混沌(カオス)の幻影!の巻!3
「とどめだ!」
シンは叫んでチェイサーへ素早く間合いを詰めた。
そしてチェイサーの眼前で跳躍し、右手を高く掲げた。
「くらえ、ハロウィンの赤い雨!」
シンがチェイサーへ右手刀を打ちこんだ。
彼の鍛え上げられた手刀は、鉈の重さとカミソリの切れ味でチェイサーを切り裂いた。
チェイサーは左肩から右脇腹まで、長く深く切り裂かれていた。
その傷口から噴水のようにほとばしる鮮血が、大地を赤く濡らしていく……
正に、ハロウィンの夜に降り注ぐ赤い雨のように。
――ウゴア……
チェイサーは大地に突っ伏した。シンの放った「ハロウィンの赤い雨」の一撃によって、最強の生物兵器は遂に活動を停止した。
「シン…… ランバー……」
ペネロープの目元に涙が滲んだ。かつて愛した男の幻影が今、目の前にあった。
「で、でかくなったなあ!」
シンは顔を赤らめながら、視線をペネロープの胸元へ注いでいた。シンの知るペネロープとは、年の頃十二、三歳の少女の姿であった。
身長百四十センチほどだったペネロープが、百八十センチを越える妖艶な美女(ただし性格は残念だ)に成長するとは、想像つかなかっただろう。
「どこ見て言ってんのよ、あんたは!」
「綺麗になったな」
ランバーもまたペネロープへ優しい視線を注いでいた。彼の知るペネロープは、十代後半の美少女の姿だった。
身長こそ今と変わらないが、女性として成熟したペネロープをランバーはまぶしく感じていた。すでに辺りは夜であっても、ランバーにはペネロープが輝いて見えた。




