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黄島先生のご褒美

 黄島先生に連れられて職員室に入室すると、ちらほらと数名の先生が机に座って何かを書いたり、部活動での指導用なのか、体の動かし方の本を読んだり、いつもと違う雰囲気で仕事をしていた。


 なんというんだろう、少しラフっぽい感じといえばいいのかな?


 いつもスーツ着てる先生が、上下ジャージだったり、いつも髪の毛をあげている先生が下ろしていたり。


 まあ、ラフさでいえば黄島先生がトップだろうが。


 俺はポケットに手を入れながら歩く先生の背中をじとーっとした目で見ながら着いて歩く。


 物珍しそうに俺を見る他の先生の視線をよそに、黄島先生は職員室の奥にある冷蔵庫前に立つと、その冷凍室を開けた。


 ひんやりと心地よい風に向かって黄島先生は手を伸ばすと、四角い箱を一個抜き取った。それは10本入りの練乳の入ったチョコアイスだった。


「皆野、今日は何人来てるんだ? 頑張ってもらってるから差し入れ持ってってくれ」


「え、いいんですか? 俺含めて五人です」


 なにか説教でも喰らうのかと思いきや、予想外のご褒美に思わず素のままの反応をしてしまう。


 ありがたく人数を伝えると、先生は箱を開けて五本アイスを抜き取ると、ビニール袋にいれて俺に手渡した。


 なんて素晴らしい先生なんだろう。


 俺は感心しながら頭を下げてビニール袋を受け取った。


「じゃあ、これな。近藤と皆野妹と、春野と……、あとは土方か? 佐倉か?」


「み……、土方です」


 先生が参加者の確認をしてきて、俺は魅墨と言いかけてすぐさま言い換えた。


 当たり前のように名前呼びしてるが、流石に黄島先生も先生だからな。


 黄島先生は俺の言葉を聞いてなにやら思案顔で顎に手をやる。少し考えたのち、口を開いた。


「今度支援部でなにかすることとかあれば佐倉とかも呼んだらどうだ? 確か仲良かったよな。人望があるし、あいつが支援部に来たら支援部の評判が鰻登りでパシリが増え……コホン。もっと学生らしく協力する素晴らしさを学べると思うんだが」


 ……さっきの感心を返して欲しい。黄島先生は黄島先生のままだった。


 パシリと言いかけてわざとらしく咳をして誤魔化してるところが、ほんと残念だよ黄島先生。


 だが、まあ佐倉を誘うのもありかもしれない気はしている。


 最近は生徒会と協力する事が増えたし、今日の清掃のような事もそうだが人手があるに越した事はない。


 ましてや、佐倉だったら俺も気心知れてる友達だ。嫌な事はないし、むしろ来てくれると嬉しい。


「パシリを増やそうとする本音を言いかけたことは佐倉に黙ってあげますので、アイスをまた部活の時に差し入れてください。そしたら前向きに検討します」


 本音としてはそりゃもう礼を呼ぶ気満々だったが、ただ呼ぶだけでは黄島先生が楽するだけだろう。ちょっとくらい還元してもらわなきゃとご褒美交渉を行なった。


「しょうがない。お前はいい性格してるよ、まったく。まあ、いろいろ手伝ってもらってるから、差し入れはやぶさかではない。ただ、佐倉を入れるかは無理にとは言わない。佐倉次第でいいからな。兼任でたまに遊びにくるくらいでな」


 黄島先生は肩をすくめながらも、渋々といった表情でご褒美を了承してくれた。それに、礼を無理に呼ばなくてもいいって言ってくれる辺りは良い先生なんだよな。


 ただ、いろいろと残念なだけで。


「わかりました。また、入るって話になったら連絡させてもらいますね。とりあえず月曜日にでも聞いてみます」


「おう、頼んだ。じゃあ、皆野、引き続きよろしくな」


「了解です」


 礼の入部については休み明けに一旦保留とする事を告げると、黄島先生は期待を込めてか肩に手を置いた。


 俺は期待に返事をすると、職員室を後にしてアイスが溶ける前に、プールへと足早に戻って行った。


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