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異世界転移したゲーマーはチートが嫌いなようです

「最高だ……」


 明け方の薄暗い部屋の中、大型モニターを流れていくスタッフロールを前に、俺は感嘆のため息を漏らした。スピーカーから聴こえてくるBGMはさながら俺を祝福するファンファーレ。心身共に大きな手応えを感じ取ると、ゲーミングチェアの上で身体を脱力させた。


 ――俺の名前は剣野けんの比彩ひいろ。二十二歳のフリーターだ。

 

 自分で言ってて悲しくなるが、これと言って目立つ点の無い極めてプレーンな人間だと自負している。


 特長が無いのが特徴って言えば、少しはカッコが付くだろうか?


 それはさておき、そんな地味で平凡な俺にも胸を張って好きだと言えるものが一つある。


 それはゲーム。今や様々なジャンルがある中でも、とりわけRPGが大好きだ。剣を持って世界の危機に挑み、旅の途中で出会う数多の仲間と力を合わせ、そして最期には魔王を打ち倒し、麗しの姫君と結ばれる。そんなシンプルかつ王道のストーリーが本当に大好きだった。


 今でも忘れない、ゲームというものに出会った幼い日のことを。当時、孤児院で暮らしていた俺はたまたま寄付された古いゲーム機を――。


 ああ、やめだやめだ。所詮フリーターでしかない俺の話なんてどうでもいいだろう。


 とにかく、俺はたった今一つの大作ゲームをやり終えた。俺をゲームの世界に引き込んだRPG――それが現代技術でリメイクされた作品であり、三日前の発売日からぶっ通しでやり込んでいた。可能なかぎりサブイベントなども網羅して、ようやくエンディングに辿り着いたわけだが……もうね、ホント最高。俺は今日この日のために生きていたと言っても過言ではない。


「さてと……」


 ゲーミングチェアから立ち上がると、身体の節々が痛みや気怠さを訴えてくる。連日の徹夜はさすがに堪えた。バイトは休みを貰っていてゆっくりできることだし、この充足感を感じたまま床に就くとしよう。


 どれ、ひと眠りした後はこの感動をレビューサイトで語ろうか……。


 そんなことを思いながらとりあえずシャワーでも浴びようとした矢先――俺の足が何かを踏ん付けた。たぶんそこら辺にポイ捨てしていた空のペットボトルで、その丸みに足を取られた俺の身体はぐらりと後ろに傾き――


「ふぐおッ!?」


 筆舌に尽くし難い痛みが後頭部を襲った。一瞬にして視界のほとんどが闇で染まり、身体は力を失ってその場に崩れ落ちる。後頭部からどくどくと流れ落ちていく血液と共に俺の“命”も失われていくようで、手や足の先からもどんどん感覚が消失していく。


 ベッドの角にでも頭をぶつけたか……。


 場違いに冷静な思考がそう判断を下したところで、俺の目がゲーム機を捉えた。もはや朧気で焦点の定まらない視界の中、必死にそれに手を伸ばす。


 嫌だ。まだ死にたくない。


 この世にはまだたくさんのゲームがあって、これからだってたくさんのゲームが生み出される。俺の大好きなRPGだってそうだ。


 ー―俺はもっと、多くの世界を救いたい。


 そんな想いを最期に、俺の意識は完全な闇で閉ざされた。











「目覚めなさい、ケンノヒイロ」


 鈴の音と転がしたような声と共に、俺の意識は覚醒する。目を開けた先に広がるのは、さっきと変わらないアパートの1Kの自室――ではなく、真っ白な空間だった。仰向けだった身体を起こして軽く見渡してみても、少なくとも目に見える範囲は全て白一色。およそ距離感というものが掴めず、天井や壁が存在するのかも分からない。


 何だ……ここは……? これが死後の世界ってやつか? もっとこう、暗いもんだと思っていたが……。


「ケンノヒイロ」


 訝しむ俺の背後から再び声が聞こえた。


 振り向いた先には穏やかな笑みをたたえた一人の女性がいる。ふわりとウェーブのかかった腰まで届く長い金髪に、星空のような煌めきを感じさせる青い瞳。見た目から推定される年齢は俺と同じか、少し下。整った顔立ちは少女の愛らしさと大人の華麗さを併せ持っているようで、思わず見惚れてしまう。


 身にまとった衣服は……少し豪華な修道服とでも言えばいいのだろうか? 顔立ち同様、均整の取れたスタイルが良く映えている。


「あんたは……?」


 俺の口から漏れた不躾な質問に、彼女はニコリと笑う。


「私は女神シェルス。あなたをこの場所に召喚した者です」


「……女神?」


 自分のことを神だなんて、何を言っているんだこの女は……?


 と、普段ならそんなことを思ってしまうところだが、さすがに今の状況ではおいそれと鼻で笑うことはできない。あまりの異質な空間に、確かに女神と呼ぶに値するほどの美しさを持った女性。俺が二十年以上生きてきた現実世界とは明らかに何かが違う。


 言うなれば、異世界。


「召喚と言ったが、一体どうして俺を……?」


「――私は今、勇者となるに相応しい人間を探しています」


「勇者?」


「ええ。そんな折、最期の一瞬まで『世界を救いたい』という想いを持った貴方の存在を感じ、ここに呼び寄せたのです」


 シェルスの言葉にハッとした俺は後頭部に手をやる。強く打った痛みも無ければ、血液のヌルリとした感触も無い。だが身体が“死”へと向かう冷たい感覚は覚えている。


「俺は死んだのか……?」


「あとほんの少しでも遅れていたらそうなっていたでしょう。ですがご安心ください。ここに召喚した時点で貴方が負った傷は全て完治していますので」


 ということは、異世界転生ではなく異世界転移になるのか。定義は自分でもあやふやだが、そこら辺はまぁどうでもいい。それよりも気になることがある。


 シェルスは言った。勇者となるに相応しい人物を探していて、俺を見つけたと。つまり――


「俺は勇者に選ばれたのか?」


「ええ。この世界――『ベルリハウド』を救う勇者に!」


 シェルスがパチンと指を鳴らすと俺たちの目の前の空間に“穴”が出現し、さながらスライドショーのように風景が映し出されていく。


 中世ヨーロッパのような街並み、その場所を行き交う人間や獣人、火山、雪原、そして――ドラゴン。まさにRPGで見た光景そのままだった。


 身体の奥底から興奮が湧き上がってくる。


「『ベルリハウド』は今、長い眠りから復活した魔王によって危機に晒されています。このままではいずれ世界が滅びてしまう。だからこそ勇者である貴方には魔王を打ち倒し、この世界を救って欲しいのです。……もちろん突然の話で戸惑うことはあるでしょう。ですがヒイロ、ぜひ貴方に――」


「やる」


「はい?」


「やると言ったんだ。勇者の役目、引き受けよう」


 きょとんと小首を傾げるシェルスへ向けて、固い決意を示すように拳を向ける。


 ――世界を救う勇者だと?


 そんなもの二つ返事で引き受けるに決まっているだろう! 子供の頃から憧れていた夢の舞台に手が届くチャンスが巡ってきたんだ。ここで手を伸ばさないという選択などあり得ない。


 それに本来なら死んでいた身だ。世界救済に捧げられるならいっそ本望!


「ありがとうございます、ヒイロ。貴方ならそう言ってくれると思っていました」


 柔らかく微笑んだシェルスが“穴”に向けて手をかざすと、移り変わっていた風景がどこかの森の中で固定される。あれがスタート地点ということだろう。


「この穴をくぐると『ベルリハウド』へ行けます」


「よし、なら早速――」


「お待ちを。その前にこちらの“特典”から一つをお選びください」


「特典?」


 いつの間にかシェルスの前には三つの光球が浮遊している。


 ああ、初心者用のアイテムや装備のスターターセットみたいなものか。


「手で触れると内容が分かりますよ」というシェルスの言葉に頷き、端から順に触れてみると――


『魔力量限界突破&全魔法適正MAX』


『経験値増加率百倍』


『剣技解放、全流派無制限使用可能』


「…………」


 一度深呼吸してからもう一度試してみても、内容は変わらない。


 ピクリと、自分のこめかみが蠢くのが分かる。


「おい、もうちょっとマシなのは無いのか……?」


「マシなの……? おやおや、ヒイロは随分と欲張りさんなのですね。仕方ありません。でしたら特別に、この万物を切り裂く聖剣『ソルドイレイザー』も加えて――」


「フンッ!」


「痛ァいッ!?」


 何もない空間からやけに神々しい大剣を取り出したシェルスの頭を全力で叩く。女性だからとか知るか。


「何だこのラインナップどう考えても強すぎるだろッ!? 最初期にこんなん与えたらバランス崩壊もいいところだッ! デバックプレイちゃんとしてんのかァッ!?」


「え、え、でも、ヒイロの元いた世界にはあるんじゃないんですか……!? 強くてニューゲームとかいう――」


「あれは真っ当にクリアしたプレイヤーに与えられる権利なんだよ! マジで最初から与える奴があるかァッ!」


 叩かれた頭を押さえて涙目になるシェルスは、心底訳が分からないといった表情を浮かべている。ええい、攻略の醍醐味を知らない愚か者め!


「とにかく他に無いのか!? もっと弱くて普通のヤツ!」


「え、ええぇぇえええ……!? でも後は『強制催眠』とか『スキルドレイン』とか『ハーレムの魔眼』とか……!」


 あれでもないこれでもないと、どこぞの猫型ロボットのように空間を漁るシェルス。どれもこれも名前からしてチート臭が半端ない。


「もういい! 特典無しでこのまま行く!」


「え、ま、待ってください!? それは無謀で――!」


 背後から呼び止める声があるが止まらない。俺は全速力で“穴”へと飛び込んだ。











「待ってくださいヒイロッ!」


“穴”をくぐり抜けた先、私こと女神シェルスは、何やら天を仰いで両手を大きく広げている男性に向かって声を張り上げます。


「ちょっと聞いてますかヒイ――」


「騒ぐな。俺は今初めての異世界の空気を堪能しているんだ。……ふぅ、さすが異世界。空気の感じからして何か違うな」


 深呼吸を繰り返して満足気に頷くヒイロ。


 ヒイロの元いた世界と違い、『ベルリハウド』の大気中には少なからず“魔力”が含まれています。恐らくそれを無意識に感じ取っているのでしょう。


 ……言動はさておき、やはりこの人、資質は十二分にあるみたいです。けれどそれに感応して呼び寄せてみれば、まさかこんな扱い辛い人だったとは……。


 何ですかっ!? ヒイロの世界の人たちってチートとかそういうのが好きではなかったのですかっ!?


 私が『ベルリハウド』救済のために必死に集めたスキルをいらないモノ扱いだなんて……憤慨の極みですっ!


「で、何でお前は付いてきたんだ?」


 堪能とやらは終わったのか、ヒイロは胡乱げな目を私に向けてきます。


 女神である私に対してなんて目を……最初はちょっと見惚れていたの分かってるんですからねっ!


 ――いえ、落ち着きなさいシェルス。私の野望は数多くの人から崇め奉られる女神になること。他のライバルがいる中で上を行くためには、世界を救う勇者を導いたという実績を残すことは必須。そのためには多少の屈辱は耐えるのです。


 こほんと咳払いをして精神を整えた私は、ヒイロへにこやかな笑みを向けます。


「ヒイロが心配だからに決まっています。ご自分の腕に自信があるのは結構ですが、やはり何の“特典”も無しというのは危険です。今一度考え直して――」


「そんなものはいらない。俺は正当な努力の下に得た力でこの世界を救う」


「……お言葉ですが、ヒイロはこの世界を甘く見ています。確かに貴方の世界にあった“げーむ”と似通っているでしょうが、一度死んだらそこで終わりなのですよ? やり直しなんてできないんですからね?」


 この『ベルリハウド』は、見事救済できた暁に高い評価を得られる分、モンスターが活性化しているとても危険な世界です。


 当初の予定では、いわゆるチート能力を与えて向かわせるつもりでしたのに……。最悪ヒイロが死んでも、再度他の人間を召喚することはできなくもないですが、『簡単に死ぬような人間を勇者に選んでしまった』という汚点は残ります。出来うるかぎり汚点は残したくありません。


「そっちこそ俺を甘く見るな。俺はどんな初見のゲームであっても必ず最高難易度、そして一度でもゲームオーバーになったら最初からプレイすることを信条としていた。世界の危機だろう何だろうと……ノーコンティニューでクリアしてやる」


 キリッと、そんな感じで表情を引き締めるヒイロ。


 ……不覚にも少しドキッとしました。割と顔は良いんですよね、この人。少し長い黒髪から覗く鋭い眼差しとか私の好み――ではなくてっ!


「とにかく、せめてこれだけでもどうぞ!」


 私は聖剣『ソルドイレイザー』をヒイロに向かって突き出します。突然のことでこれしか持ち出せませんでしたが、序盤はこの一振りでどうにかなるでしょう。他の“特典”はおいおいどうにかするとします。


「だからいらないと――」


「そう言わずに! お願いですから! 試しに一度持ってみるだけでもいいですから! ほんの少し、ちょっと、先っぽ、先っぽだけでもいいですからっ!」


「おいやめろ、その言い方はやめろ!」


 ぐいぐいと聖剣の柄をヒイロに押し付けようとすると、なぜだか彼は妙に狼狽えます。


 これはチャンス、このまま一気に押し通します!


「おーねーがーいーでーすーかーらーっ!」


「だーっ! 分かった分かった、一度持てばいいんだろ! 一度だからな!」


 ようやくヒイロは聖剣を手にしてくれました。瞬間、彼の目の色が変わります。


 ――計画通り!


『ソルドイレイザー』は聖剣の中でも抜群の神格を誇っています。たとえどれほど剣の素人であっても、手にしただけでその力の凄まじさを感じることができるはずです。


「これが……聖剣……」


 うわ言のように呟いたヒイロが近くにあった大木に剣を振るいます。目にも止まらぬ速さで切り裂かれた大木は、瞬く間にバラバラの木片や枝に成り果てました。


「お見事! さすがヒイロです!」


 本当は聖剣の力によるところが大きいでしょうけど、とにかく褒め倒してその気にさせれば、ヒイロだってきっと考えを改めるでしょう。


「どうですか、聖剣の切れ味のほどは! それさえあれば、どんな物だろうと思いのままに切ることができるのです」


「思いのままに……。例えばあのデカい岩でもイケるのか?」


 ヒイロが聖剣の切っ先を向けたのは、少し離れたところにある身の丈よりも一回りも二回りも大きい岩。およそ素人では切ることは叶わず、下手をすれば剣の方が刃こぼれしそうな頑強さが見て取れます。


 でも聖剣ですからね! 問題無しです!


「ええ、もちろん。それこそバターのように」


「なるほど。だったら……」


 私の返答に頷いたヒイロは大岩に近付くと――またもや高速の斬撃によってその全体を切り刻んでいきます。


 ふふふ、何ですか何ですか。すっかり聖剣の魅力にやられてしまったようです。


 口では嫌がっても身体は正直ってヤツですね!


「――よし」


 最後に聖剣の切っ先で大岩の表面を何度か撫でたヒイロは、聖剣を逆手に持ち替えて切っ先を下に向けると――


「これで完成だ!」


 勢い良く大岩に聖剣を突き刺しました。


 完成? はて、どういう意味でしょうか……?


「さて、いつまでもスタート地点でうだうだしていても始まらないな。シェルス、ここから一番近い街か村はどこだ?」


「あ、それでしたら、まずはこの先を行けば……」


「ならさっそく行こう」


 ヒイロは私の指差した方へ迷いの無い足取りで歩き出します。


 ――何故か突き刺した聖剣を置いたまま。


「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って下さいっ!? 聖剣忘れてますよっ!?」


「忘れたんじゃない。ここに置いていくんだ」


「な、何でですかっ!? 聖剣の力はヒイロだって理解したでしょう!? さっきだってあんなに意気揚々と――」


 そう言って大岩に目を向けたところで、私は気付きました。


 適当に試し切りされただけだと思った大岩ですが、よく見れば綺麗な台形に形作られています。垂直に突き刺さった聖剣も合わせて見れば、まるで祭壇のような様相。


 それに大岩の前面には紋章のようなものと、何かの文字が……何て読むんでしょう、これ……?


「――聖剣よ、ここに眠る」


 私の視線の先を察したのか、ヒイロが文字の意味を口にします。


「悔しいが、今の俺ではまだ聖剣の担い手として不十分だ。だが世界を渡り歩き、再びこの場所に戻って来た時……俺はきっと相応しい人間に成長しているだろう。だからそれまで、聖剣はここにまつっておく」


「えぇぇええ、そんな面倒なことをしなくても……」


「それにな」


 ヒイロは私の言葉を手で遮ると、憎たらしいぐらいにとっても得意気な笑みを浮かべて――


「始まりの場所に最強の武器があるって……ロマンだろ?」


「知りませんよそんなものッ!?」


 ぐっと親指を立てるヒイロに、私は全力で叫びました。


 ロマンだか何だか知りませんけど、非効率の極みじゃないですかっ! この聖剣だって手に入れるのに相当苦労したんですからねっ!?


「第一聖剣までここに置いていったら、武器はどうするんですか!? 拳闘士モンクでもないのに、丸腰でモンスターと闘うなんて無理です!」


「武器ならある。俺の胸に宿る、世界を救うという強い意思。そして――」


 先ほど切った大木の枝を拾うヒイロ。


「この“ひ○きのぼう”がな!」


「ただの枝ァッ!」


 本っ当にただの枝を持って何カッコつけてるんですかこの人はっ!?


「ああ、子供の頃が懐かしいなぁ。帰り道でちょうど良い感じの枝を拾った時は、それだけで勇者になれた気がしたんだ……」


「変な感慨にふけらないでくれますかっ!? とにかく、やはり聖剣は――」


「――静かにッ!」


 再び私の言葉を手で制したヒイロは、急に表情を引き締めて鬱蒼と生い茂る木々の方を睨みます。


「ど、どうしたんですか……?」


「何かいる。恐らくあの一際太い木の陰に」


 固唾を呑んで見守るヒイロと私。ややあって木の陰からひょっこりと顔を出したその“モンスター”に――ヒイロは鋭く息を呑みました。


「お、おいシェルス……“アレ”は、まさか……!」


「え? ええ、“アレ”ですけど……」


「本当に“アレ”なのか……!? 俺が幻覚を見ているわけじゃなくて……」


「いや普通に“アレ”ですよ!? なんでそんなに狼狽えるんですか……!?」


 ヒイロはわなわなと身体全体を震わせると、手にした“ひ○きのぼう”とやらの先端を突き出して声を張り上げます。


「見つけたぞスライムゥゥゥァァァッ!!」


「何でそんなテンションッ!?」


 私たちの前に現れたのは、水色のドロドロ半透明ボディを持つ最弱モンスター――スライムです。特殊個体とかじゃなくて、本当にただの、何の変哲もないスライムです。『ベルリハウド』準拠なので多少は強いでしょうが、それでもただのスライムです。


「そんな魔王に出くわしたみたいなテンションになりますっ!? あんなのそこら辺にたくさんいるんですよっ!?」


「バカ、スライムだぞ!? RPGにおいてはある意味看板モンスターであるスライム――いや、スライム様だぞ!」


「様付けッ!?」


 もう分かりません! この人の琴線とかそういうものが一切合切理解できませんよ私はッ!


「いくぞスライムゥゥゥゥァァァァッ!!」


「ああもう何でこんな人選んじゃったんですかァァァァァッ!」


 私の切なる叫びが、森一帯に響き渡りました。











 その後、スライム相手に辛くも勝利を収めた勇者ヒイロ。彼と一人の女神が世界を救うことになるのは――まだかなり、先の話である。

 ぶっちゃけ聖剣の祭壇の下りを書きたかっただけのお話。もしよろしければ評価なり感想なりを頂けると幸いですm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公と女神様のテンションが好きですwww
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