夏は青春!の巻!2
百八の魔星の守護神チョウガイは、元は人間だった。
彼は難病に侵された妹の治療費を稼ぐために、傭兵となった。
圧倒的な剣技に加え、超能力をも駆使するチョウガイは「超能力兵士」と呼ばれ、戦場で恐れられた。
「……どこかで聞いたような」
「ゴヨウ、この世には著作剣という恐るべき剣が在ることを忘れるな」
ゴヨウのツッコミをチョウガイは制した。
さて、チョウガイは妹の担当看護婦と仲良くなったそうである。
「ああ、なるほどナースさんの魅力にやられたと」
「いや、妹と同じ趣味だったのだ」
チョウガイは口を真一文字に引き絞る。彼の妹は現代風に言えばBL好きで、看護婦もそうであった。
二人は年齢の離れた戦友だったという。
「は?」
「そして、わしは夏に開催される巨大同人誌即売会へ向かった」
チョウガイは妹の頼みを聞き、看護婦と共に真夏の巨大同人誌即売会へ向かった。
入院している妹はもちろん参加できない。だからこそか、彼女はチョウガイへ大量の注文をした。
――いーい、お兄ちゃん! 総受だからね、攻じゃないからね!
――は、はい!
チョウガイは妹が恐くなった。
看護婦も普段の穏やかな顔からは想像つかぬ険しい顔で、分厚いカタログのあちこちにチェックを入れていく。
――な、なんという戦場だ……!
幾多の戦士を葬り去ったチョウガイも、同人誌即売会に身が震えた。そこは女の戦場だったのかもしれない。
そうして、チョウガイは看護婦(三歳年上)と共に同人誌即売会に参加した。
早朝に特別急行で向かい、炎天下の中を数万人の参加者と共に、開催を待つ……
チョウガイは相変わらず長ランだったが、看護婦はピンク○ウスの可憐なワンピースだった。
お姫様みたいで可愛いなとチョウガイが告げると、看護婦からは照れ隠しのビンタが返ってきた。
近くにいた男が「リア充、爆発しろ」と呪いの言葉をつぶやいた。更に「ぺ、ぺ!」と地面に唾を吐く女性もいた。
命のやり取りに及んだ経験のあるチョウガイも、同人誌即売会会場(秘密基地のような外観をしていた)に満ちた負の気に、精神を病みそうになった。
そして開催と同時に、チョウガイは看護婦と共に目指すエリアへ向かった。
――あ、あなたのような方からお金は受け取れませえええん!
スペースの女性はチョウガイを見つめて、声を震わせていた。
精悍で凛々しいチョウガイのような男性が、自分の描いたBL本を購入したことに感動したのかもしれない。
なお内容は、チョウガイの妹の推しキャラが、他の男性キャラから攻められ「受」に回るというものである。
「あの女の反応が、今でも忘れられん」
「はあ……」
なんと言っていいかわからないゴヨウ。
だが、もしもゴヨウが同人作家だったとしたら――
自分が描いたエロ同人誌を柔和な美人が買っていったら、謙虚のあまり料金は受け取らなかっただろう。
「そうして、わしは……」
「チョウガイ様。そろそろ次回に続きますよ」
チョウガイとゴヨウの話はもう少し続く。
砂浜ではハードゥやリッチーが、スイカ割りを始めていた。
夏は男女のロマンが燃え上がる季節である――




