光に選ばれし人形!の巻!
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「愛しているぜベイビー!」
殺人人形チャッピーは、愛するジェニファーを口説いていた。
ジェニファーも人形に命が宿った魔物である。ハロウィンには間があるのに、チャッピーとジェニファーは一足早く現世に現れていた。
月明かりの下、夜の公園のベンチで語らう二人。ムードは悪くないが、話題が問題だ。
「ガキができたら、世界一の殺人人形に育てあげるぜ!」
チャッピーは夢を語った。殺人人形チャッピーは、息子が産まれたら自身の後継者として育てあげると。
「冗談じゃないわ!」
甘いムードから覚めたジェニファーは激高した。ジェニファーは娘が産まれたら一流高に入学させ、自分とは違うロイヤルレディの道を歩ませたいと思っていた。
「ファー×ク! お前、何を考えてる! 頭おかしいんじゃねえのか?」
「キイイイイ!」
ぶちギレしたジェニファーは、チャッピーの前髪をひっつかむと、顔面へパンチの嵐をお見舞いした。
「ぶへ、ぶほ、ぶぎぃ……」
殴られて顔を腫らしまくり、鼻血を流し、歯もへし折られたチャッピー(※人形です)。
やはり殺人人形としての因果応報だろうが、少々哀れだ。
「ふん! あなたとはこれまでね!」
ジェニファーはベンチから降りて立ち去ろうとする。だがチャッピーが面白いわけがない。可愛らしい?人形に見えても、チャッピーはハロウィンの夜が誇る妖魔四天王の一体だ。
「フ×ーック……!」
チャッピーは愛用のナイフを抜いた。その光景は、ハロウィンの夜の悪夢さながらだ。
「やってくれたな、ベイビー!」
チャッピーの殺意にジェニファーは足がすくんで動けなくなってしまった。気の強い悪女人形たるジェニファーだが、チャッピーに比べればまだまだ可愛い魔物なのだ。
「だ、誰か助け……!」
悲鳴を上げるジェニファー。
ナイフを手にして襲いかかるチャッピー。
その時、信じられない事が起きた。
――ちゅいーん
横合いから一体の人形が飛び出し、チャッピーに頭突きをかましたのだ。
しかも、その人形の頭部はドリルとなっている。回転するドリルの刃を横っ腹に受けて、チャッピーは悲鳴と共に吹っ飛んだ。
「ギャース! な、なんだてめえらは!」
起き上がったチャッピーは見た。
月明かりに照らされた複数の人形を。
「ゲェーッ! お、お前たちはあーっ!」
驚愕するチャッピーへ、二体目の人形が攻めこんだ。両手だけは人間の女性並に大きいが、顔がやたらと小さい人形だ。
その人形の強烈なパンチを受けて、チャッピーは後方へ吹っ飛んだ。
「た、助けて!」
ジェニファーは人形の一団に駆け寄り、黒ずくめのコートをまとった一体の腕に抱きついた。あざとい、実にあざとい。
「久しぶりだな、チャッピー」
黒コートのパペットは、フックになった左手で、帽子のつばを押し上げた。帽子の下には髑髏に似た顔があった。
彼らはチャッピーと長きに渡って対立していた人形たちだ。
黒コートのパペット「ブレイド」はジェニファーを背へ回し、自身は一歩前に出た。ブレイドの右手は、鋭利な刃だった。
「ハロウィンの前に、綺麗サッパリ消滅させてやる」
ブレイドの全身に闘志が満ちた。ブレイドを始めとした人形たちは、魔物でありながら人間を守る存在だった。
罪の世界に生きてきた者が、天から使命を与えられる……
人それを「召命」と言う。
「ギャース! 今日こそ決着つけてやるぜえーい!」
チャッピーはナイフを握って、夜空へ飛び上がった。
ブレイドもまた、右手の刃を閃かせて、チャッピーに飛びかかる。
両者の刃が激突し、夜の闇に閃いた。
ブレイドとチャッピー、光と闇、秩序と混沌の戦いは続く――




