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プールサイドで邂逅!の巻!



   **



 真夏のプールに活気が満ちた。


 プールサイドに現れた麗しき人影を、大勢の男性が取り囲んでいる。


「と、通してくださ~い……」


 はにかんだ笑みを浮かべるのは「フランケン・ナース」ゾフィーだ。


 帝都でも有名な美女が、アトラクションたっぷりのプールにやってきていたとは――


 この日この時、この場に来ていた男たちこそ選ばれた者だったかもしれない。


 ゾフィーの嘆願に男たちは応えた。


「きゃあ!!」


 ゾフィーは巨大なウォータースライダーではしゃいでいた。


 欧州系長身美女が水着姿で、ウォータースライダーを滑り落ちてくる……


 それだけで救われる男だっているのだ。


「次はあれにしよう~」


 穏やかな柔和な笑みを浮かべ、ゾフィーはプールサイドを小走りに駆けた(※走っちゃいけません)。


 土気色の肌の全身に無数の縫合痕が刻まれたゾフィーは、人造人間フランケンシュタインだ。


 かつては「レディー・ハロウィーン」のボディーガードとして仕えていたゾフィー。


 そんな彼女は戦死した後に「ゾンビ・ナース」として復活した。


 更に再調整を受け、ゾフィーは「フランケン・ナース」として覚醒したのだ。


 一度は死した身だけに、ゾフィーには生命あふれる世界の全てが美しかった。


「全く……」


 ローレンはゾフィーの後ろ姿を見つめながら、ため息をつく。


 スレンダー体型のローレンも水着姿だ。華奢な体型ながら、その拳は空を引き裂き、その蹴りは大地を割る……


 ハロウィンの夜に現れる魔物から、人々を守ってきた「レディー・ハロウィーン」の末裔たるローレン。


 そんな彼女は侍女のゾフィーにせがまれて、大型レジャープールにやってきた。


 が、ローレン自身は新設された巨大ウォータースライダーに興味があるわけではない。


 本来ならば、プライベートビーチで落ち着いて過ごしていたはずだ。


「――まあ、楽しそうよね」


 ローレンははしゃいでいるゾフィーを眺めて、苦笑した。


 ゾフィーからは不思議なオーラが放たれている。それはまるで、地上に天使が舞い降りたかのようだ。


 彼女を見つめる男たちは、誰もが夢心地であった。


「――コーラで」


 ローレンは売店で飲み物を注文した。背を向けていた店員に、ローレンははっとする。


「了解」


 振り返った店員はメタリックな装甲に身を包んでいた。目元はフェイスガードに隠されて見えない。


 だが、ローレンにはわかる。


「どうぞ」


 店員はカウンターにコーラを置いた。ローレンはカードで手早く支払いを済ませたが、二人の周囲にはなぜか誰も寄ってこない。


 なぜプールサイドに売店があるのか?ということは、この際どうでもいい。


 このメタリックな店員は、アメ○ミのヒーローというわけではない。


 ローレンの昔の知人ではないか。


「あ、あんた……」


 ローレンは動揺に震えていた。


 鋼鉄の意思を持つ彼女が、動揺する何かをメタリックな店員は持っていた。


「――綺麗になったな」


 メタリックな店員は言った。その声をローレンは忘れるわけがない。


 このメタリックな店員は「ロボコック」という。彼もまた人知を超えた力を有する商人しょうじんの一人である。


 その前身は、ローレンのボディーガードであった。


「う、うるさいわよ……」


 いつも気丈なローレンの声は、今この時ばかりは弱々しかった。


 プールサイドではゾフィーがはしゃいでいた。彼女の豊かな胸か弾む光景に、周囲の男性たちは揃って顔を赤らめていた。


「でけえ……」


 ロボコックが視線をゾフィーに移すのへ、ローレンは殺意の混じった嫉妬を覚えた。

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