伝説の氷河戦士!の巻!1
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吸血姫ペネロープ。
彼女は「不死王」が人間の女性に産ませた混血だ。
六百年を生きる吸血姫ペネロープは、二十代半ばほどの妖艶な美女だ。
性格は暴れはっちゃくだが、少なくとも邪悪な存在ではない。
そんな彼女は狼女のメイド達を率いて、クリスタル湖へバカンスに出かけるという。
「クリスタル湖……」
メイドのリーダー、ツィークは美しい眉をしかめた。
ネット検索すると、山ほど恐い話が見つかった。
殺人鬼に山男、巨大な熊に怪しい研究所……
「これはもう戦争だよ!」
メイドのラーニップはリュックに武器を詰めこんでいる。
今年の夏は戦争だ――
それが狼女のメイド少女達のスローガンとなった。
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宇宙の果て、三千大千世界を越えて混沌を討たんと旅立った「百八の魔星」は新たな敵と遭遇していた。
――ピキイイイン……
敵の出現と共に大地は凍てつき、全ての生命が活動を停止した。
「これは……」
長ラン姿の凛々しい青年の姿をしたチョウガイは、凍てつく大地に屹立する伝説の戦士達の姿を見た。
「我らは氷河戦士!」
一団の先頭に立つイケメン戦士、アウクサーは名乗りを挙げた。
氷河戦士の源流は、戦女神に仕える聖なる闘士である。
かつて海神との戦いに勝利した戦女神は、その魂を北極に封印した。
海神の魂は永き眠りについたが、一抹の不安はある。
そこで戦女神は一人の聖なる闘士を派遣し、監視させた。
その聖なる闘士の階級は不明だ。
だが海神の魂を監視する任を託されたことから、その実力は間違いなく黄金級であろう。
監視役の聖なる闘士を源流に持つ氷河戦士たち。
彼らの拳は空を引き裂き、その蹴りは大地を割る――
戦女神に仕える聖なる闘士に勝るとも劣らない、それが伝説の氷河戦士だ。
そんな伝説の存在が、チョウガイの前にいる……
――ズン!
チョウガイは手にした黄金の剣を凍てつく大地に突き刺した。
「お前たちまでもが混沌の波動に呑まれたか……」
瞑想するチョウガイは両手を眼前で交差させた。
同時にその力は、神の領域にまで高まっていく。
「引導をくれてやる!」
チョウガイの突き出した両手から、衝撃を伴う閃光がほとばしった。
それは魔を降伏する不動明王の――
その真たる姿、大日如来の力の顕現であったか。
「魔天降伏!」
チョウガイの手からほとばしった閃光が、氷河戦士達を襲った――




