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あなたの好きなジュースは

 掃除をサボり、学校の購買横の自動販売機に辿り着くと、俺は財布から千円札を自販機に挿入し、迷わずにコーラのボタンを押した。


 ガコンと小気味のいい音が鳴って、赤色の自販機の受け取り口にはコーラが滑り落ちてきた。


 キンキンに冷えているコーラを手に取ると、俺はついてきた翠と真白の方を振り返り親指で自販機を差した。


「好きなの買ったらいいぞ」


「「え?」」


 俺が奢る宣言をすると、二人は声をハモらせて少し驚いた顔をしたあと、ニンマリして翠はオレンジジュースを、真白はミネラルウォーターをそれぞれ購入した。


「お兄、サンキュー!」


「蒼兄、ありがとうございます」


「おう」


 二人のお礼に少し満足気に手をあげて答えたあと、俺はスポーツドリンクと、ピーチティーを購入して、お釣り出した。


「もしかして、桃たちのぶん? お釣りしまうでしょ? 待とうか?」


 翠は買ったオレンジジュースを脇に挟んで、空いた手を伸ばした。


 気が利くなあ。と思いながら俺はスポーツドリンクとピーチティーを差し出した。


「そうだ。頑張ってるからなあ、俺らだけじゃなくてあの二人も少し休まなきゃ」


 翠がスポーツドリンクとピータを掴んだのを確認して俺は手を離すと、釣り銭口からお釣りを取り出し、財布にしまいながらプールに向かって歩き出した。


「お兄、これってどっちが桃でどっちが魅墨さん?」


「春野はピーチティーだ。マスカットティーとかフルーツ系のお茶が好きらしい。あと、魅墨は好みはわからんが結構汗かいてたからなあ、手っ取り早く補給できるスポーツドリンクがいいだろ」


「へー。まめだねえ」


 俺が購入したドリンクを誰に渡すか説明すると、なぜか翠は機嫌悪そうに目を細めた。その様子を見て、真白はなぜかくすくす笑った。


「蒼兄らしいというかなんというかですね。じゃあ、私の好みとかも把握してます?」


 イタズラっぽい目線を向けてニヤニヤする真白に、俺は何を当たり前のことを聞くんだと言わんばかりに自信たっぷりに答えた。


「もちろんだ。俺が真白に買ってくるならアイスコーヒーだな。どうせさっきも気遣って一番安い水にしたんだろうが、今後は遠慮することないぞ」


「え……」


 真白はあっけに取られたように声を漏らして口を開けて呆然とした。図星をつかれたんだろう。


 ふふふ、舐めてもらっては困るなあ。


「へー。じゃ、私にはどうなの?」


 なぜかますます機嫌が悪くなったような翠は、声を低くしながら肘で俺を小突いた。


「翠か? そ、そうだなあ、翠は昔からオレンジジュースだろ?」


 俺は若干気を遣いながらも、翠の好きなオレンジジュースと答えた。


 俺の記憶のある頃から、翠はずーっとオレンジジュースが大好きだからなあ。自販機にあれば毎回買う程度には好きだったはず。現に今も買ってるし。


「……そ、そうよね、私は昔からそうだもんね! 昔からね!」


 どうやら、俺の解答は正解だったらしい。機嫌は回復したようで、翠の声はほんの少しだけ上擦った。


「じゃあ、皆野、私の好きな飲み物はわかるかー?」


 和やかな雰囲気から不意に、俺の肩に衝撃が加わって、耳元でだるそうな声が響く。


 俺の肩には腕が乗り、声の方向に視線を向けると、ダルダルのTシャツと黒のジャージを履いて、ボサボサ頭雑に括っている黄島先生がそこにいた。


「あんたは酒だろ」


「ははっ、ぬかしよる」


「あたたたたた!!!! す、すみません! タップ、タップです!」


 俺が黄島先生の好物を吐き捨てるように言うと、黄島先生は口では、ははっ。と言いながら、俺の肩にかけた腕を首に回してヘッドロックをくらう。


 俺は許しを懇願して腕をペシペシとタップすると、絞められた腕の力は弱まり解放された。


「まあ、正解なんだけどな」


「合ってんのかよ」


 腰に手を当てて、ふんぞりかえっている黄島先生にツッコミをいれて肩を落とした。やられ損じゃないか。


「悪いな、ちょっと休憩がてら様子見に来たら、ついおちょくりたくなる背中が見えたからな。捗ってるか?」


 どうやら土曜日出勤をしてたらしい黄島先生は、俺をいじめたことに対して悪びれる様子もない軽い謝罪を口にして、押し付けた仕事の進捗を確認してきた。


「まあぼちぼちです。支援部と生徒会で頑張ってます。ヘッドロックや肩パンは甘んじて俺が受けるんで真白と翠に労いの言葉でもかけてやってください」


 俺は憎まれ口全開で黄島先生を煽ると、黄島先生は満面の笑みで額に青筋を浮かべた。


 途端にやべ。と声を漏らしてしまうが後の祭り。翠と真白に至ってはほんの少し後退りしていた。


 言い過ぎたと後悔する頃には、俺の両肩に黄島先生の手ががっしりと置かれていた。


「おいおい、それじゃ私が日頃皆野に暴力を振るう教師みたいじゃあないか。これは言わば愛の鞭なんだが、伝わってないようなら仕方ない。近藤、皆野妹、今日はありがとう。助かるよ。お礼ついでに、申し訳ないが皆野借りるぞ。ちょっと手伝ってもらうことがたった今でてきた」


「「どうぞどうぞ」」


 黄島先生の気迫に押されて、翠と真白は掌を向けて俺を黄島先生に差し出した。


 もはや逃げられないと悟った俺は、なすすべもなく、黄島先生に職員室へと引きずられた。

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