バレンタインの未来を守れ!の巻!
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混沌の生み出した虚無空間で、ローレンとゾフィーの戦いも最終局面を迎えていた。
バレンタインを侵食する混沌の波動によって人々の悪意は、体長五メートルに達する巨大昆虫に似た生物を具現化させた。
エイ○アン・クイーンかと見紛うばかりの巨体と圧倒的なパワーに、ローレンの重機関銃もゾフィーのバズーカも通用しない。
ーーキシャアアア……!
勝利を確信したクイーン(仮称)の咆哮。それを聞いてローレンも遂にプッツンした。
「なめんじゃないわよ!」
ローレンは戦闘服の上着を脱ぎ捨て、上半身キャミソール姿になると、気合いと共にクイーン(仮称)へ突っ込んだ。
「お、お嬢様あー!」
ゾフィーの制止を振り切り、ローレンは疾風のごとき速さでクイーン(仮称)に肉薄した。
脳内には母の厳しい指導が思い出された。
木の葉の如く体軽やかに
腕を弓の如く引き
流れ星の如くふり下ろす
その壮挙もって風擦ればーー
「ハロウィンに赤い雨が降るー!」
それは先祖代々伝わった技だ。
ハロウィンの夜に現れた魔物から人々を守ってきた「レディー・ハロウィーン」に伝えられた必殺の技だ。
「はあああ!」
跳躍したローレンの右手刀から炎が溢れだした!
「ハロウィンの赤い雨~!」
ローレンの打ち下ろした手刀は聖剣に等しき切れ味と神聖さを秘めて、クイーン(仮称)の首を切り落とした!
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「ハッピーバレンタイン♥️」
グレースの愛の祝福が世界を覆う。
「バレンタイン・エビル」たるグレースは、バレンタインの概念と存在の意義を守る守護者だ。
その彼女の愛は、混沌のもたらした病魔と不況を浄化するかのように、この惑星を光で包んだ。
だが、混沌の波動を全て退けたわけではない。混沌の闇に飲み込まれた者がいるからこそ、マッスルマンを筆頭とした正義商人らは闘うのだ。
「次鋒レオパルドォン行きます!」
剛力商人レオパルドォンは、混沌の波動を受けて邪悪化した佐々木巌流なる人物に突撃した。
佐々木巌流とは佐々木小次郎の事である。巌流島で宮本武蔵との果たし合いに敗れた佐々木小次郎は、その後は妻子と共にひっそりと穏やかに暮らしていた。
が、小次郎には忸怩たる思いがあった。宮本武蔵は果たし合いの直前、道端で苦しむ佐々木小次郎の妻を介抱した。妻は妊娠していたのである。
その事実を知って大いに悩んだ宮本武蔵は、佐々木小次郎を殺す事なく倒すために、櫂を削って作った木刀で勝負に臨み、一撃で倒した。
佐々木小次郎は重傷を負ったが生き延びた。ようやく歩けるように回復した頃には、宮本武蔵の弟子が流した噂によって死んだ事になっていた。
やむなく、佐々木小次郎は妻と弟子を連れて旅に出、とある農村に住み着き、穏やかに暮らしたというーー
「それがいかんというのだ!」
佐々木小次郎はーー今日に伝わる言い伝えのように、精悍な美男子であるーー悪鬼の形相でレオパルドォンをにらみ据えた。
「死ぬべき時に死ねなかった無念がわかるかー!」
妻子と過ごした穏やかな日々は幸福であった。
それとは別に天下一兵法と称された剣士・佐々木小次郎は、はらわたがねじれるような無念の中で余生を過ごしたのだ。
「かあっ!」
烈火の気迫で放たれる小次郎の「燕返し」の一閃が、レオパルドォンの左腕を肘の辺りから斬り落とした。
が、レオパルドォンは怯まない!
「何を支えに!?」
小次郎は問う。が、レオパルドォンは答えない。
彼の脳裏にはグレースがチョコ(戒律の神相手に善戦した敢闘賞)を贈ってくれた場面が、思い返された。
美しく穏やかな笑顔と祝福。
レオパルドォンはグレース(と剛力の仲間達)のためならば死ねる。
「いい兵隊は最後に弾を一発残しておくものだ!」
レオパルドォンは小次郎に抱きついた。そして背中の砲塔から煙が立ち上る。
「ま、まさか! やめろおー!」
「地獄の砲弾ー!」
次の瞬間には、大爆発が生じてレオパルドォンも小次郎も光の中に包まれた。
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「ーーあら、打ち上げ花火?」
グレースは夜空に舞い上がった光を見た。
「世界が平和でありますように……」
グレースは謎の打ち上げ花火を流れ星にたとえて、世界の平和を祈った。




