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朝の変化

 目が覚めると、セミダブルのベッドには俺だけが眠っていた。隣には翠がいない。


 布団には微かな窪みと、俺より長い髪の毛が落ちており、ほのかに俺とは違う良き匂いが鼻を通っていく。


 翠と寝たのは夢じゃなかったんだな、と俺はぼんやりとした頭で思うとあくびを一つして、ベッドから身体を起こした。


 洗面所でうがいをしてリビングの扉を開けると、なんということでしょう。ここはホテルかなと思うほどの朝食が並んでいた。名古屋でいうモーニングくらい。


 まず、目につくのはふわふわのフレンチトーストに、切ったバナナが添えられてメイプルシロップがかかっている。


 そして、健康面を考えての彩り豊かなサラダとカリカリのベーコン、そしてコーンスープ。


 口直しか、ヨーグルトと湯気がほんのりと上がったコーヒーとミルク。


 実に完璧な朝食で、なおかつ美味しそうだ。美味しそうではあるけれど、なにゆえ?


 母上は何食わぬ顔でコーヒーをすすっており、おそらく朝食を作ったシェフこと翠は、制服にエプロンをつけて慌ただしくキッチンに立っていた。


 まだ着替えてないパジャマな俺が少し恥ずかしい。


「あ、お兄、おはよう。そこ、朝食作ったから座って食べて。お弁当も作ってるから」


「あ、はい」


 翠に促されるまま俺はお母さんの前に座ると、食事の前に手を合わせた。いただきます。


 ナイフとフォークを手に持つと、フレンチトーストを一口サイズに切って一口食べた。


 そして、思った。美味い。


 なにこれ、うますぎるんだけど。


「美味しい?」


 俺が口に運ぶのを見ていたのか、翠が尋ねてきたので、俺は首を大きく縦に振って二口目を口にした。


「そ、よかった」


 翠は淡白に、しかし満足そうに呟くと、エプロンを外した。


「お母さん、洗い物も終わったからね、食器類だけお願い。お兄、弁当忘れないでね。じゃ、私身支度するから」


 翠は自分の席にエプロンをかけると、お母さんにお願いと俺に指示を出してリビングを後にした。


「……蒼司、あんた翠になんかした?」


「……いや、なにも」


 どうやらお母さんも翠の様子にただならぬなにかを感じたらしい。


 心当たりはあるものの、言えば心配かけるだろうから知らぬ存ぜぬで返しておいた。


 お母さんは納得したように、そう。と一言だけ言ってコーヒーをすすった。





「ごちそうさまでした」


 俺は空になった皿に手を合わせて食事に感謝した。


 なんと言っても美味いご飯を食べれるのはありがたい。


 こんな美味いご飯を作れるとは、翠はもういつでも嫁に行けるだろう。


 いや、まあ、俺のお眼鏡にかなうような奴じゃなきゃダメだし、俺のしかばねを乗り越えても俺の父上が待ってる。隙を生じぬ二段構えとはこの事だ。


「蒼司、満足そうにしてるけど、時間大丈夫?」


「え? あ」


 お母さんに時計を差されて、大変まずい時間になってることに気付く。


 俺は慌てて立ち上がると、食器をシンクにつけてダッシュで洗面所に向かった。


 まずいまずい、翠を待たせてしまう。


 俺は歯磨き、洗面、着替え、スタイリングを一気にすませると、再度リビングへと向かった。


 するとどうだろうか。


「あ、お兄。準備できた?」


 いつもとは違う髪型。気合いが入ったかのようにアイロンで髪の毛がふんわりと巻かれて、怒られるか怒られない程度のナチュラルで大人びたメイク、そしてほんのり甘い香水の香り。


 なんなの翠、今からデート?


 呆気に取られる俺に、お母さんはもう一度ボソリと呟いた。


「……蒼司、あんた翠になんかした?」


 ……お母さん。したかも。

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