天の啓示!の巻!
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世界を覆うのは病魔のみではない。
悪意、暴力。
勇気、優しさ。
相反する二つのもの、その激突。
世界には陰と陽が渦巻き、活力を産み出していく。
それは新たな命の誕生であるかのように。
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(何の偶然だ、これは?)
「百八の魔星」の守護神「托塔天王」チョウガイはうめく。
黒い長ラン風の衣服に身を包んだ彼は、外見上は二十歳前後の凛々しい若者だ。
四千年の永き時を、守護神として存在し続けた彼ですらが、不思議な偶然を感じていた。
例えば神ーー
人類と神々の存亡を懸けた戦いが、様々なエンターテイメント作品に現れている。
例えば海ーー
戦乙女のみならず、様々な作品に海が主題として現れている。『石造りの海』もまた。
そして海は女性の象徴である。生命を産み出した海からの試練に、生命を産み出せる女性が挑む事には意味がある。
更にはアークという仏陀の顕現……
この世に現れているのは、いかなる現象なのか。
チョウガイだからこそ気づき、そして答えが出ない事に思い悩む。
「な、何もわからぬ事が恐ろしい……!」
秩序と混沌。
光と闇。
男と女。
新たなる宇宙ーー
創作世界の転生など問題にならないような何かが、人知の及ばぬ世界で起きている。
この国は幸福だ、己の命すら捨てて大空に散った勇士らの魂が、魔空の侵入を防いでいる。いや、魔空すら怯ませているというかーー
「だが長く保つのか?」
チョウガイは考える。朋友たる完璧商人始祖の一人、正義マンも同じ予測をしている。
例え災禍を退けても、人類に未来を守る意思がないのなら、自滅の道しかないのだと。
未来とは何か。それが象徴するのは子どもである。
子どもという命を産み出すのは女性であり、男と女が力を合わせない限り命は産まれない。
「未来を託せるのは……」
チョウガイは思う。すでに自分は老いて用済みかもしれぬと。
未来は若き者に託す時期なのかと。
別の時空ながらーー 剣と柔を用いる剣士、柳生十兵衛三厳。
百八の魔星の一人、天機星「知多星」ゴヨウ。
「レディー・ハロウィーン」のローレン。
ローレンの侍女「フランケン・ナース」のゾフィー。
他にもまだまだいる。彼らに未来を託す機が近いのかもしれない。
超時空要塞「梁山泊」は、混沌を討つための旅を続けていた。
光の速さであの星から離れていっても、チョウガイには見通せる。
心を繋いだ女性「バレンタイン・エビル」のグレースがいる限り……
「お、次の世界は海一色みたいだぞ」
ゴヨウは梁山泊の司令室でモニターを眺めていた。
「えー、じゃあ水着用意しなくっちゃ!」
ハードゥはゴヨウの側で楽しげである。肉体を失った精神生命体のハードゥだが、女心は失っていないようだ。
「……うーむ」
チョウガイは頭痛がした。実力的にはチョウガイにはるか及ばぬゴヨウだが、そのゴヨウが道を切り拓いていくのだ。
しかし日頃の彼は明るく軽い。それに一抹の不安を覚えるチョウガイだった。
「ね、ねえ、じゃあこれは!」
鼻息を荒くしたゴヨウはハードゥにマイクロビキニ水着を差し出した。
「死ね!」
ハードゥの怒りの鉄拳がゴヨウの顔面に叩きこまれた。




