「闘将!! 白銀男2」&「淑女ペネロープ2」
白銀マンはクリスマスに向け、最後の調整に入っていた。サンタクロースの正体は「完璧商人始祖」の一人である白銀マンだ。
「メリイークリスマアスッ!」
220cm、162kgの白銀マンは吹雪の中で石を山積みにしたトロッコを引いていた。
気温は氷点下25度、風速37M の中では体感温度は氷点下62度……
その過酷な状況での修行は、クリスマスを祝福する為の強い意思を養うものだ。
「メリイークリスマアスッ!」
白銀マンを叱咤激励し見守るのは、サンタの相棒にして「一つ目のトナカイ」である眼マンた。
「メリイークリスマアスッ!」
白銀マンを見守るのは「二人目のトナカイ」である精神マンだ。
白銀マンの体には氷雪がまとわりつき、白く染まっている。命すら危うい状況で白銀マンを見守る眼マンと精神マン、二人は命がけで付き添っているのだ。並大抵の友情ではない。
「メリイークリスマアスッ!」
白銀マンはトロッコの鎖を引っ張る。重さ四トン近いトロッコが動き出した。
「メリイークリスマアスッ!」
白銀マンの気合いが寒空に響く。トロッコに繋がる鎖を引く白銀マンの両手から、熱い血潮が流れ出した。
「メリイークリスマアスッ!」
白銀マンの気合いと共にトロッコは少しずつ動き出した。
そうだ、物事を動かすにはーー
運命や天を動かすには、命をかけねばならないのだ。
ましてや白銀マンは概念や存在の意義を守る者だ。
クリスマスの守護者である白銀マンが、子ども達を祝福するのに命をかけられぬわけがない。
「ツアッー!」
白銀マンの烈火の気迫。トロッコはゴトゴトと、ゆっくり動き出した。
眼マンと精神マンは普段は仲が悪いが、今この時ばかりは、互いに氷雪に白く染まった顔を見合わせた。
ペネロープの経営するメイド喫茶「ブレーメン・サンセット」では朝のミーティングが行われていた。
「ーー目標はケーキ販売、一人二十個よ!」
バッスルスタイルの麗しきペネロープは、配下のメイド(全員が「狼女」である)達を見回した。
「二十個……?」
メイド達(全員十代だ)のリーダー、セミロングのツィークは言葉に詰まった。ツンツンした美少女だが根は優しい。
「そんなの無理だよ、ペネロープ様!」
一番若いラーニップは目を丸くしていた。サラサラしたロングヘアーのラーニップは十三歳、儚げな外見だが明るく元気なギャップが魅力的だ。
「ケーキの売上は貴女達のボーナスになるから、そのつもりで」
ペネロープの一言によってメイド達の士気は燃え上がった!
「美味しくなあれ♥️」
ツィークのまぶしい笑顔にメイド喫茶を訪れた男性客は、我を忘れてときめいた。
「おっかえりー、ご主人様!」
ラーニップの少々常識はずれな出迎えに、客(男女を問わず)は胸を高鳴らせている。
店内のあちこちに満ちるラブラブなオーラ。そしてメイド達の一声。
「ねえ、ケーキ買って~♥️」
「買う買うー!」
メイド喫茶を訪れていた我らが十兵衛さんは、差し出されたケーキの申込書にサインした。
「ーー女は魔物だな」
十兵衛の父、宗矩は同じテーブルについていた。ため息をつくロマンスグレーな宗矩を、数名のメイドがチラ見している。宗矩はいくつになっても女性にもてるのだ。
「なあに、女は毒なだけさ」
十兵衛が師事した小野忠明も同じテーブルにいた。彼は怖い顔つきだからメイド達に敬遠されているが「ケーキ買ってやるぞ」と気さくに声をかけていた。忠明は女を口説くのは非常に達者であった。
「めでたし、めでたしね」
ペネロープ様はケーキの予約が予想以上に多かったので、ニンマリと微笑んだのでした。めでたし、めでたし。




