プールサイドで邂逅!の巻!
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真夏のプールに活気が満ちた。
プールサイドに現れた麗しき人影を、大勢の男性が取り囲んでいる。
「と、通してくださ~い……」
はにかんだ笑みを浮かべるのは「フランケン・ナース」ゾフィーだ。
帝都でも有名な美女が、アトラクションたっぷりのプールにやってきていたとは――
この日この時、この場に来ていた男たちこそ選ばれた者だったかもしれない。
ゾフィーの嘆願に男たちは応えた。
「きゃあ!!」
ゾフィーは巨大なウォータースライダーではしゃいでいた。
欧州系長身美女が水着姿で、ウォータースライダーを滑り落ちてくる……
それだけで救われる男だっているのだ。
「次はあれにしよう~」
穏やかな柔和な笑みを浮かべ、ゾフィーはプールサイドを小走りに駆けた(※走っちゃいけません)。
土気色の肌の全身に無数の縫合痕が刻まれたゾフィーは、人造人間だ。
かつては「レディー・ハロウィーン」のボディーガードとして仕えていたゾフィー。
そんな彼女は戦死した後に「ゾンビ・ナース」として復活した。
更に再調整を受け、ゾフィーは「フランケン・ナース」として覚醒したのだ。
一度は死した身だけに、ゾフィーには生命あふれる世界の全てが美しかった。
「全く……」
ローレンはゾフィーの後ろ姿を見つめながら、ため息をつく。
スレンダー体型のローレンも水着姿だ。華奢な体型ながら、その拳は空を引き裂き、その蹴りは大地を割る……
ハロウィンの夜に現れる魔物から、人々を守ってきた「レディー・ハロウィーン」の末裔たるローレン。
そんな彼女は侍女のゾフィーにせがまれて、大型レジャープールにやってきた。
が、ローレン自身は新設された巨大ウォータースライダーに興味があるわけではない。
本来ならば、プライベートビーチで落ち着いて過ごしていたはずだ。
「――まあ、楽しそうよね」
ローレンははしゃいでいるゾフィーを眺めて、苦笑した。
ゾフィーからは不思議なオーラが放たれている。それはまるで、地上に天使が舞い降りたかのようだ。
彼女を見つめる男たちは、誰もが夢心地であった。
「――コーラで」
ローレンは売店で飲み物を注文した。背を向けていた店員に、ローレンははっとする。
「了解」
振り返った店員はメタリックな装甲に身を包んでいた。目元はフェイスガードに隠されて見えない。
だが、ローレンにはわかる。
「どうぞ」
店員はカウンターにコーラを置いた。ローレンはカードで手早く支払いを済ませたが、二人の周囲にはなぜか誰も寄ってこない。
なぜプールサイドに売店があるのか?ということは、この際どうでもいい。
このメタリックな店員は、アメ○ミのヒーローというわけではない。
ローレンの昔の知人ではないか。
「あ、あんた……」
ローレンは動揺に震えていた。
鋼鉄の意思を持つ彼女が、動揺する何かをメタリックな店員は持っていた。
「――綺麗になったな」
メタリックな店員は言った。その声をローレンは忘れるわけがない。
このメタリックな店員は「ロボコック」という。彼もまた人知を超えた力を有する商人の一人である。
その前身は、ローレンのボディーガードであった。
「う、うるさいわよ……」
いつも気丈なローレンの声は、今この時ばかりは弱々しかった。
プールサイドではゾフィーがはしゃいでいた。彼女の豊かな胸か弾む光景に、周囲の男性たちは揃って顔を赤らめていた。
「でけえ……」
ロボコックが視線をゾフィーに移すのへ、ローレンは殺意の混じった嫉妬を覚えた。




