プールサイドで邂逅!の巻!5
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山間でペネロープとツィーク、そしてラーニップによるサバイバルは続いていた。
「ゾンビだー!」
「く、臭い……!」
「燃え尽きなさあい!」
ペネロープは目からビームを発射してゾンビの群れを焼き尽くした。
「もうやだあー!」
「おうちに帰りたーい!」
「女は泣いたらおしまいよ!」
泣き叫ぶツィークとラーニップを叱責するペネロープ。
バカンスという名のサバイバルはまだ続くのだ……
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プールでも楽しげな時間は続いていた。
「レディー・ハロウィーン」のローレンは、かつてのボディーガード「ロボコック」と売店で話しこんでいる。
「あ、あたしは女子高だったしさあ……」
鋼鉄の意思を秘めたローレンが、僅かに頬を赤らめてはにかんでいる。
滅多に拝めない、意外なギャップだ。女性は恋する男性の前では、別の存在になるのだ。
「むふ~……」
ロボコックはローレンの話そっちのけで、プールサイドで水鉄砲のシューティングゲームに興じるゾフィーを見つめていた。
マイクロビキニ姿のゾフィーは、嫌でも人目を引いた。
女性もうらやむ堂々としたバスト、土気色の肌の全身には無数の縫合痕が刻まれたゾフィー。
そんな彼女の頭部の電極が、感情の起伏を示してピコンピコンと点滅していた。
ゾフィーは何度かロボコックの方へ振り返っていた。かつてはゾフィーも、生前のロボコックに淡い恋心を抱いていた。
ゾフィーとロボコックは、共にローレンを守るために死亡した。そんな共感も、互いを惹き寄せる。
「どこ見てんのよ!」
ローレンの刹那の右ストレートが、ロボコックの顔面に炸裂した。
拳銃の弾丸も跳ね返す超硬合金が、ローレンの右ストレートでへこんだ。
「す、すまん……」
「全く、あんたってさ! 相変わらず女好きよね! ハロウィンにメッセージカード送ってくるだけだし!」
ローレンは機嫌が悪い。だが、これは甘えているのだ。
彼女は母、ロボコックの前身のボディーガード、更にゾフィーを失って「レディー・ハロウィーン」として真の覚醒を果たした。
それから数年、ローレンは「ハロウィンの守護者」たる「レディー・ハロウィーン」として活動してきた。
孤独と絶望を乗り越えた先の、果てしなき飛躍……
だが、ローレンにも息抜きは必要だったに違いない。
「覚えてる? 花火大会」
「チュパカブラが出て、町中で銃撃戦が始まった時だろ? 覚えてるさ」
「花火の音に銃声がかき消えて…… ロマンチックだったわ」
「負傷者は多かったけど、よくもまあ死者が一人も出なかったもんだ」
「あたしとあんた、それにゾフィーでやっつけたんじゃない」
「チュパカブラは女好きだったから、ゾフィーがおっぴろげジャンプして油断させたんだっけ」
「もう、そんなことばっかり! あたしだって頑張ったじゃない!」
「君のスーパーアーツ『ダブル・トルネード』でとどめを刺したんだろ、覚えてるさ」
「じゃあ、あれは覚えてる……?」
ローレンの目が潤んだ。それを見てロボコックも思い出した。
チュパカブラとの戦いも終わり、花火大会もクライマックスを迎えた頃――
ゾフィーは酒を飲んで、公園のベンチでいびきをかいて眠ってしまった。
残された二人は、夜空を見上げながら最後の花火を共に眺めた。
町中にはパトカーや救急車のサイレンが鳴り響き、誰もが生きた心地がしなかった。
そんな中でローレンとロボコックは身を寄せあい、見つめあい、そして――




