闘将!! 白銀男
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人知を越えた力を有し、世の経済を司る存在……
人は彼らを「正義商人」、「悪魔商人」、「完璧商人」と呼んだ……!
北の大地にあるサンタさんのログハウス。
その凍てつく大地のリングで、サンタさんは修行に励んでいた。
「ツアッー!」
サンタさんはーー真の名を白銀マン(220cm162kg)というーーは、スパーリング相手の眼マン(302㎝580㎏)に、渾身のミドルキックを叩きこんだ。
充分に体重の乗った重い蹴りだが、眼マンには効いた様子もない。
「シャババー!」
体格ではるかに勝る眼マンは、白銀マンのミドルキックをガードするや否や、僅かに身を屈めて右肩からタックルした。
「く!」
白銀マンは咄嗟に両腕を持ち上げ、完璧防御で眼マンのタックルを防ぐ。
僅かに身をずらして直撃こそ避けたものの、眼マンの圧倒的なパワーの前に、白銀マンはコーナーまで吹っ飛んだ。
銀に似た光沢を持つ厳かな面には、焦燥が浮かんでいた。
「ニャガニャガ~」
精神マン(206cm102kg)は倒れていた白銀マンの首に両手をかけた。
そして、いわゆるネック・ハンギング・ツリーで白銀マンを持ち上げる。
白銀マンに比べ細く見える精神マンだが、その握力は完璧商人始祖の中でも特筆ものだ。
「うぐぐ……!」
「ニャガニャガ~ サンタさん、こんな事で倒れてどうするんです? 貴方は世界中の子ども達を祝福する身なんですよ?」
苦しげな白銀マンへ、精神マンは喝を入れた。
そう、白銀マンはサンタさんなのだ。
もうじきクリスマス、その時にはサンタさんは世界中の子ども達を祝福しなければならない。
ましてや今年は混沌のもたらした病魔によって、世界中が不安という名の暗黒に包まれているのだ。
それを打ち払い、子ども達に喜びと希望を与えるのが、サンタさんの使命なのだ。
「……ツアッー!」
白銀マンは両手を伸ばし、精神マンの両手首をつかんだ。
精神マンの手首の関節が、グキグキと嫌な音を立てる。
「痛っ……!」
思わずうめいて体勢を崩した精神マンを、白銀マンは両手で突き飛ばした。
そして眼マンへと突っ込み、左右の肘打を連続して叩きこんでいく。
「シャババー、それでこそサンタさんだー!」
白銀マンの猛攻に気圧されながら、眼マンは両手を伸ばしてつかみかかる。
「ツアッー!」
白銀マンは素早く眼マンの懐に飛びこみ、その右腕を捕らえると、素早く体を回して投げた。
渾身の一本背負投でリングに叩きつけられた眼マンは、悶絶して言葉もない。
「ニャガニャガー!」
精神マンの攻撃ーー 鋭い刃のごとしドロップキックを避けると同時に、白銀マンはカウンター気味のラリアットで精神マンを吹っ飛ばした。
倒れた二人を前に、白銀マンは息も荒くし身構えていたが、
「……お見事! サンタさん!」
眼マンは身を起こして親指を立てた。精神マンも起き上がり、同じように親指を立てる。
白銀マンは「ふう~……」と息を吐き出した。ようやく満足のできる戦いが出来たのだ。
「……流石だな、白銀」
林の陰には完璧商人始祖の一人、正義マン(209㎝136㎏)も潜んでいた。
彼はサンタさんを心配していたが、どうやら満足したようである。
「……ちょっと、そこの! 後方彼氏ヅラしないでくださいよ!」
精神マンはぶちギレ寸前だ。特訓を盗み見していた正義マンは、確かに後方彼氏のポストだ。
「やれやれ……」
白銀マンは空を見上げた。
混沌の脅威、未だ収まらず。
ましてや超神らの侵攻も始まっている。
彼らの戦いの行き着く場所さえ見えてこない。
それでも、やるしかない。
誰もが己の使命を果たすのだ。
欲望に負けた時は、麻薬浸けのごとき混迷の日々が待っている。
明日へ向かって、
闘将!! 白銀男!!




