闘将!! 白銀男 ~正義マンの憂鬱!の巻!~
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「ハワッ!」
「裁きの神」と呼ばれる正義マンの手にした天秤が揺れる。
この天秤は世界の「正義」と「悪」を測る天秤であった。
その天秤は「悪」の一方へと傾いた。だが「正義」は0ではなく、存在しているのだ。
「人類の求める…… 永遠の形……」
正義マンはつぶやく。市場経済における「神の見えざる手」を司る完璧商人始祖である正義マンは昨年、悪意の実体化した大魔王を塩試合で完膚なきまでに叩き潰した。
だが大魔王は言った。必ず再びよみがえると。それは映画「魔界○生」のラストで天○四郎が放ったセリフと、ほとんど同じであった。
この世に人間がある限り、魔性は不滅なのだ。それを討ち滅ぼす為に正義マンも存在し続けてきた。
同時に人類の愛と勇気の概念も存在し続けた。有限生命体である人間の、後世に受け継いでいく愛と勇気、その意思もまた永遠の形だ。
「……大自然からの試練か」
正義マンは尚もつぶやく。
一昨年は星辰の乱れを「星の煌めき」の戦乙女たちが制した。
昨年は世界に広がった病魔を「善き癒し」の戦乙女たちが押さえ込んだ。
今年は大自然からの試練が人類を襲うだろう。これもまた混沌のもたらした「大いなる災い」だ。
しかも、すでに人類を滅ぼすために「調和の神」を筆頭にした超神たちが受肉して地に降りてきているのだ。
世の経済を司る超人である「商人」は、正義・悪魔・完璧の壁を越えて一致団結し、立ち向かっている。
だが、これだけ闘いながら討ち滅ぼしたのは「憤怒の神」のみ……
クリスマスの守護者である白銀マンと黄金マンは、今はパワーを使い果たしている。
彼らの協力者である眼マン、精神マン、痛覚マン、奈落マン、鴉マンも同様だ。
残る完璧商人始祖の歌唱マンも、クリスマスとニューイヤーでパワーを使い果たし、「夏の誘惑」たる幻影マンは夏まで眠りについている……
「慈悲の神」であるザ・漢の指揮の元、筋肉男(正義商人筆頭にして白銀マンの子孫)やその兄の兵、ブロークンハートに闘将麺なども参戦しているが、劣勢は否めないように思われた。
「知性の神」の名代のスーパー不死鳥、「剛力の神」の名代のビッグボインもタッグを組んで挑もうとし、また悪魔商人の阿修羅マンも戦場に馳せ参じた。
だが、と正義マンは思う。
「これは人類が自分達の未来を守る闘いなのだ……」
正義マンは目を閉じ瞑想した。
商人達が超神を倒しても、人類に悪の心がある限り大魔王は再び現れる。
一昨年は命を失った者達が多かった。それは世界を覆う病魔との来るべき闘いに向け、肉体を捨てた者達が多かったからだ。
だからこそ、この國は守護られているのだ。
自分は病魔の影響など受けていない!と豪語する者達も、死した後、命を捨てた人々が「あの世」で病魔という運命を食い止める闘いをしていた事実を知れば、唖然とする事だろう。
「正しく永遠の形…… そして世界はまた割れる」
正義マンは気づいていた。
世界は秩序と混沌、そして中立の三つに別れた事を。
世界の平衡をも司る守護者の正義マンには、中立に属する者達の動向が未来を決するように思われて仕方ない。




