伝説の氷河戦士!の巻!2
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帝都では、某メイドさんが好きな男の子とプールに行っていたり。
超神との闘いに臨む正義・悪魔・完璧の商人らが、選考試合に臨む気配を見せていた。
何にせよ、夏は始まったばかりである。
夏には魔物が住んでいるとは、古の先人が伝えた真理であった。
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チョウガイの放った魔天降伏の衝撃波によって、凍てつく大地が吹き飛んだ。
戦術核にも匹敵する破壊の力。
だが、氷河戦士らは力を合わせて精神障壁を造りだし、魔天降伏を防いだ。
「何――」
驚くチョウガイ。
彼の眼前で、直径十メートルに及ぶクレーターの中心には、七人の氷河戦士が生存していた。
「――さすがは百八の魔星の守護神…… 強い」
不敵な笑みを浮かべるのは、氷河戦士のリーダー格のジークだ。
氷河戦士は、神獣や魔獣を模したオリハルコン製のプロテクターをまとっていた。
「ああ、相手にとって不足はない!」
サブリーダーのバドーの闘志は燃え上がっている。いや、彼ら氷河戦士の絆が燃えているのだ。
(……手強い……!)
ポーカーフェイスのチョウガイだが、内心は動揺している。
全ての仏敵を宇宙の塵に変える魔天降伏。
その破壊のエネルギーを、七人で力を合わせてとはいえ、氷河戦士は無効にしてしまった。
一日に一度しか放てぬ大技を、こうもあっさり無力化するとは。
「チョウガイ、お前一人か」
まるで美女のような外見のミーメが問う。チョウガイが答える前に、彼らの頭上に新たな人影が飛来した。
「――む」
フェンリルは眉をしかめた。現れた人影はチョウガイの仲間だ。
「遅いぞゴヨウ!」
チョウガイの叱責はどこか弾んでいた。
知多星ゴヨウに様々な思いが沸き上がった。
たとえば同志ソンショウだ。
ソンショウは昨年に突然、即身仏の修行に入った。世界中で病魔が蔓延したのは、その数日後だ。
ソンショウの行いには意味があった、彼は苦行の果てに即身仏となり、今では「あの世」の人々を守るために戦っている。
更にコーエンとリッキー、二人の女性はショッピングモールにしかけられた爆弾のために死んだ。
だが、二人の尊い犠牲のおかげで、他に死者は皆無だった。
人は未来を守るために死す――
それが人類開始以来の、人間の使命なのだ。
だからこそ、ゴヨウも死を恐れない。
未来を守り、自身の有終の美を飾らんとする決意だけがある。
ゴヨウは地に降り立ち、氷河戦士らを見据えた。
更に右手を天に掲げた。
「――速き風よ!」
途端にゴヨウの右手に風が渦を巻いて収束していく。
「光と共に開放されよー!」
ゴヨウが氷河戦士に右手を突き出せば、鳳凰の羽ばたきのごとき突風が吹き荒れた。




