! 神様だか、大師匠様だか知らないが、何様のつもりだい! 偉そうにふんぞりかえってんじゃねぇよ!」
「そうだそうだ! でめぇなんか兄貴にかかったら秒殺だ、秒殺!」
取り巻きどもが私の周りを囲んで罵声を浴びせてくる。 面倒くさいので一瞬で一掃してやろうかとも思ったが・・・そこで先ほどの教育隊長片岡君が割って入った。
「やめないか。 失礼だろう。 お前たちもここにいられるのは誰のおかげだと思っているんだ。 いつも言ってるだろう、これ以上皆に迷惑をかけるようなら、ここから出て行ってもらうと。」
「なんだと! 兄貴に勝てない教育隊長様が偉そうに! そんな大口は兄貴に勝ってから言うんだな! 引っ込んでろ!」
なるほど、集団になって少しでも強いやつが出てくると、必ずつけあがる輩が出てくるのは世の常ですが、この集団も同じような状況におちいっているということですか。 さてどう対処しますか、話をして改心してくれるようなタイプには見えませんし・・・と考えていた矢先に後ろから刃が飛んできて、私の鼻先で止まった。 決して反応できなかったわけではなく、遅すぎてしかも鼻先で止まることもすぐにわかったので、あえて反応しなかっただけなのだが・・・。
「ふっ! わしの剣先が早すぎて反応もできないとは! 神様が聞いてあきれる! この程度とはちゃんちゃらおかしいわ!」
「君、自信を持つことは悪いことではない。 でも自信と慢心はまるで違う、そこを履き違えてはいけないよ。 あと反応ができなかったのか、見切っていたのかの判断もできないような奴が偉そうな口をたたくんじゃねぇ! とは言っても・・・ここにいる全員が判断できていないようだから仕方がないが。」
「わしの剣先を見切って動かなかったというのか! はっ!バカな! 負け惜しみを言いやがって! なら本気で打ち込んでやるから覚悟しろ!」
そういうと刀を構えて上段から打ち込んできた、と見せかけて突いてくるんでしょ、ほんとに遅くてフェイントにすらなっていない。 今度は刃が届く距離まで打ち込んできてるから、よけるかどうか対応はしなくてはならないけど・・・さて、どうしましょうか。
一瞬のうちに判断をして動いた結果は・・・みんなには次のように見えていたでしょう・・・相手が突いてきたとたんに私の体をすり抜けて、前につんのめってゴロゴロと転がっていく姿が。
何をしたかって、ただ相手が突っ込んでくるのをぎりぎりまで引き付けて、右手の人差し指と中指で相手の刀を払いながら横をすり抜け、元の位置に戻っただけ。 それを一瞬で行ったものだから、体をすり抜けたように見えたというわけ。
転がった相手は、何が起きたのか全く分からずに頭に?マークが飛んでいた。 いやその場にいたみんなでしょうか。 そこに片岡君が駆け寄ってきて・・・
「大師匠様、すごいですね! あんな動きを一瞬で判断して行動に移すなんて、私には一生かかってもできません。 晴希や晴治もできるんですか?」
「晴希ちゃんはできるかもね。 晴治は無理だな、あいつは力押しだから。 って片岡君今の見えてたの?」
「あっ、しまった!・・・ばれちゃいました? あまり目立ちたくはなかったのですが・・・。」
これはとんだ食わせ物だこと。 私にもまったくわかりませんでした。 見事な爪の隠し方です。 まさか晴希や晴治より強いなんてことはないと思うのだけど。
「片岡君、ちなみにどのくらい隠してるの? 晴希や晴治よりも強いとか?」
「まさか! あの二人は別格です! 足元にもおよびません。 大師匠様だって先ほどの動き、本気には程遠いですよね。 それでもあの動きって・・・恐ろしいくらいです。」
そんなたわいもない話をしていると先ほどの取り巻きをひっつれたガキ大将様が話に割り込んできた。
「おいおい! こっちを無視して話してんじゃねぇ! ちょっと幻術が使えるからっていい気になるんじゃねぇ! 俺が直接相手してやんよ、かかってこい!」
弱い奴ほどよく吠えるとはこのこと。 そう考えると片岡君は相当できるのかも。 ちょっとだけでも実力を見てみたいのですが・・・。 戦ってくれますかねぇ? 無理ですかねぇ? みんなに力を見せるのをよしとしていないようですから・・・ダメもとで頼んでみましょうか。
「片岡君、こいつの相手くらいだったら、本当は軽くできるでしょ。 君の力、今後のためにも少しでいいから見せてもらえないかな?」
「わかりました大師匠様の頼みとあれば、よろこんでお相手させていただきます。 勝ってよろしいんですよね。 今後のために負けるってのもあるのかと。」
「思い切ってやっていいですよ。 あの程度の奴、戦場では役に立ちませんから。 ただ戦い方はお任せします。 遊ぶも良し、一瞬で片づけるもよし、今後のあなたの立ち位置を考えて戦ってみなさい。」
そう伝えると、スイッチが入ったかのように目つき顔つきが変わった。 どうやら本気で戦う様子だ。
戦いが始まった。 一瞬で終わるか・・・と思った瞬間、私の期待は裏切られた。 片岡君・・・いきなり逃げ始めちゃった。 所々で応戦して・・・しかもへたくそに。 最後によろけながら相手の懐に入って、まぐれかのように木刀が頭にヒットして相手が気絶した。
「大師匠様! いかがでしたか? ご期待に応えられたでしょうか?」
「片岡君・・・ある意味期待にこたえてくれたといっていいかもしれませんが・・・あなたアカデミー賞ものですよ。」
「アカデミー? 何ですかそれ? まあこれであいつの面子もつぶれないですむでしょう。 ここを追い出されたとしても、取り巻きぐらいはあいつについて行ってくれると思いますし・・・負けて一人ぼっちはさみしいですから。」
なんか優しいのか、冷たいのか、わからない対応ですけど。 まあそれだけ強くなければ、あんな芸当は無理だという事実だけは変えようがなかった。 片岡君の底が見えない・・・信用していいのかどうかも判断がつかなかった。 ちょっかいを出した輩たちは、やはりばつが悪かったのかグループから自ら出ていき、町のチンピラ化してしまった。
片岡君は相変わらず優しいお兄さんを演じて教育隊を引っ張っていってくれている。 いつか絶対化けの皮をはがしてやる!
とにもかくにも戦力は整ってきているようだ。 いやまて・・・少年・成年は順調に育っているようでうけど・・・大人たちはどうなっているのでしょうか。 少し心配になってきました。 状況確認も兼ねて、そろそろ殿のもとに行ってみましょうか。
雨降って地固ま・・・・りました?
固まりましたよね・・・そうしておきましょう。