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黄島先生は女子です

 金曜日の夕方の事。


 プール清掃前日なので、俺は黄島先生に呼ばれて掃除用具の準備を始めていた。


 学校指定のダサい半袖と、膝下まで捲り上げたジャージで気合十分に、額には汗を滲ませて、俺はデッキブラシをもくもくと運び出した。


 来週には夏服に衣替え。夏はもうすぐだ。照りつける西日が夏の訪れを感じさせるわけなのだが……。


「あっちいいいい! なんで今日に限ってこんなあちいんだ!」


 いい加減に限界がきた俺は、プールサイドで照りつける太陽に向かって思い切り吠えた。


 暑いのが嫌いすぎてやってられん。


「ほら、皆野。うるさいぞー。まったく」


 黄島先生は叫ぶ俺を軽く注意しながら銀色の缶を開ける。缶からは空気の抜ける小気味良い音が鳴り、先生はゴクゴクと喉を鳴らしてその飲料を飲み干した。


「あんた何してんだ!」


 思わず黄島先生にタメ口で全力でツッコミをいれる。俺の目に間違いがなければ先生がご機嫌に飲んでいるそれはビールに他ならない。


 怒るでしかし。


「皆野はうるさいなあ。ツッコミがや○し師匠みたいに全力でびっくりするぞ」


 黄島先生はもう一度グビリと飲料を飲むと、俺に近付いて着た。


 いつもと違って薄手の白いシャツにベージュのハーフパンツでラフな先生の格好に正直目のやり場に困りながらもまあ、近付いてきたのでガン見する。


 黄島先生は俺の視線に気付いたのか少しムッとした顔で手に持った缶を俺のおでこにぶつけるように当てた。


「あいたっ!」


 俺はぶつかった缶を掴むと、黄島先生は俺をじろっと睨んでその缶を指さした。


「まず一つ。どこ見てんだ。百歩譲って私はいいとして、他の奴におんなじ顔見せるなよ。で、もう一つ。勘違いしてるようだが、それは海外のコーラだ。流石に私も業務時間では飲まん」


 黄島先生に指摘され、ほんのり恥ずかしくなりながら、すけべな視線を誤魔化す為に缶に書いてある文字を見てみると、英語で何書いてるのかさっぱり分からないけどCokeと書いてあることだけは分かった。


 あー、ほんとだー。勘違いしてた。


 まあ、黄島先生なら飲みかねないと思うからやっぱり黄島先生が悪いってことで。


「まったく、失礼な生徒を持ったもんだ。私ほど人間出来た教師はいないだろうに」


「人間出来た教師は突然放課後に『みーなのー、掃除道具用意するの忘れてたから手伝えー。あと悪いが他の奴らには明日プール掃除だから今日は部活なしって言うのも忘れたから言っといてー。じゃ、職員室で待ってるから』とは言わないと思うんですけど」


 呆れたように肩をすくめる黄島先生に、俺はジト目で今日の放課後の黄島先生の台詞を復唱する。


 あまりにも突然だったから支援部全員に急いで連絡取って、連絡取り終わったあとに職員室に行ったらデッキブラシとバケツを掃除用具入れから発掘させられて、現在に至ってる。


 文句の一つや二つ言いたくなるし、邪な視線の一つや二つ許されるんじゃなかろうか。


 俺のジト目に耐えられなくなったのか、黄島先生は視線を逸らしてふーっと大きく息を吐いた。


「皆野、こんな諺を知っているか? 大人は大耳(たいじんはおおみみ)といって、心にゆとりのある徳の高い人は小さい事は気にしないって意味だ。皆野、お前もそんな人になってほしい」


「先生、正当化が無理矢理すぎます。……まあ、いいですけど」


「お、それでこそ皆野だ。褒美にそれやるよ。二十代女子と間接キス出来るぞ?」


 俺は半ば呆れながら先生の無理矢理弁明を許すと、気を良くした先生が俺に渡したコーラの缶を指差しながらくれると言った。


 しかしながら、間接キスを指摘されるとそれはそれで飲みにくい。


「……女子?」


 ちょっぴり照れ隠しに黄島先生の女子という単語をわざと聞き返す悪戯でお返しすると、黄島先生はニッコリと微笑んで俺の頭をがっちにと鷲掴みした。


「ああああああ!!!!!!」


 その日、プールサイドで怪鳥が死んだと噂が立ったとか立たなかったとか。


 ただ一つ言える事があるとするならば、黄島先生は女子であるという事に今年以降異論は無くなったという事だけ。




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