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行こうぜ地獄へ……!の巻!


   **


「背中で当たるのは鉄山靠ぽいから肩に修正しとこう」


 十兵衛はつぶやきながら兵法を考える。父の宗矩や、師事した忠明も言っている。


 体の硬い箇所と心臓に近い部位は力が強い。


 即ち肩、肘、膝、そして頭と。


 あーでもない、こーでもないと兵法を思う十兵衛。幼少の頃には右目を失った。


 下手の横好きとバカにされようと、十兵衛は兵法の道から離れない。


「一瞬で倒すには……」


 十兵衛は脳内に稽古の模様を再生する。助九郎との組討を思う。


 身長百八十センチ以上、体重百キロ近い助九郎。


 腕力も体重もある彼を一瞬で倒すなら、


「腕に抱きついて捨て身小内、かからなければ一本背負い……」


 などと考えていると、周囲に人の気配を感じた。


「……わ、わたくしにはできません、つぶあんもこしあんも、人を笑顔にする優しさです……」


 泣き崩れるのは、地球意思の分身である戦乙女プリピュアアースだ。


「豆大福にきんつば! ワクワクもんだあ!」


 八頭身美人ながら、どこか軽い戦乙女プリピュアフェリーチェは「大宇宙の大いなる意思」の代行者である。


「こ、こんな風になっちゃいました~……」


 困ったように苦笑するのは、煌輝シャイニーと称される戦乙女プリピュアのルミナスだ。


 光明神の眷属であるルミナスは、この惑星に等しき力を持つという。


 その強大なる力と神性の高さから、戦乙女プリピュアのリーダーであるルミナス。


 なぜ実力派の戦士たる戦乙女プリピュアの、ましてや途方もない力を持つ三人が十兵衛の側にいるのか。


 見回せば、ここは十兵衛が稽古していた汗臭い道場ではない。


 光に満ちた神殿の大広間、玉座の前ではないか。


 玉座には戦乙女プリピュアを統べる聖母様が座していた。


 聖母様の隣では、和風ファンタジーの登場人物のような美女がーー


 聖母様と仲親しい鬼子母神様が十兵衛に視線を注いでいらっしゃった。


 十兵衛の左の隻眼は、鬼子母神様の胸元に注がれていた。


「ーーヘヤッ!」


 鬼子母神様は気合いと共に、自身の豊かな胸をお揺らしになられた。


「千人(の子を)育てた!」


 鬼子母神様は十兵衛を見つめながら叫んだ。


「せ、千人!」


 十兵衛は震えだした。彼が命のやり取りに及んだ者は、果たして何人であったか。小競り合いは幾度か、命懸けの試合も数度である。


 かの大剣豪、宮本武蔵ですらが果たし合いはおよそ六十回だという。


 塚原卜伝でも戦場に臨む事、三十七回。討ち倒した勇士、二百十二名という。


 卜伝の剣名が当時も後世も高いのは、武者修行(卜伝が元祖と云われる)でその実力を大いに発揮したからであろう……


「おそれいりました!」


 十兵衛は鬼子母神様(の御胸)に向かって平伏した。


「うむ、よい心がけじゃ」


 鬼子母神様は初対面ながら、十兵衛を気に入った様子であった。


 聖母様は額に青筋を浮かべながら、十兵衛にたまわれた。


「孕ましたなー!」


 凄まじい聖母様の気迫。


 死の恐怖よりも、運命に対する警告が十兵衛には恐ろしい。


 聖母様に嫌われようものならば、いかなる輪廻が待っているか?


 おそらく体感時間で十万年は、人の母から産まれることはない。


「はわわ……」


 十兵衛はうめく。柳生十兵衛三厳はその足跡は不鮮明ながら、逸話の類いが多い。


 それもまた諸国隠密説を裏づけるものだが、逸話の中には「各地に隠し子がいる」というものもある。


「孕ましたか!」


 鬼子母神様は扇を開いて、さも愉快そうに口元をお隠しになられた。


 端で見ていたルミナス、フェリーチェ、アースの三人娘は顔を覆って赤面していた。


 人知の及ばぬ超越の存在五人を前にして、十兵衛は蒼白になっていた。


「ーーというわけで、がんばってこいパパ!」


 聖母様の力によって、十兵衛は修羅界の一角へ送られた。


 罪人には償いをさせる。償いは適材適所である。


 戦う者には戦いで償わせるのが、宇宙の理だ。


   **


 十兵衛がアイテムボックスを開くと、中は空であった。


「あ、そっか~…… 現実リアルじゃアイテムボックスの構造ありえないからな~」


 十兵衛は困った。ショットガンは先のアイテムボックスにしまっていたのだ。


 バイオ○ザード風の異世界へ来た柳生十兵衛三厳。彼は禁断のウイルスを滅ぼすために戦わねばならぬ。


 やむなくハンドガンとナイフ、更に必需アイテムを持って十兵衛は小屋を出た。


 街中へと出る十兵衛。夜の闇。街灯の明かりは寂しい。


 無人の公園、大きな池にかかる橋を渡る十兵衛の前に、水面から飛び出した異形が立ち塞がる。


「……」


 十兵衛の左の隻眼が細められた。彼の前に立ち塞がるバイオモンスターは、人間と蛙の遺伝子を融合させて造り出された「フロッグ」と呼ばれる。


 人間サイズのカエルのようなフロッグは両目がないが、その分、聴覚には優れる。


 十兵衛が発射したハンドガンの弾を避け、フロッグは十兵衛に襲いかかる!


「面白い!」


 十兵衛、橋の上で踏み込む。フロッグの左手側へ素早く回り込み、背から体当たりする。


 体勢を崩したフロッグへ、右手のナイフで横薙ぎに斬りつける。


 が、フロッグは地上数メートルの高みへ跳躍して刃を避けた。


 更には巨大な口から舌を射出し、十兵衛を絡め取って丸呑みせんとする。


「負けるかあああ!」


 十兵衛は左手でハンドガンを発射した。


 夜の中に死闘は続く。


 あちこちから上がるゾンビのうめき声。


 地獄を救うべく、十兵衛は地獄へ飛びこんだのだーー

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