混沌(カオス)の幻影!の巻!4
「じゃあな、ペネロープ」
言ったシンの体は、半透明に霞んできた。ランバーもだ。
「俺たちはペネロープを見守っている」
ランバーは寂しげな笑みを浮かべた。シンもだった。
「シン、ランバー!」
ペネロープの見つめる前で、シンとランバーの姿は霞のように消え果てた。
あとに残ったのは、山間の静けさと淡い月光――
そして生物兵器チェイサーの骸である。ツィークとラーニップの二人は、まるで背景のように黙りこくって怯えていた。
余談だがツィークの御先祖がシンであり、ラーニップの御先祖がランバーだ。
「二人とも大バカだわ……」
ペネロープは両手で顔を覆った。シンとランバーの二人は、魂だけでペネロープを守りに来たのだ。
実体化のために、多大な代償を支払って。シンとランバーの思いこそ愛というものだ。北○の拳でも愛は最強なのだ。
さて、とある女神は二人の男性神をつき従えている。それは、ひょっとしたら、ひょっとして――
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人類の未来を守る戦いは続く。
人類を滅ぼさんとする超神との闘いに臨む商人。
命を産み出した海からの試練に臨む戦乙女。
この闘いの果てに待つのは?
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「もうじきハロウィンだわ……」
「レディー・ハロウィーン」のローレンは、拳を固く握りしめた。
欧州系美少女のローレンは、勇ましくも美しい。
「遂にお嬢様の本番ですね!」
忠実なる侍女「フランケン・ナース」のゾフィーは、ナース服の胸元を揺さぶりながら愉しげに笑った。
「……あなたが脱げばいいんじゃないの?」
ローレンは額に血管を浮かべて冷笑した。美少女だが仕草が恐かった。スレンダーなローレンは、ゾフィーの女性的魅力を詰めこんだプロポーションは嫉妬の対象だ。
「ええ、そんなあ! で、でもお嬢様! 創作の光明は見えましたよ! 私たち三人が登場すると、評判がいいんですよ!」
ゾフィーはローレンに力説した。お色気を担当されてはたまらない。
「はあ? 私とあなたと…… ペネロープ?」
「そうですよお!」
ゾフィーも必死だ。
きつめの美少女ローレン。
優しい美女のゾフィー。
性格の残念な美女ペネロープ。
三人が登場すると、読者様(※こんな底辺にいるのかい?)から大きな喜びが伝わってくるというのだ。
「まあ、考えとくわ…… こっちは
『オンナという名のものがたり』
ってわけね」
「ゴヨウ先生や七郎さん、白銀マン様には
『オトコという名のものがたり』
を紡いでもらいましょうよ!」
「さ、そんな事より、ハロウィンに向けて準備よ!」
ローレンは赤いタイツに身を包み(なぜ?)、左腕に精神銃を装備した。
「いくわよ、ゾフィー!」
「OK、お嬢様!」
ローレンとゾフィーの二人は――
ハロウィンの「概念」や「存在の意義」を守る守護者の二人は、混沌の渦へと飛び込んだ。
彼女達の戦いもまた、人類の未来を守る戦いなのだ。




