夏は青春!の巻!3
「打虎将」リッチーは新設された百八の魔星のメンバーである。
剣道二段という彼女の水着姿は、健康的なお色気に満ちていた。
「いっくよ~」
そんなリッチーは目隠しされ、棒を手にしてスイカ割りに臨む。
ひそかにチョウガイに気があるようだが――
「モテますねえ、チョウガイ様」
「何の話だ?」
ゴヨウが冷やかしても、チョウガイには何のことかわからない。
ストイックな上に鈍感だからこそ、チョウガイはモテるのだろうが。
「わしもあの時を思い出すと生きた心地もせぬ」
チョウガイは同人誌即売会に参加したことを語りだした。
ゴヨウはそろそろ飽きたので、概要をまとめた。
チョウガイは看護婦と共にお目当ての同人誌を買い漁り、会場に出張していた配達業者に実家への配送を頼み――
妹へ電話連絡して、目当ての同人誌は全て購入したことを報告した。
電話の向こうの、病弱なはずの妹は異常に元気だった。
会場を後にするチョウガイと看護婦。彼らは翌日に備え、ビジネスホテルに泊まろうとした。
だが、どこもかしこもすでに満員であった。明日への戦いに備える猛者は数えきれなかった。
――も、もー仕方ないから、あそこにしましょう!
看護婦が指差したのはラ○ホだ。チョウガイは冷や汗が止まらなくなった……
「おおっとチョウガイ様! そこから先は18禁ですね!」
ゴヨウは慌てて話をさえぎった。胸がドキドキしていた。
作者は運営という名の天の代行者より三度の警告メールを受けている。
次は突然の消滅だろう。全ては無に還るのだ。
向こうに持っていけるのは「心」と「思い出」だけだ。
「何の話だ……」
チョウガイは忌々しげにタバコを吸い始めた。普段は吸わないが、ゴヨウと同じく吸えないわけではなかった。
「えーい!」
そんなチョウガイへ、目隠ししたリッチーが棒で打ちこんできた。
チョウガイは難なく左手でリッチーの打ちこんだ棒を受け止めた。
「おいおい、スイカはあっちだぞ」
「は、はああチョウガイ様!」
リッチーは目隠しを取って騒ぐ。あるいは彼女もわざとだったか。
ゴヨウはハードゥと顔を見合せ、ニヤリとした。夏は男女の季節だ、夏には魔物が潜んでいるのだ。
「いや、わしにはグレースが……」
チョウガイは困惑した。彼とバレンタインの守護者グレースは、不思議な縁に繋がっていたのではないか。
「うーわ、うーわあー!」
ヒステリーを起こしたリッチーがゴヨウに棒を振り回す。目がマジだった。
夏の日射しがまぶしい砂浜だ。この日射しは人をどこへ導くか。




