龍虎再誕(短編版)
とびらのさんの企画「あらすじだけ企画」への投稿作品です。
貴族向け高等学校に通うも、落第ギリギリの成績で日々を過ごしている虎人の青年アッシュは今日も魔術実技の授業をサボり裏庭で惰眠を貪っていた。そんなアッシュを見つけた幼馴染で学年主席の鳳凰人の娘ヒバナはアッシュを諭すも、アッシュは腹を立てその場を立ち去ってしまう。そんなアッシュの態度にヒバナの友人の兎人ルドラは不満を表すが、ヒバナは諦めない様子を見せる。
ヒバナから逃げ出したアッシュは避難した部室棟の倉庫で、片眼鏡に白衣という奇妙な出で立ちの龍人、モールと出会う。アッシュを一目見たモールはアッシュに才能があると言い放つが、アッシュは不快感を示しその場から立ち去ってしまった。
しかしモールはその後アッシュのことを諦めず昼夜問わず追いかけ回す。果ては魔力で反応する発信機を使われ、根負けしたアッシュはモールに自身の過去を語る。
幼少期のアッシュはこの国では下級貴族にあたる虎人の生まれながら自他ともに認める天才で、12歳で世界最高峰の魔術学校を飛び級卒業するほどの才能の持ち主であったが、実力があるが故に親の言いつけを無視して家を飛び出して冒険者となったこと。
持ち前の才能を生かして冒険者パーティとして成果をあげるも、背伸びをして受けた高難易度クエストを受ける中で呪いを受けて、両手が獣化し魔法陣が刻めなくなったこと。
それを受けて冒険者パーティを辞めやむなく家に戻り、レベルの低い貴人向け高等学校に再入学したことなどを告げる。
自分はもう終わった人間と自嘲するアッシュであったがモールは意に介さず、もしも魔術がまた使えるようになったらどうする?とアッシュを自身の研究室に誘った。
モールが研究室で見せたもの。それは誰でも疑似的に攻撃魔術が使えるようになる装備<龍の義装-息吹->の試作機であった。アッシュが言われるがままに試作機を使うと、龍人しか使えないとされているブレスのような衝撃波が右腕から発生し、的を吹き飛ばした。
驚くモール曰くこの試作機は必要な魔力が膨大で、今まで誰も起動することすら出来なかったことを告げ、しばらく使ってみて欲しいと依頼しそれにアッシュは承諾する。
しかしモールは悪い意味で有名人であった。王族・上級貴族に名を連ねる龍人でありながら研究者兼教師となった変人で、人体実験を行うマッドサイエンティスト。関わった人間は学園追放ならいい方、最悪の場合は命を落としかねないなど悪評が絶えなかった。噂を知っていたヒバナはアッシュに辞めるよう促すが、アッシュは意に介さなかった。
授業に出席するようになったアッシュであったが、同級生でクラスの中心人物である龍人のファーヴの不興を買い模擬戦を申し込まれる。(その際、負けたら二度とヒバナに近づくなと一方的に条件を提示される)
模擬戦はアッシュの優勢で進むものの、終盤ファーヴの挑発を受け呪いが暴走しファーヴを殺しそうになってしまう。
しかし致命の一撃を乱入したモールが受け止める。モールは周囲に自分の研究の結果であることを強調しその場は事なきを得る。
研究室にアッシュを連れてきたモールは、呪いの進行を抑えるため両腕を義手にすることを提案。アッシュはそれを承諾する。一連の顛末を受けてヒバナは、モールがアッシュに害なす存在でないことを理解する。
2カ月後、義手となったアッシュはヒバナとルドラが成績優秀者として冒険者研修に行くことを知る。空元気のような闘志を燃やすアッシュに対して、モールは<龍の義装-翼->とそれを使いこなすための修行を課す。
冒険者研修の終了予定日の二日前、修行の手ごたえをつかみ始めたアッシュの前に、傷だらけのルドラが現れる。ルドラはアッシュに、研修先で暴走したモンスターに襲われ、ヒバナがモンスターの侵攻を独力で食い止めている間に自分は逃げてきたことを伝え、アッシュに助けを求める。アッシュは自分に助けられるのかと懊悩するも、ヒバナが信じているのは私じゃなくてアッシュであるというルドラの説得を通じて受けてきた愛情を自覚しヒバナの救助を決意する。
目的地にたどり着いたアッシュは、新しく得た飛行能力を活用しながら巨大な金棒を持つ鬼のような怪物と対峙する。
そしてついに、アッシュの衝撃波にヒバナの魔力を乗せた合体魔法<鳳凰の息吹>によってモンスターを倒す。
その亡骸に近づいたアッシュは、怪物の正体がかつての冒険者仲間である鬼人のモミジであることを知る。
冒険者研修の依頼主であるギルド長に顛末を報告する中で、アッシュはパーティ脱退後のかつての仲間の顛末を知る。そんな中で、アッシュは、自分に呪いをかけ、パーティを崩壊に導いた黒幕が存在することに思い至る。
世界に混乱に陥れられるのを防ぐため。そして、かつての仲間の無念を晴らすため。アッシュは再び戦いの場に身を投じる決意を固めるのであった。
前回のとびらのさんの自主企画「人外短編企画」の時に構想だけあったやつを練り直しました。