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闘将!! 白銀男 ~クリスマスの余韻3~

 十兵衛は三池典太を鞘ごと帯に差しこみ、道場中央へ進み出た。


 上座を向く。香取大明神、鹿島大明神の掛け軸が目に入る。


 武神剣神を前にしても怯まぬ心、それが第一なのだと十兵衛は教わった。


 死を覚悟して打ちこむ、それが十兵衛の男としての充実だ。


 十兵衛は瞬時に抜刀して横に薙いだ。僅かに鞘鳴りの音がした。これは十兵衛が未熟だからに他ならぬ。


「ぬう……」


 十兵衛は横薙ぎの姿勢でうめいた。三池典太の長い刃は居合には向かぬ。


 戦場にて槍を失い(折れた槍を用いる技術が杖術の原点と言われる)、対手が迫った時、瞬時に間合いを詰めて横薙ぎに斬りつける……


 それが居合術の原点である。十兵衛は剣は不得手(隻眼のため、視力にやや不安がある)だ。


 が、先日「鬼○の刃」を読んだ影響で居合について考えていた。


「善○め、やるな」


 十兵衛は三池典太を鞘に納めて、ニヤリとする。


 十兵衛が体感した「無の境地」、それは○逸の技とよく似ていた。


 パクった、パクられた、ではない。


 はるか彼方より、命を守るために戦うつわものは、無の境地に達していたのだ。


 先師らの到達した境地、それは古来から様々な物語に表現されてきた。


「それもまた武徳の祖神の導き…… いや、そんな事はどうでもいい」


 十兵衛は迷い悩む。


 視力に、というより隻眼ゆえに距離感の合わぬ十兵衛は、父の宗矩から組討術たる無刀取りを学んだ。


 組み合いさえすれは、距離感など関係ない。


 打ち、蹴り、組み、崩し、投げ、極める。


 十兵衛の学んだ兵法・無刀取りは、己が五体を用いるものだ。


 いや、そんな事はどうでもいい。


「○滅の刃が素晴らしすぎて、しばらく呆然としていた!」


 十兵衛、ニヤリとした。


 世に名人達人は多し、とは父の言だ。


 強者は掃いて捨てるほどいる、とは師の言葉だ。


 ましてや自分のような未熟者から見れば、世の中は化物の住み処なのだ……


「いいなあ、善○…… あんな可愛い娘と」


 十兵衛は○逸に嫉妬していた。もてない男のために走れ十兵衛。



   **



 さて、クリスマスに肉食女子にさらわれたアランはいかがであったろうか。


「さあ食べるアル、飲むアルよ!」


 中華飯店「関帝房」の若き女店長、ディートリンデ(cv:釘宮理恵さん)のすすめるがままにフカヒレスープに北京ダック、更に紹興酒などをいただいた。


 俗にチャイナドレスと呼ばれる衣装で着飾ったディートリンデは美しかった(化粧はやや濃いめ)。


「いやー、美味しいな~」


 好青年アランの視線はたびたびディートリンデの艶かしい太腿に注がれた。ディートリンデは笑顔の奥で邪悪な意思を煌めかせていた。全ては神の見えざる手だ(?)。


「ごちそうさまでしたー!」


 勢いよく立ち上がり、店の入口へと全力ダッシュしたアラン。


 その彼の首根っこを、ディートリンデは力いっぱい握りしめた。


「帰れると思ってるアルかー!」


 アランを邪悪な眼差しで見つめるディートリンデ。


「助けてー!」


 アランは貞操の危機を前にして叫ぶ。彼は童○ではないが心を犯されるのがたまらなく嫌なのだ。





 アナスタシアは彼氏のアランを取り戻すため、再び関帝房を訪れていた。


「シャ、オラアアアア!」


 月下に叫ぶアナスタシアは、色気など微塵も感じさせない黄色いつなぎのジャージ姿であった。


「ここは通さんぞお!」


 ディートリンデに雇われた店員達は百戦錬磨の猛者もさ揃いだ。彼らは腕のいい料理人でもある。


 だが、彼らが束になっても完璧パーフェクト兵士ソルジャーのアナスタシアに勝利できるのか。


 前回の闘いでは、アナスタシアの右膝のロケットランチャーの一撃で、全員吹っ飛ばされていた(奇跡的に死傷者どころか怪我人もなかった。みんな必死に逃げたから)。


「ーー俺が行く!」


 一人の巨漢の料理人が、決死の覚悟で前に進み出た。左腕はサイ○ガン風のガスバーナーであり、背中には戦車の砲塔に似た「のばし棒」を背負っている。


「ーーよし、お前出ろ!」


 一人の料理人の叫びを合図に、巨漢はアナスタシアへと駆け出した。


「次鋒レオパルドォン行きます!」


 強力を誇る料理人レオパルドォンは、アナスタシアへ挑んでいく。

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