走る者
どうも 作者です!
いきなりですが、今回から名前を「山ン本」に変えて活動させてもらいます。
名前は変わっても中身は変わらないので、新しくなった「山ン本怪談百物語」をこれからもよろしくお願いします。
こちらは百物語三十一話になります。
山ン本怪談百物語↓
https://ncode.syosetu.com/s8993f/
感想やご意見もお待ちしております!
前に私が勤めていた会社は、とても転勤が多い会社でした。多い時には1年に2、3回は家を変えていたと思います。
私の日課はジョギングでした。毎日寝る前に1時間だけジョギングをするんです。これは住む場所が変わっても続けていました。
その日、会社から帰った私は簡単な夕食を済ませると、ジャージに着替えてすぐにジョギングを始めました。コースはいつも通り。家の近所を軽く走るだけの予定だったのですが…
「今日はB公園まで行ってみるか」
明日は仕事が休みということもあって、その日の私はちょっと遠くまで走りたい気分だったのです。予定を変えて、少し時間のかかるB公園まで行くことにしました。
時間がかかると言っても、いつもより15分くらい多く走るだけです。私はいつものペースで走りながら、B公園へ向かいました。
「公園に着いたら、ジュースでも買ってしばらく休憩しよう」
そんなことを考えながら走っていると、すぐにB公園の入口が見えてきた。薄暗い電灯が、公園内を静かに照らしている。
「…おや?」
公園に向かって走っている途中、私は公園の中でたくさんの人影が動いていることに気がついた。
「もう夜の9時過ぎなのに珍しいなぁ…」
公園の広いグラウンドを10人近くの人間が列をなして走っている。その様子はまるで軍隊のようで、全員が一糸乱れず綺麗に走り続けている。
「確か近所に学校があったな。大会前の陸上部が練習に来ているのかな…いや…それにしても…」
公園に近づくと、電灯の光で走っている人たちの姿が鮮明に見えてくる。その人たちの姿を見て、私は思わず足を止めてしまった。
公園を走っている集団は、中学生か高校生くらいの子どもたちであった。体操服を着ているのだが、今風のものではない。男の子は坊主頭でランニングシャツ、女の子は大きなブルマーを履いていた。
「今時まだこんなタイプの体操服があるのか?それだけじゃない…そんな子たちがどうしてこんな時間に…えっ?」
遠くから公園の集団を眺めていると、突然集団の動きが変わったことに気がついた。今までは公園の中をグルグルと回っているだけであったが、今度は公園の外に向かって走り始めたのだ。
そう、私がいる方向へ。
「ま、まずい!まずいぞっ!」
得体のしれない恐怖と危機感を感じた私は、急いでその場から離れることにした。公園に背を向け、全速力で走り出した。
「はぁはぁ!だ、だめだぁ…後ろを見てはいけない…後ろを見ては…!」
必死になって走っている私の後ろから、たくさんの「足音」が聞こえてくる。
ぺた…ぺた…ぺた…ぺた…ぺた…
私の後ろを走っている集団は、靴を履いていないらしい。そんな状態で、コンクリートの上を凄まじいスピードで走ってくるのだ。
「はぁはぁ…もうすぐだっ!もうすぐ家に帰れるっ!」
私の住むアパートまでもう少し、もう少しだ…
ぺたっ!ぺたっ!ぺたっ!ぺたっ!ぺたっ!
足音がだんだん大きくなってくる。足音が私のすぐ後ろまで迫ってきたその時、やっと目の前に自分の住むアパートが見えてきた。私はポケットから鍵を取り出すと、急いでドアの鍵を開けて部屋に飛び込んだ。震える手でドアの鍵を閉めた瞬間…
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!!
ドアを叩く音が部屋中に響く中、私は気を失いました。
翌朝、大家さんに昨日体験した事を話したのですが、音がうるさいなどの苦情は一切来ておらず、夢でも見たのだと笑われてしまった。
その日をきっかけに、私はジョギングをやめた。
そりゃこんな体験をすれば誰だってやめたくなります。でもそれ以上に怖いことがあって…
聞こえてくるんですよ。部屋の外から毎晩足音が…
ぺたっ!ぺたっ!ぺたっ!ぺたっ!ぺたっ!
数週間後、私は仕事をやめて実家へ帰ることになった。幸いにも、実家に帰ってからあの足音を聞くことはありませんでした。
もしかすると、あの集団はあの地域から出られないのかもしれません。ずっと昔から、あの場所で走り続けているのかも…
夜のジョギングには、くれぐれもご注意ください。