アナスタシア、愛を取り戻せ5
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貂蝉と虞の双子の姉弟は、一緒にシャワーを浴びていた。
「相変わらずスゲーな……」
姉の貂蝉は、弟の虞の裸体(※下半身)を眺めて呆然とした。
「じろじろ見ないでよ!」
弟の虞は、普段は女装した華麗な美少年だが、意外に男らしいらしい(?)。
「はあ~あ~……」
貂蝉は普段は男装した美少女だが、珍しくため息をついていた。
「どうしたの、姉さんも気になる人でもいるの? やっぱり女の子だね~」
「う、うるっせえよ!」
貂蝉はイライラして叫ぶ。彼女にはしばらくペネロープがまとわりついていたが、ある日を境にピタリと止んだ。
ペネロープを鬱陶しいと思っていた貂蝉だが、いなくなったら急に寂しくなってしまった。
これは淑女にして女王の風格を持つペネロープの放置プレイなどではない。
所詮はペネロープの気まぐれだった、というのは貂蝉には酷な話だ。
シャワーを終えた貂蝉と虞の美しき双子の姉弟。二人の裸身がセクシーだ。
読者サービスは以上である。これも混沌がもたらした病魔の余波であろふか。
「美少年ガチャとかいいんじゃないかしら」
ペネロープは女子会を催していた。
集まったメンバー女性らはペネロープの発言を皮切りに、クリスマスプレゼントに何が欲しいか語り合う。
「イケメンガチャがいいな~」
ゾフィーは頭部の左右一対の電極を点滅させながら、そう言った。
人造人間のゾフィーは帝都にて「フランケン・ナース」として知られている。
明るく優しい長身巨乳ナースーー
そんなゾフィーのビールの宣伝ポスターは16万円という高値で取引されていた……
「ナイスミドルガチャ!」
「いやいやロマンスグレーガチャ!」
などなど、女子会は盛り上がっていた。ペネロープの経営するメイド喫茶「ブレーメン・サンセット」のメイド達の発言だが、彼女らは吸血鬼ペネロープに仕える狼女である。
満月の晩には獣人へと変身する彼女達だが、人間世界には恋人探しにやってきているのだ。狼女は女性しか産まれないため、子孫繁栄のためには人間の男が必要である。
「甘いわね、美少年ならば……」
と鼻息荒く語るペネロープ。妖艶な美女だが、そこはかとなく残念だ。
路上で話し込むのは、女難青年アランと女宇宙刑事のフランツェスカだ。
「この星で生きていくのって大変ね~」
はにかんだ笑みを浮かべるフランツェスカは、なぜかサンバカーニバル風の衣装を身につけていた。商店街の景気づけイベントの一環らしいが、よくわからない。
「そ、そうですよね~……」
とアランの視線はフランツェスカの衣装から露出した肌に釘付けだ。フランツェスカは苦笑した。
「ダメよ彼氏~ 彼女いるんだから~」
フランツェスカの明るい冗談にアランの胸は高鳴った。
見つめあう二人の間に明るく爽やかな、そして暖かい何かが生じた。
そして、商店街の路上を駆けてくる鬼のような形相のアナスタシア(アランの彼女)……
その後に訪れた惨劇は、推して知るべしである。




