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俺にとっての大切な妹

「それで……、真白は大丈夫だったんだよね?」


「そうだな。乱暴されそうになっただけで、乱暴をされた訳ではない」


 翠は恐る恐る質問し、俺はそれに淡々と解答する。


 翠は胸に手を当てながら、よかった。と一言呟いた。


「だが、精神的には参ったとは思う。真白は拘束されて、今にも乱暴されそうになっていたからな。自分より身体も大きく、その上バットを手に持つ男にな。想像つくか?」


 翠は俺の説明に対して目を見開いて口元に手を当てた。


 信じられないと言いたげで、その身体はわずかに震えている。


 少し想像してしまったのだろう。少し唾を飲み込んでいた。


「俺も助けに行ったが、バットを避けるのでいっぱいいっぱいだった。真白はそんな状況を拘束されたまま

 ただ見るしか出来なかった」


「で、でも、大丈夫だったんだよね? 大丈夫だから、真白は無事だったんだよね」


「ああ、そうだな。()()()()()()()()()()()()()


 俺が真白を助ける事が出来たのはたまたまだ。


 俺だけではとてもじゃないが助けられなかった。春野がいたからあそこまで無茶が出来たが、いなければ協力者集めたり救出に手間取っただろう。


 手間取るということは、真白が無事に助ける事が出来なかった可能性があるという事だ。


 たまたま運が良かっただけ。運が悪かった事を想像しただけで背筋に嫌な汗が伝う。


 真白は、スカートの裾をぎゅっと握りしめた。その手は赤く変色し、プルプルと小刻みに震えていた。


「翠の責任とは言わないが、原因が翠にない訳ではない。お前が服装指導に揉めた人間、そいつがまあ問題を起こす人間でな。一応はお前を守る為にいろいろしてたけど、真白は特にお前を助けたい一心で少し暴走してしまった結果だ。これが今回の騒動の内容だ」


「……でない」


 俺がこの騒動のあらすじを説明すると、翠は俯きながらポツリと一言呟いた。


 だが、その声は小さく聞こえなかった。


「ん? なんだ?」


 俺は聞き返すと、翠は顔を上げて俺を睨みつけた。そしてそのまま俺の元へ駆けて、思いっきり突き飛ばされた。


 俺は不意打ちを喰らって尻餅をつく。


 尻に鈍痛。抗議しようと見上げると翠は涙目で俺を睨んでおり、俺の抗議は喉元で止まった。


「助けてって頼んでない!」


 翠はポロポロとその大きな両目から涙を流しながら叫んだ。


「そうだな。頼まれた訳じゃない」


「そう、私の自業自得! 私が悪いの! なのに、どうして!? あんたも! 真白も!」


 翠はしゃがんで尻餅をつく俺の襟元を掴んでグラグラと揺らしながら、思いの丈をぶつけるように叫び散らした。


 俺の顔に翠の涙が垂れる。


 自分のせいで自分の周りの人を危険な目に合わせてしまった事にただだだショックを受けてしまったのだろう。


「私なんてどうなってもいいじゃない! 私が撒いた種じゃない! あんた達が危険な目に合う事なんてなかった! 私はなにかされても、自業自得。むしろ、仕方ない事じゃない。真白も、あんたも、私の事なんて嫌いでしょ? なのに、なのに……どうして」


 翠は涙だけでなく鼻水も垂らして、だらしない顔で抗議の言葉をつらつらと吐いた。


 翠が俺の襟元を掴む力は抜け、俺に倒れ込むようにへたれこんだ。


 俺は翠が倒れないように抱き抱えると、後頭部にポンと手をやった。


「どうしてって、お前が俺の大切な妹だからだ。そして真白にとってもな。嫌いなもんか」


 そう言って俺は翠の後頭部を不器用に撫でると、翠は俺の背中に手を回して、俺の胸に顔を埋めた。


 泣いている妹の頭を撫でてあげるのなんて何年ぶりだろうか。


 思い出せない。が、別にいい。


 兄妹だから、兄妹らしい事をしてるだけ。


 妹が危ない事をしたら注意して、危険な目に合うようなら助けて、泣いてるようなら慰めて。


「うう……お、にい……ごめんなざい……。はなじきいて、ほんどは、ごわがっだ……」


「そうだろうな。怖かったな。もう大丈夫だ」


「まじろにも……、あやまる……」


「そうだな。謝ってお礼を言うんだ。春野にもな」


「ゔん……。おにいも……だずげでぐれてありがどう……」


「おう。次からは、危ない事、するんじゃないぞ?」


「……うん」


 翠は一生分泣いたんじゃなかろうか。


 そう思ってしまうくらい、思いっきり泣いていた。


 俺はそんな翠が泣き止むまで、抱きしめて頭を撫でていた。





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