高校入学
今思えば、僕は彼女に恋をしていたのではなかったのだと思う。
彼女は僕に無いものを全てといっていいほど持っていた、そんな所を羨ましく思う感情を、恋だと勘違いしただけだったんだ。
僕はそんな勘違いで、彼女の人生をめちゃくちゃに壊してしまった。
4月、高校の入学式が行われた。僕は少し肌寒い体育館で、新しい環境への期待でソワソワしていた。すると、隣に座っていた女の子が声をかけてきた。
「君、10組の子だよね?」式の途中だったので、小さな声だった。急に女の子話しかけられたので緊張したが、「そ、そうだよ。君もだよね?」と答えた。女の子とあまり喋ったことがない僕からすれば上出来だ。女の子は、「そうだよ、これから学校でよろしくね!」と言って笑った。
その後、教室で自己紹介が行われた。女の子の名前は池田陽葵というようだった。他にも38人のクラスメイトと担任の先生、合わせて41人のクラスだ。自己紹介が終わると休み時間になり、皆がLINEの交換やインスタグラムのフォローだとかをし始めた。すると池田さんが僕のところに来て、「LINE交換しよ!」と言ってきた。もちろん、女の子と仲良くなれてラッキーとか思いながら「いいよ」と言い交換を済ませた。池田さんは僕以外にもほとんどの人とLINEを交換したようだ。インスタグラムはやってないとか聞こえたな。
その日の夜、池田さんからLINEグループの招待が届いた。クラスのLINEグループのようだ。グループに参加して、「よろしく。」と一言だけ送って、寝ることにした。
次の日、学校に登校すると池田さんが「おはよう!」と言ってきたので、「おはよう、池田さん」と返した。すると、「さんなんて付けなくていいよ!これからはひまりって呼んで!」と言われた。僕は高校デビューをしたからまだマシになっているものの、中学では全く女子と話さないような人間だったので、下の名前で呼んで、という言葉だけで凄く恥ずかしくなってしまった。
3限目はコミュニケーション英語だった。コミュニケーション英語はグループワークをよくやるらしい。同じ班には池田さんもいる。誕生日が池田さんと近くで良かった、なんて思っていた。授業が始まると、班の中で英語で自己紹介をしてみましょう!と言われ、グループワークが始まった。英語が苦手な僕は、時間がかかるのに内容が全然ない全くダメダメだった。しかし、池田さんは帰国子女なのかと疑うほどに綺麗な発音で、先生にも凄く褒められていた。
初めて凄く劣等感を感じた。
タイトル募集中