ハロウィン前日!の巻!
人知を越えた力を有し、世の経済を司る超人……
人は彼らを商人と呼んだ!
ハロウィンへ向け、完璧商人始祖達も動き出す。
クリスマスの守護者たる「ブラック・サンタ」の黄金マンもまた然りだ。
黄金マンはハロウィンに大挙して出現するであろう妖魔との死闘を前に、他の完璧商人始祖とスパーリング中だ。
すでに半日が過ぎているが、彼らは未だ余力を残している……
「カララ~!」
鴉マンはリングのロープの反動を利用して縦横無尽に飛び交い、中央に立つ黄金マンへ容赦ない攻撃を加えていた。
完璧商人始祖でも最速を誇る鴉マン。
ロープの反動を利用した飛び蹴りが、連続して黄金マンに放たれた。
その怒涛の攻めに、黄金マンは片膝をついた。
正義商人・五芒星の必殺技「スペースシャトル」に似ているが、レベルは段違いだ。
五芒星のスペースシャトルは完璧商人すら翻弄したが、鴉マンのロープを飛び交いながらの連続蹴りは、黄金マンすら捉えきれない。
「モガッモガッ! 次は俺だ!」
鴉マンと交代し、リングに上がったのは「パーフェクト・ザ・ルール」の異名を持つ完璧商人始祖……
奈落マンだ。
「……さあ、来い!」
リング中央で立ち上がった黄金マンは疲労を微塵も見せずに、奈落マンを迎え撃つ。その勇姿に奈落マンはニヤリとする。
それでこそ完璧商人始祖の筆頭である黄金マンだと。
「モガッモガッ!」
奈落マンはリング中央で黄金マンと組み合った。最初は互角に見えたが、やがて黄金マンが右膝をついた。
奈落マンは真っ向勝負のパワー戦では、完璧商人始祖でも、右に出る者はいない。
商人の神である「ザ・漢」をして、最も理想に近いと言わしめた。
「モガッモガッ、未熟なり黄金! そのザマじゃあ、俺が代わりに子ども達にプレゼントを配っちまうぜ~!」
奈落マンの言葉は挑発ではない。
激励だ。
「……無理だな、お前は顔が怖すぎる」
黄金マンは組み合ったまま、渾身の力で再び立ち上がってきた。
「なんだと、テメエー!」
リング中央で組み合う黄金マンと奈落マン。二人のパワーと熱気に室内の温度が上昇していく……
と、奈落マンは黄金マンから離れた。それは交代の合図だった。
「テハハハ~」
奈落マンに代わってリングに上がったのは、痛覚マンだ。特殊な緩衝材(※いわゆるプチプチ)に全身を覆われた彼は、あらゆる痛覚を感じない。
「テハハハ~!」
痛覚マンは黄金マンと組み合うや否や、素早く背後へ回りこみ、首をロックしながら足をかけて前へ倒した。
説明が難しいが、一連の動作が流れるような美しさであった。
「お前は頭が固すぎる、もっと私のように柔らかくならんとな」
「……そうしよう」
苦悶の表情を浮かべていた黄金マンだが、彼は突然、唇を歪めて笑った。
次の瞬間には蛇のように体を軟体化させて、黄金マンは痛覚マンの技から脱出する。
「テハハハ~、力より知恵で闘うか! 見事だ、黄金!」
「モガモガ、なあ、そろそろ晩メシにしねえか?」
「カララ~、そうだな」
顔を見合せる奈落マンと鴉マン。半日以上もぶっ続けでスパーリングに及べば、腹も減る。
「モガッモガッ。ジンギスカン鍋はどうだ?」
奈落マンは世界中のジンギスカン鍋市場を支配する完璧商人始祖だから、当然の発言だった。
「テハハハ~、私はお前達に任せよう」
痛覚マンは世界中の安眠枕市場の支配者であり、飲食店には疎かった。
「カララ~、あとは美酒と美女だな」
鴉マンの言葉に、奈落マンと痛覚マンは声を上げて笑った。キャ○クラに行こうという意味ではない。あくまで気持ちとして、という事だ。
それに彼らにも愛する女性がいる――
「女などいらん」
黄金マンは強く断言した。彼の発言に奈落マン、鴉マン、痛覚マンの三人はため息をついた。
「この石頭ヤロウ……」
「テハハハ~、こいつはいけねえな……」
「カララ~、人付き合いが悪いのが心配だ……」
そんな彼らの心配をよそに、黄金マンは来るべきハロウィンに向けて闘志を燃やす。
ストイックすぎるが、だからこそ黄金マンはザ・漢を倒せたのだろう。
余談ながら「あの世」から「この世」にフライング出現してきた妖魔らは、大半を正義マン、眼マン、精神マンの三人に撃退されていた。
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「ほらあー、お嬢様かわいい!」
「ち、ちょっと、スカート短すぎよ……」
「何を言ってるんですかあー、F○Sのプロミネンスさんなんかスカート全開にして戦ってましたよ~ エロ可愛いは無敵です! 最強の性格も『セクシーギャル』だし!」
ハロウィン衣装を試着したローレンが露出度の高さに戸惑い、ゾフィーはそれをなだめていた。
ハロウィンは明日である。




