闘将!! 白銀男3 ~聖夜の変~
クリスマスは近い。「暗黒サンタ」である黄金マンも最後の調整だ。
しかし黄金マンにも迷いがあった。世界は混乱と貧困、そして悪意と暴力が満ちあふれてきた。
それは目に見えない刃と化して人の世に潜んでいる。この状況下で、自分は果たして子ども達に夢と希望を与え、祝福する事ができるのか。
明るい未来を創り出すのは、夢や希望に燃える未来の大人(今の子ども)なのだ……
「テハハハ~」
トレーニングルームに響く声。しばし物思いにふけっていた黄金マンが我に帰れば、そこには朋友たる痛覚マンがーー
安眠枕市場を司る「完璧商人始祖」の一人が、相変わらずの気さくな笑顔を見せていた。
「お前は頭が固すぎる、もっと私のように柔らかくならんとな」
「……そうだったな、痛覚マンよ」
「モガハハハハ、未熟なり黄金マン!」
いつの間にか、トレーニングルームにはもう一人現れていた。
パーフェクトザルールの異名を持つ「完璧商人始祖」の一人、ジンギスカン鍋市場の支配者、奈落マンである。
「お前がそんなザマなら、俺が代わりに世界中の子ども達にプレゼントを配っちまうぜ~!」
「……無理だな、お前は顔が怖すぎる」
「なんだと、テメエー!」
奈落マンの怒りも、同じ完璧商人始祖の絆の現れだ。厳かな黄金マンの心中は安らぎを得ていた。
「クア~、行くぞ黄金マン。世界最速の翼に振り落とされるなよ」
鶏肉市場の支配者、完璧商人始祖の鴉マンの引くソリに乗り、黄金マンと痛覚マンと奈落マンは出陣した。
世界中の子ども達を祝福し、導くために。
今ごろは白銀マンも、眼マンと精神マンの引くソリに乗り、世界中を飛び回っている事だろう。
サンタである白銀マンは、子ども達にプレゼントをーー
暗黒サンタである黄金マンは、子ども達に祝福と導きを与えている……
「……ちょっと待て、奈落マンと痛覚マンは下りろ」
「テハハハハ、たまには高みから地上を見下ろしてみるもんだ」
「モガハハハハハハ~! 人がまるでゴミのようだぜ!」
「ソリから下りろ貴様ら!」
「重量オーバーだが頼む、じ、時間が……」
珍しく泡を食った黄金マンは、痛覚マン、奈落マン、鴉マンと共に世界中の空を駆け回り、子ども達に夢と希望を配った。
「レディー・ハロウィーン」のローレンはといえば……
「あら、お嬢様。靴下用意したんですね」
ローレンの侍女「フランケン・ナース」のゾフィーは、ローレンが靴下を用意する様子を微笑ましく見つめていた。
「いるわよ! サンタはいるのよ!」
「はいはい、わかりましたお嬢様…… さ、一緒にお風呂に入りましょう♥️」
「貴女、本当に百合属性じゃないでしょうね……」
メイド喫茶「ブレーメン・サンセット」では。
「えー、ペネロープ様こんなに大きな靴下を用意したの?」
「人間一人くらい入りそうだよ?」
「で、ペネロープ様は?」
「もう寝てるみたい。高いお酒飲んでたし…… サンタさんを信じてるなんて可愛いところあるんだね」
ツィークとラーニップはそんな会話をした。二人ともすでにネグリジェ姿であった。
「アラアーン!?」
アナスタシアの目の前で、彼氏のアランは肉食女子にさらわれた。
それを追うアナスタシア。二人が結ばれる日は来るのだろうか。




