脳筋青春組
「おいーす、戻ったぞー」
プールに戻ると、全員プールサイドに上がって各々が先ほど買ったジュースを飲んでいた。
プールも緑がかった汚さはもう半分ほどまで減少しており、春野と魅墨の努力のたまものだろう。
「お兄遅いー……って、それなにー?」
翠は俺を黄島先生に売り飛ばしたくせに、文句を言いつつ、目ざとく俺の手に持つビニール袋を指差した。
「黄島先生からの差し入れ。アイスだってよ」
俺が翠にビニール袋を手渡すと、全員の目が輝き袋にみんな手を伸ばしはじめた。
「お、チョコアイスっす! これ好きなんっすよね」
「頑張った甲斐があるよ。冷たい」
春野は目を輝かせてアイスを嬉しそうに頬張り、魅墨はアイスを開ける前に、おでこにアイスを当てて身体を冷やしていた。
俺も食べようと袋に手を伸ばすと、俺に向かって翠がアイスを差し渡した。
「ん、お兄の分」
「お、サンキュー」
「あと真白のもね」
「あ、ありがとうございます」」
全員にアイスが行き渡り、束の間の休息。
太陽が照り付けており、暑いのは暑いんだけど、暑いからこそアイスが美味しい。
「青春っすねえ」
だらけた笑顔でそっと呟く春野の言葉に、俺はぷっ。と吹き出した。
言いたい事はなんとなくわかるが、言い方が面白く感じる。ちょっぴりおじさんくさいと言うか。
「私も、親友とこうやって汗を流して青春を感じるよ。な、蒼司」
魅墨は魅墨でなんか暑苦しく青春を感じてるようだ。同じ意味なのに、こうも雰囲気が変わるもんなんだな。と、圧を感じる魅墨の視線にははっと渇いた笑いで返す俺。
一向に切れない視線を顔の横に感じつつ、真白と翠を見た。
「やっぱりさー、暑い時はアイスはテッパンだよね。でも、フラペチーノとかも飲みたくなるんだよねー。そういえば真白はスタバの新作飲んだ?」
「まだ飲んでないですよ。美味しいんですか?」
「もち。絶対飲んでみて、あれはリピ確定」
青春組を他所に、楽しそうに話をしながらアイスを舐める真白と翠を見て、魅墨なんとかしてくれ。と喉まで出かかった言葉を飲み込んで、魅墨の方は向き直した。
「そうだな。親友と一緒に作業できて、俺は青春を感じてるよ」
俺が作り笑いを浮かべて青春を実感したととりあえず言っておくと、魅墨は満足気に頷いた。
「うむ。蒼司ならそう感じると思ったよ。それに、君の後輩の桃子もなかなかに素晴らしい。一緒に青春を感じてるよ。学年が一緒なら大親友になってたはずだ」
俺は全く青春を感じてないが、魅墨は俺が青春を感じると思ってたらしい。それ、勘違いですよ。
そんなことよりいつの間にか魅墨は春野を気に入ったらしい。呼び方も親友特有の名前呼びになっている。
「そうっす。一緒にしのぎを削っていい汗かいて仕事をしたら、それはもう親友っす! ねー、魅墨さん」
春野は春野で魅墨に感化されたのか、魅墨の考え方で同意している。
この脳筋青春組にとりあえず笑顔だけ向けて、俺はアイスを一口食べた。
はよ終わらせよ。
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