完璧商人始祖!の巻!
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ハロウィンが近づき、クリスマスも射程距離に入り――
混沌の波動を受けた悪行商人らが世界を乱していく。
それはさながら、かつてのハロウィンの夜のようだ。
今でこそハロウィンは人々の憩いの祭だが、かつては「向こうの世界」から「こちらの世界」へ無数の妖魔が現れる夜だった。
妖魔は人々の不安と恐怖を糧にして存在する……
「ヒャッハー!」
今もまた、町外れに生じた「時空のねじれ」から妖魔の群れが飛び出してきた。
ハロウィンには時期尚早の招かれざる客たち。彼らは小物の妖魔だが、人間の心に取り憑き支配することができる。
空には雷雲が漂い、先の不安を象徴していた。
雷が大地へ落ちようとする、その時だ。
「ニャガニャガー!」
気合いと共に、何者かが雷を手で受け止めて妖魔らへ投げつけたではないか。
「完璧商人始祖奥義、サーベル・サンダー!」
空中から妖魔へ雷を投げつけていくのは、完璧商人始祖の精神マンだ。
「シャバババ~!」
地上では一つ目の巨漢超人が妖魔を蹴散らしていく。頭部に巨大な角を生やしたこの超人もまた完璧商人始祖の一人――
眼マンだった。
「そこまでですよ、悪しき者たちよ」
精神マンは道化じみた笑みを消し、使命を全うする決意に満ちた顔で、妖魔の群れを見回した。
「シャバババ~、この世に闇ある限り、我らは必ず現れる! 貴様らの悪行、いつまでも続くわけがない!」
「なぜならば…… この世には、我ら完璧商人始祖がいるのですからね!」
眼マンと精神マン、二人の迫力に妖魔の群れが気圧される。
そう、この世界には光と闇がある。
妖魔ある限り、この世の調停を司る完璧商人始祖もまた不滅なのだ。
「――待て、その者らの相手は私がする」
雷雲が割れ、一条の光と共に地上に降り立ったのは、市場経済における「神の見えざる手」を司る正義の顕現たる正義マンだ。
「それが我ら完璧商人始祖の使命なのだからな」
裁きの天秤を手にした正義マン。
一つ目の巨漢超人、眼マン。
道化じみた容貌にして雷を自在に操る精神マン。
十一人しかいない完璧商人始祖のうち、三人までもが今この場に集うとは。
妖魔らの恐怖こそ推して知るべしだ。
「ニャガニャガ、帰ってくださいよ! 私一人で充分ですから!」
精神マンは抗議した。元はバレンタインの守護者たる「バレンタイン・オメガ」だった精神マン。
今は愛するサンタさん(※完璧商人始祖の一人、白銀マン)の「二人目のトナカイ」である精神マンは、眼マンと正義マンとは仲が悪い。
「シャバババ~、何を言うか! ド下等どもは殲滅せねばならんのだ~!」
眼マンは声を荒げる。太古の昔よりサンタさんのトナカイとして、その務めを果たしてきた眼マン。
そんな眼マンは、サンタさんと精神マンと一つ屋根の下で暮らしている。が、精神マンとは非常に仲が悪い。
「ハワー!」
二人を無視して、正義マンは襲いかかる妖魔にミドルキックをお見舞いした。
「ニャガー、聞いてるんですかー!」
「シャバババー、一人占めはさせんぞー!」
仲の悪い眼マン、精神マン、そして正義マン。
そんな三人だが、見事なまでに息を合わせて妖魔を蹴散らしていく。
今年のハロウィンは、きっと楽しくなる。




