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男の娘か、女の漢か!の巻!

 町内活性化の一環として、商店街で相撲大会が開催されました。


「来るぞ来るぞ、強者ども」


 審査員にお呼ばれした柳生十兵衛三厳さんは、武者震いをおさめられませんでした。


 帝都の一町内とはいえ、無数の強者が集まっています。


「今日は熱くなりそうですな」


 十兵衛さんの隣には木村助九郎さんもいました。助九郎さんも集まった強者に冷や汗が出そうです。


 世の中には名もなき名人達人が山ほどいるーー


 そんな言葉を思い出して、十兵衛さんと助九郎さんは胸を撫で下ろしました。


「おお~!」


 その時です、見物客の方々から驚きの声が上がったのは。


 十兵衛さんと助九郎さんが振り返ると、そこには輝かしい姿があったのです。


「じ、じろじろ見んなよ!」


 顔を赤らめながら叫ぶのは、中華飯店「関帝房」のウェイターの貂蝉ちょうせんでした。


 貂蝉は胸にさらしを、腰にはまわしをつけた艶やかな戦装束でした。


 彼女は男装女子(いわゆる女の漢)で、十兵衛さんは正体も知らずに、彼女を町内相撲大会に勧誘していたのです。


「な、なんだってー!」


 十兵衛さんと助九郎さんはM○Rのように驚きました。いつもツンツンしていた貂蝉を気に入らなかった十兵衛さんですが、あまりのギャップに鼻血を噴きそうでした。


「おお~!」


 そして再度、見物客の驚きの声が上がりました。そこには関帝房でウェイトレスを務めるがいました。


 いつもと変わらぬ穏やかな笑顔、そして細い体にまわしをつけた虞は、男の娘でした。


 虞は男の娘なので、さらしを胸に巻いたりはしていません。見物客達は虞の倒錯的な官能美に唖然とし、恍惚としていました。


「まさか、男だったとは……」


 助九郎さんは冷や汗を流しながら苦笑しました。貂蝉と虞、双子の姉弟の正体を見抜けなかった自分に不甲斐なさを感じたのです。


「お、お、お…… さらば青春の光!」


 十兵衛さんは涙をこらえて駆け出しました。虞が男の娘だった事が悲しくてたまりません。


 それもありだ!と納得した野郎どもは、虞を眺めています。


 百合属性に目覚めたお姉さま方も、貂蝉の恥じらう姿にときめきを覚えていました。


 しかし、十兵衛さんは二人のギャップにときめきと悲しみを覚え、会場から走り去ってしまったのです。


「今日は最高の一日になる……!」


 助九郎さんは不敵な笑みを浮かべました。女性参加は貂蝉だけでした。それもまたよしです。


 魅惑の相撲大会の内容は、また別の機会に語られるでしょう。

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