落ちぶれた人気者
時は20XX年
日本のある学者より世界はひっくり返る
それは彼が行なった幽霊の科学的証明、およびそれを形成する特殊なエネルギーの発見であった。
これにより世界は大きく形を変え始め
10年の月日が流れようとしていた、
これはその世界の変化に取り残された男の物語である!!
季節は春!
満開の桜が新たな出会いを祝福し、
賑わう社会の片隅に湿気臭い小さな探偵事務所が一つ
そこに居座る幸の薄そうな男が使い古してところどころ破けているソファに寝そべりながら呟いた
「あー仕事が欲しい」
平日の夕方に呑気に仕事もせずにゴロゴロしている男の名は雲瀬希院
26にもなって未だに社会に適合できず寂れた事務所で探偵をやっている冴えない男である。
「おはようございます!!!」
カビ臭い事務所に似合わないハイテンションな女子高生が勢いよく扉を開けて入ってきた。
彼女の名前は尾杜紀穂。
キインの事務所でアルバイトをしている高校2年生
ろくに仕事が入るわけでもないのに事務所に通う変わり者である。
「おはよう、キホちゃん!今日手伝いお願いしてたっけ?」
「いえ!今日はキインさんにお仕事持ってきましたよ!」
「すまないキホちゃん、今日はいろいろ忙しくて」
「今仕事欲しいってボヤいてましたよね?」
先程まであれほど優しかった彼女の笑顔に影が差し込み、絶対に受けろよと言わんとする感情が現れている
長年の付き合いで察した彼は現実を受け入れソファから体を起こし向き合った
「逃げらないか、、、うん、受けるよその仕事」
「最初からその姿勢を見せてくださいよ、いい大人なんですから」
呆れ顔の彼女がカバンから取り出したのは一枚の写真
そこにはとても可愛らしい一人の少女が写っていた
「彼女の名前は田中美咲さんうちの高校の一年生です」
「キホちゃんの後輩かこの子が依頼主?」
「いえ、依頼主はこの子の母親の田中敦子さんで依頼内容は行方不明になった彼女の捜索です」
「行方不明者の捜索?そんなのは警察の仕事だろ?なんでオレのところに?」
「それは今回探してもらうのは彼女の意識だからです」
「霊体の誘拐ってことか?」
「はい、今年に入って世界で3件目の生きた肉体から意識だけを誘拐した特殊なケースです。」
「そんな事件がなんでオレのところに?」
「それはですね〜」
ピピピー!!!
彼女のカバンから高い電子音が響き、彼女がカバンから小型のスマホを取り出す
「あ、ちょうどよかった」
「ん?未だに旧型スマホ使ってるの?キホちゃん」
「うるさいですね!ビジョン型のスマホは操作しづらいし、本体小さ過ぎてよく落とすから旧型でもいいじゃないですか!はい!電話に出てください!!」
画面に表示されている電話の相手の名前は彼にとって今最も関わりたくない女性、秋乃草凛
近隣の住民を管理している政府の役人であり、
彼に事務所を貸している大家でもある
「はい、もしもし雲瀬事務所の担当の雲瀬です」
「あら、あなたがこんなにも早く出るなんて意外ね?キホちゃんから説明は聞いた?」
「大体な、今アンタから電話が来た時点でなんとなく察したよ」
「今回の依頼は政府との共同捜索よ、報酬は国からも支給されるから絶対に受けなさい!あなたの滞納してる家賃差し引いて渡してあげるから」
「どうせ断れないんだろうし諦めたよ。で?報酬はいくらなんだ?」
「細かい経費こっち持ちで最低3億よ」
「嫌な汗が滝のように出てきて、冗談ではなく胃がキリキリといってるのだが断っていいか?」
「そろそろ働け元霊能力者♡」
彼はこの時、心の底から過去の自分の怠慢を後悔して明日から死にもの狂いで就職しようと誓ったという