アナスタシア、愛を取り戻せ2
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宇宙の彼方で梁山泊と混沌の戦いが繰り広げられていた頃、東景ではアナスタシアとアランがデートしていた。
微笑ましい大学生カップルの二人には、宇宙の真理よりも、今を喜ぶ事が大事らしかった。あるいは、それこそが天道かもしれない。
しかし、である。
ーーがっこぉーん!
ボーリング場に響き渡る快音。
アナスタシアはオールストライクを達成して300というスコアを叩き出し、ボーリング場の支配人や店員から表彰されていた。
「あ、あああ……」
彼氏のアランは蒼白な顔で、表彰されるアナスタシアを見つめていた。
自慢の彼女、そのようには思われない。アランにとって、アナスタシアは高嶺すぎる花だった。
高嶺すぎて誰も近寄れないようなアナスタシア。
そんな彼女に好意を抱き、数年間戦い続けてきたアランも限界かもしれない。
「おろろお~ん……」
自動販売機の前のチェアに座って悲しんでいるのは、場違いなバッスルスタイルの美女ペネロープだ。
ボーリング初体験の彼女は、50台という途方もないスコアを叩き出していた。
「ほ、ほら、これで拭けよ」
そんなペネロープにハンカチを差し出すのは、男装した美少女の貂蝉だった。
貂蝉は中華飯店「関帝房」の店員だが、ペネロープの押しに負けてお持ち帰りされたのをきっかけに、淡い交際らしきものを開始していた。
「う、うう、ありがと……」
ペネロープは貂蝉(ちなみに彼女のスコアは130ほどだった)からハンカチを受け取って涙を拭くと、次いで思い切り鼻をかんだ。
ペネロープは妖艶な美女だが、たまらなく残念だ。
「は、鼻かむんじゃないよ!」
「ありがとね、はい」
「洗って返せよ!」
「もう、貂蝉ったら~」
「ベ、ベタベタすんな!」
赤面する男装美少女、貂蝉。半ズボンから長く伸びた白い足がセクシーだ。
そんな二人を眺めながら、アランはため息一つ。アナスタシアとの仲はうまくいかない……
「ーーあら、どうしたの」
そんなアランに声をかけたのは、通りすがりの美女二人ーー
異星から来た宇宙刑事フランツェスカと、非番の婦人警官ガーナクルズだった。
「彼女、表彰されてるんだ、すごいわね」
「ねえ彼氏い~、最近メールくれないじゃなーい?」
落ち着いた様子のフランツェスカと、媚びた様子の身長193cmの美巨女ガーナクルズ。
二人のおかげでアランの憂鬱は少し晴れた。
「……ふう、やっと表彰が終わったわ。お待たせしちゃってごめんね、アラン…… って、アラアーンッ!?」
アナスタシアが戻ってくると、そこに愛しい彼氏の姿はなかった。
これは陰謀だわ!とアナスタシアは瞳のハイライトを消して戸惑う。
アランはどこに行ったのか? だが安心してほしい、アナスタシアはアランの体内にサーチ用のナノマシンをひそかに注入している。
地球上のどこにいても、アナスタシアはアランを察知する事ができるのだ。なんというストーキングだ、アナスタシア。
「ねえ町長~、あれ取ってよ~」
「ち、ちょっと待ってくれ」
UFOキャッチャーの側では町長のハマーと非番の婦人警官スージーがイチャイチャしていた。
「もう町長ったら夜はパワフルなのに、女の扱いは下手なんだから~」
「うっさい、あっちでやんなさいよ!」
アナスタシアはスージーとハマーのバカップルにイラッときた。