レディー・ハロウィーン1 ハロウィン近し
かつてハロウィンの夜には「この世」と「あの世」が繋がり、無数の魔物があふれてきた。
現世にあふれた魔物たちは生を憎悪し、命ある者達に襲いかかった。
その魔物の脅威から人々を守ってきたのが、レディー・ハロウィーンだ。
ハロウィンの夜に現れる淑女とも魔女とも称されたレディー・ハロウィーンの末裔こそがローレンだ。
現レディー・ハロウィーンのローレンは、先祖から受け継いだ使命を果たすべく戦いに臨む。
月光に照らされた街のメインストリート。
魔女の仮装をしたローレンは、白銀の鎖を手にして眼前の敵を見据えた。
吸血鬼の姫ペネロープと、彼女に仕えるメイド姿の狼女達だ。
満月を見上げた狼女達は次々と獣化していく。メイド服の可憐な姿は、狂暴で獰猛な人狼へと変身し、ローレンに襲いかかった。
「は!!」
ローレンは気合いの一声と共に、手にした鎖を横に薙いだ。
「ラグナロク」と呼ばれる白銀の鎖は、狼女をまとめて薙ぎ払い、火花と共に吹き飛ばした。
「ーーやるわねえ」
ペネロープは扇で口元を隠しながら目を細めた。古風なバッスルスタイルのドレスをまとう彼女は、二十代半ばほどの妖艶な美女である。
「貴女の御先祖も生意気だったわねえ」
吸血鬼の王である「不死王」と人間の女性の間に産まれたペネロープは六百歳ーー
その長い生の中で、幾度となく「レディー・ハロウィーン」と戦ってきた。
更に、宿敵レディー・ハロウィーンと月に一度は御茶会(女子会)を開催したり、結婚式にも出席したり、出産祝いも贈った。
宿敵ではあったが、ペネロープは邪悪ではなかった。性格に難はあったが、彼女は人間とも親しく、向こうの世界からやってくる魔物とも戦った。
「まあ休戦……かしらね」
ペネロープは扇を閉じた。周囲の狼女達も立ち上がる。変身を解くと全裸になってしまうので、彼女達は獣化したままだ。
「だって、わたくしーー 出番が欲しいわ!!」
ペネロープは拳を固く握りしめた。身長184cmの長身妖艶ヒロインだが、長らく出番がなかった。
「わたくしがやらねば誰がやるの!?」
「わたしがやるわよ……」
ローレンはため息をついた。ペネロープの性格がそこはかとなく残念だ。
「さあ、ハロウィンを邪魔する奴は月に代わってお仕置きよ!!」
夜空にペネロープの笑いが響いた。
ハロウィンはみんなで楽しむものだ。そして特に女性にとっての大イベントだ。
それを汚す者(特に男)あるならば、ペネロープは許さない。
「わたくしが主役!!」
「違うわよ!!」
ペネロープとローレンは女同士の友情?で結ばれていた。