プールサイドで邂逅!の巻!4
**
ゾフィーの水着が外れそうになるというハプニングを目撃した男たち。
彼らの煩悩(何だって?)は満たされ、その魂はいずこかの高次元に昇天した。
**
(……お寺?)
そのうちの一人は、気がつけばお寺のような建物の門前に立っていたという。
まぶたの奥に焼きついた光景――
ゾフィーの水着が取れかかり、あわや大惨事!という場面。
見えそうで見えない、その緊張とドキドキによって男の魂は満たされ、この時空へ引き上げられたのだ。
彼はここで多くの「同志」に会った。
交わした言葉こそ少なかったが、彼らは互いを理解した。
ここに集った者は、誰もが満たされていたのだ。
だからこそ彼らは、仏法天道の守護者として迎えられたのだ。
「へ、何も恐れるもんはねえさ」
「なあ、俺達また会えるかな」
「さあな、なにせ相手は悪鬼羅刹だからな」
「フフフ…… なーに、今度は地獄で会えるさ……」
男たちは不敵に笑った。
あるいは開き直りの笑みだったかもしれぬ。
死地に赴く運命でありながら、彼らに悲壮感はない。
全てはゾフィーのおかげである。彼女は男たちを導いた。
鐘が鳴る。これは出陣の合図だ。
男たちは武装し、得物を手にして出陣した。
美しい女性の声――これは軍歌の類だろうか――を背に受けて、男たちは戦う。
敵は不定形の怪物だった。空間に生じた穴から無尽蔵に溢れだしてくる。
剣や槍を手にした守護者たちは、怪物と斬り結ぶ。
守護者の一人が炎で怪物を焼き払った。あまりにも数が多いために、刀槍で斬り払うよりも、炎で包みこんだ方が効率が良かった。
「なんなんだ、これは!」
「あの穴は異次元に繋がっているのか?」
守護者たちは絶望感に襲われた。
空中に開いた穴から怪物は次々に溢れだし、守護者たちに襲いかかる。傷つき、後退する者がどんどん増えていく。
しかも、その穴は空中を蠢いているのだ。剣でも斬れず、炎でも焼けぬ穴は、いずこの異次元に繋がっているというのか。
「――あの穴は虚無へと通じている。怪物は人の悪意が実体化したものだ」
戦場に新たに現れたのは、ソンショウという導師だった。元は百八の魔星の一人、天間星「入雲竜」ソンショウである。
彼が両手を突き出せば、そこから極低温の凍風が吹き荒れ、怪物を次々と凍らせていく。
「お前たちも撤退しろ、このエリアはもうダメじゃ」
凍てつく吹雪で怪物を凍らせたソンショウですらが、このエリアでは撤退せざるを得ないようだ。
「……お主ら、まだ天命は尽きておらんぞ。通りで弱いわけだ」
ソンショウは笑った。守護者たちの一部は苛立ったが、誰もが非力さを痛感させられていた。
「まだ向こうで修行してこい、そして強くなって帰ってこい! 同志よ、わしは待っているぞ!」
ソンショウはニヤリとした。その顔に見送られて、守護者たちの魂は現世へ戻っていった。彼らはまだまだ修行が足りなかったのだ。
**
プールサイドでローレンはロボコックと話しこんでいた。数年ぶりの再会だ。
ゾフィーは男性ファンの方々と、水鉄砲でシューティングゲームに興じていた。ゾフィーの楽しげな顔にローレンは微笑んだ。
ゾフィーとシューティングゲームに励む男性達は、魂を高次元に引き上げられていたが、また戻ってきていた。
そして記憶は忘れていた。神秘的な体験とは、そういうものである。
「あんたねえ、あたしを何年も放っておいてさあ……」
「い、いや、すまん。ほら仕方ないじゃん、俺も新しい仕事探したりとか……」
ローレンとロボコック――
かつての少女とボディーガードの男もまた、楽しげに話していた。




