ホワイトデーの熱き闘い!の巻!
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世間はホワイトデーだ。
完璧商人始祖である眼マンと精神マンは、最果ての北の大地に立つログハウスで、ホワイトデーのお返しを準備していた。
「シャバババ~」
眼マンは丁寧にお返しをラッピングしていく。もらったチョコレートは二十八個だ。
主夫として料理教室に通っている眼マンは、そこの女生徒からチョコレートをいただいていた。
「ニャガニャガ~」
精神マンは手作りのお返しのラッピングを終え、一つ一つを小綺麗な袋に詰めていっている。
彼がもらったチョコレートは二十四個。眼マンには劣るが、彼がサンタさん(※白銀マン)の従者となったのは最近の事だ。
精神マンは短い時間でサンタさんの従者として、近隣住民から人気を集めていた。
「シャバババ~、来年は負けんぞ!」
「ニャガニャガ~、こういうのは勝ち負けじゃないんですよ。己の行いに結果が出るんです」
眼マンと精神マンが準備を終えて、ログハウスを出ようとした時だ。
白銀マンが寝室から出てきたのは。
ーーシャキィーン
白銀マンはフェイスガードを下ろした臨戦態勢である。全身から発される闘志に、眼マンと精神マンは震え上がった。
白銀マンはバレンタインの守護者「バレンタイン・エビル」のグレースからチョコレートをもらったきりだった。
仕方がない事だ、サンタさんの真の姿を知る者は、この世界で僅かなのだから。
完璧商人始祖の一人、白銀マンこそがサンタさんの正体だとは、普通の人間が知るわけがないのだ。
「ツアッー!」
白銀マンは眼マンと精神マンを瞬殺(※死んでません)すると、人里へ向かった。
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「ド外道があー!」
荒れ狂う白銀マンは次々とバカップルを襲撃した。
しかし、それも無理はない。白銀マンは孤独な闘いを続けていたのだから。
クリスマスを祝福する穏やかな老人、という仮の姿で世界中の人々から慕われるサンタさん。
だが、それもまた白銀マンの憂鬱となったに違いない。
「待てよ!」
暴れまわる白銀マンを呼び止めたのは、男装女子の貂蝉だ。
「これやるから……」
美少年然とした貂蝉からマシュマロを受け取った白銀マンは、怒りをおさめた。今ここに奇跡が起きたのだ。
「私からもどうぞ!」
貂蝉の隣には女装美少年の虞が立っていた。チャイナドレスで魅惑の脚線美をさらした虞も、白銀マンにマシュマロのプレゼントを差し出した。
見よ、白銀マンは元のアルカイクスマイルを取り戻したーー
「愛の奇跡ね……」
通りすがりの淑女ペネロープは、奇跡を目撃した余韻に浸りながら、日傘をさして町中を進んでいった。めでたし、めでたし。




