レディー・ハロウィーン!の巻!
そしてハロウィン当日である。
「やってやろうじゃないのー!」
テンションMAXのローレンは、ゾフィーが準備したミニスカ魔女の衣装に袖を通した。
スパッツは未着用だ。長く細く白い脚線美に、同性のゾフィーすらときめいた。
「私はレディー・ハロウィーン! ハロウィンの女帝、レディー・ハロウィーンよ!」
凛々しく勇ましく、そして美しいローレン。
今日は彼女が世界を動かす日なのだ。
世界中で沸き上がる、ハロウィンを楽しむ喜びの波動――
それが世界を包みこみ、混沌がもたらした病魔すら吹き飛ばしそうだ。
「お嬢様カッコいい!」
フランケン・ナースのゾフィーも、今日は一味違うナース服だ。
普段は白いナース服だが、今日は柔らかな桃色だ。
これは彼女の心理が関係しているのだろう。女心は真の迷宮だ。
この謎が解ける者こそ、ゾフィーの恋人に選ばれるのだ。
それはグラン○ラインの宝を手に入れるほどの快挙だ――
「行くわよ!」
ローレンとゾフィーはマンションの一室から飛び出した。
ローレンはゾフィーとエレベーターに乗る際に、同じマンションに住む子ども達が仮装していたので「あら、こんにちわ。ハッピーハロウィン!」と声をかけた。
女子小学生たちは気軽に「トリック・オア・トリート!」と、ローレンとゾフィーに声をかけてきたが、男子小学生はそうはいかなかった。
魔女衣装の胸元からのぞいた、ローレンの鎖骨と浅い谷間。そして魅惑の脚線美。
更にはゾフィーのゆさゆさ揺れる豊かな胸に、男子小学生たちはドキドキしてしまったのだ。
これが刷り込みとなり、彼らの性癖を決定づけてしまった。
なんと罪作りなことか、麗しきレディー・ハロウィーンと魅惑のフランケン・ナース。
これも今年のコンセプト「魅惑の夜」の効果であるのか。
だが、そんな事はどうでもよかった。
ローレンとゾフィーの二人がマンションの入口から外へ出ると、そこは異界であった。
人々の意識の及ばぬ魔空空間へ、ローレンとゾフィーは導かれていたのだ。
ハロウィンの活気に混じった、悪意の渦によって……
世間は未だ悪意に満ちている。
ましてやハロウィンの夜には「あの世」と「この世」が繋がり、無数の妖魔が現れてくるのだ。
だが、レディー・ハロウィーンには使命がある。
あふれる妖魔を打ち払い、世に「ハッピーハロウィン」の喜びを満ちさせる……
それがレディー・ハロウィーンの使命なのだ。
「……今年も色気0のハロウィンで、ごめんなさいねゾフィー」
「何をおっしゃるんですか、お嬢様! わたしはドキドキしてますよ!」
ゾフィーは巨大な注射器型レーザーキャノンを肩に担いだまま、微笑した。
ローレンは苦笑した。自分は孤独ではなかった。共に戦う相棒がいるのだ。
ましてや時間も空間も越えた無数の世界で、自分と同じように戦う「同志」が大勢いてくれるのだ……
「――行くわよ、ゾフィー!」
「OK、お嬢様!」
ローレンとゾフィーの侍従は、喜びと悪意の混じり合うハロウィンの混沌へと飛びこんだ。




