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きみのはなし

いまのような

あどけない笑みのうずが

たちどころに消えて

もうほほえむこともできなくなったら

帰ってきてください


きっと二十年もないうちに

そんなことをいうようになるだろうから

これはきみのはなし


端れいな記憶の書庫

きみはなにをおぼえて

なにを忘れていくんだろう


台風は

記録的な豪雨をふらせつづけて

いまだ家の窓を

つよく

つよく

つよく


きみはどうやら雨音に怯えている

わたしにすがりついている

そのぬくもりがいじらしいよ

これはわたしのはなしでもある


いつまでも

忘れずにいられるだろうか

このごろ 体調がすぐれません

先二十年はいきるつもりです

右脚の包帯はまだとれない


こほん

と咳をする

うるんだ瞳で

きみは

だいじょうぶ

と訊く

雨音よりも

わたしの咳がこわいらしい

だいじょうぶ

もうちがうから


カーテンをひらりと捲って

そとは混沌としている

雨はガラスの景色をぐちゃぐちゃにして

なんだか世界がよくみえない

自動車のテールランプだけが

ゆがんでいてもはっきりわかる


こほん

とまたも咳をした

だいじょうぶ

ときみはまたも訊く

だいじょうぶだよ

これはもうちがうから

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