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バレンタインの未来を守れ!の巻!


   **


 混沌カオスの生み出した虚無空間で、ローレンとゾフィーの戦いも最終局面を迎えていた。


 バレンタインを侵食する混沌カオスの波動によって人々の悪意は、体長五メートルに達する巨大昆虫に似た生物を具現化させた。


 エイ○アン・クイーンかと見紛うばかりの巨体と圧倒的なパワーに、ローレンの重機関銃もゾフィーのバズーカも通用しない。


 ーーキシャアアア……!


 勝利を確信したクイーン(仮称)の咆哮。それを聞いてローレンも遂にプッツンした。


「なめんじゃないわよ!」


 ローレンは戦闘服の上着を脱ぎ捨て、上半身キャミソール姿になると、気合いと共にクイーン(仮称)へ突っ込んだ。


「お、お嬢様あー!」


 ゾフィーの制止を振り切り、ローレンは疾風のごとき速さでクイーン(仮称)に肉薄した。


 脳内には母の厳しい指導が思い出された。



木の葉の如く体軽やかに 


腕を弓の如く引き


流れ星の如くふり下ろす


その壮挙もって風擦ればーー



「ハロウィンに赤い雨が降るー!」


 それは先祖代々伝わった技だ。


 ハロウィンの夜に現れた魔物から人々を守ってきた「レディー・ハロウィーン」に伝えられた必殺の技だ。


「はあああ!」


 跳躍したローレンの右手刀から炎が溢れだした!


「ハロウィンの赤い雨~!」


 ローレンの打ち下ろした手刀は聖剣エクスカリバーに等しき切れ味と神聖さを秘めて、クイーン(仮称)の首を切り落とした!


   **


「ハッピーバレンタイン♥️」


 グレースの愛の祝福が世界を覆う。


 「バレンタイン・エビル」たるグレースは、バレンタインの概念と存在の意義を守る守護者ガーディアンだ。


 その彼女の愛は、混沌カオスのもたらした病魔と不況を浄化するかのように、この惑星を光で包んだ。


 だが、混沌カオスの波動を全て退けたわけではない。混沌カオスの闇に飲み込まれた者がいるからこそ、マッスルマンを筆頭とした正義商人せいぎしょうじんらは闘うのだ。



「次鋒レオパルドォン行きます!」



 剛力商人レオパルドォンは、混沌カオスの波動を受けて邪悪化した佐々ささき巌流がんりゅうなる人物に突撃した。


 佐々木巌流とは佐々木小次郎の事である。巌流島で宮本武蔵との果たし合いに敗れた佐々木小次郎は、その後は妻子と共にひっそりと穏やかに暮らしていた。


 が、小次郎には忸怩たる思いがあった。宮本武蔵は果たし合いの直前、道端で苦しむ佐々木小次郎の妻を介抱した。妻は妊娠していたのである。


 その事実を知って大いに悩んだ宮本武蔵は、佐々木小次郎を殺す事なく倒すために、櫂を削って作った木刀で勝負に臨み、一撃で倒した。


 佐々木小次郎は重傷を負ったが生き延びた。ようやく歩けるように回復した頃には、宮本武蔵の弟子が流した噂によって死んだ事になっていた。


 やむなく、佐々木小次郎は妻と弟子を連れて旅に出、とある農村に住み着き、穏やかに暮らしたというーー


「それがいかんというのだ!」


 佐々木小次郎はーー今日に伝わる言い伝えのように、精悍な美男子であるーー悪鬼の形相でレオパルドォンをにらみ据えた。


「死ぬべき時に死ねなかった無念がわかるかー!」


 妻子と過ごした穏やかな日々は幸福であった。


 それとは別に天下一兵法と称された剣士・佐々木小次郎は、はらわたがねじれるような無念の中で余生を過ごしたのだ。


「かあっ!」


 烈火の気迫で放たれる小次郎の「燕返し」の一閃が、レオパルドォンの左腕を肘の辺りから斬り落とした。


 が、レオパルドォンは怯まない!


「何を支えに!?」


 小次郎は問う。が、レオパルドォンは答えない。


 彼の脳裏にはグレースがチョコ(戒律の神相手に善戦した敢闘賞)を贈ってくれた場面が、思い返された。


 美しく穏やかな笑顔と祝福。


 レオパルドォンはグレース(と剛力の仲間達)のためならば死ねる。


「いい兵隊は最後に弾を一発残しておくものだ!」


 レオパルドォンは小次郎に抱きついた。そして背中の砲塔から煙が立ち上る。


「ま、まさか! やめろおー!」


「地獄の砲弾ー!」


 次の瞬間には、大爆発が生じてレオパルドォンも小次郎も光の中に包まれた。


   **


「ーーあら、打ち上げ花火?」


 グレースは夜空に舞い上がった光を見た。


「世界が平和でありますように……」


 グレースは謎の打ち上げ花火を流れ星にたとえて、世界の平和を祈った。

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