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お兄ちゃんだから当然の事

 あくる日の朝。


 俺と翠は校舎の正門前に立ち、二人で並んでいた。真白でも、魅墨でも、春野でもない違和感。


 生徒会メンバーでも支援部古参メンバーでもない誰かが、しかも翠が隣だという事実が俺に多大なる違和感を与えてるようだ。


 対する翠はというと、何故だかやる気に満ち溢れているみたいで、腕を組みながら生徒達の第一陣を待っていた。


 昨日の啖呵を切った事もそうだが、翠のそのやる気はどこから出てきてるんだろう。まあ、やる気があるのは良い事なんだけどな。


「翠、やる気満々だな」


「もちろん。私がやるからには先公どもが褒めちぎるくらいやってやるんだから」


「おー、それはすごいな」


 翠は汚い言葉でやる気の理由を語っているが、まあどんな理由にせよ頑張ろうと思ってくれるなら良い事だ。


 服装指導を始めてから翠の服装も正しくなってるしこのまま良くなれば先生からの評価も上がるだろう。


 仲が悪かったとはいえ、俺の妹だ。悪く言われるよりは良く思われて欲しい。……こんな事言ったらまたシスコンと言われそうだ。多分シスコンなんだろう。


 仲が悪かったのになんだかんだで翠の事ばかり考えてしまってるし。


 やる気に満ち溢れて不敵な笑みを浮かべる翠を見ながら、頑張れと心の中で応援した。


「あ、お兄来たよ」


 翠が前方を指差し、生徒達の姿が視認できるようになる。


 続々と到着し、通り過ぎていく生徒達のボタン、ネクタイやリボン、シャツが出ていないかを目を凝らして確認していく。


「あ、シャツ出てる。直して」


「あ?」


 おいおい翠言い方があるだろう。


 翠はある男子生徒の服装の乱れを注意したのだが、どうやらその注意方法が男子生徒にはお気に召さなかったご様子。


 歩みを止めて翠にガンを飛ばしながら近付いて行ってる。


「お前あれだろ? この間まで生徒会長と喧嘩してた奴じゃねえか。お前なんかに言われたくねえな」


 男子生徒は翠を挑発して、嘲笑いながらその横をすり抜けていった。


 翠は唇を噛んでワナワナ震えると、その男子生徒の背中に思い切り怒鳴った。


「私は私でしょ! 今はあんたの話! そのあんたには似合ってないダサいシャツ出しを直せって言ってんの!」


「翠、言い過ぎだ!」


 俺は翠をたしなめ、かばうように前に出ようとしたが、男子生徒は挑発に苛立ったらしい。


 ずんずんと翠に近付いて行くと、翠を思い切り突き飛ばしやがった。


「きゃあ!」


 翠が思い切り尻餅をついて、悲鳴をあげる。


 他の生徒達はざわざわと俺達を取り囲み、野次馬のように集まりだした。


 翠を突き飛ばした男子生徒はバツが悪くなったように背を向けて逃げようとする。


 ……逃すわけがないだろう。


「おい、ちょっと待て!」


「ああ?」


 男子生徒の肩を掴み呼び止めると、そいつは俺相手にも凄む。


 だが、早く逃げたいようで振りほどこうとするが、振りほどけないよう強く掴んだ。


「くっ、離せよ!」


「離す訳ないだろ? 俺の妹がした無礼な言葉は慎んで詫びる。 申し訳ない。 だが、それとこれとは別だ。突き飛ばしたのは見過ごせない。 翠に謝ってくれ」


「それは、お前の妹が……」


「それとこれとは別だと言っただろう? 謝ってくれ」


 言い訳を口にしようとする男子生徒の言葉を遮り、翠を指差しながら謝罪を要求する。


 周りは生徒の群れ、ここまで目立ってしまっては多勢に無勢と思ったのだろう。


「わ、悪かった。これでいいだろ、離せ」


 男子生徒は謝罪をして、俺の手を振りほどいていった。


 野次馬達は、翠を起こす事なく何事も無かったかのように散り始める。


 俺は翠の側に駆け寄ると、翠に手を貸した。


「翠、大丈夫か?」


「う、うん」


 翠は俺の手を取ってそっと立ち上がる。足にも手にも怪我は見当たらない。不幸中の幸いか。


「痛いところはないか?」


「うん、別に怪我もしてないから」


「そうか、良かった。……それにしても翠、あの言い方はダメだぞ。今回はなんとかなったけど、あのまま喧嘩になってたらどうするんだ」


「ご、ごめんなさい」


 俺が注意すると、翠がしおらしく謝る。相当怖かったのだろう。


 まあ、いつもみたいにうるさいなあとかいう訳でもなく、今回の件に関してはわかってもらえなきゃ困るからな。


 文句も言って来ないみたいで良かった。


「わかってくれたならいいんだ。今後は気をつけろよ。いいな」


「うん」


 最終的にもう一度翠に言い聞かせて、服装指導に戻っていく。


 さっきのがこたえたのか、翠も言い方に気をつけているようで、あまり丁寧な言葉ではないものの人を怒らせるような言い方をせずに注意していた。


 小さな事件こそあったものの、それ以外は何事もなく、今日もまたショートホームの遥か前に大体の生徒が校門を通っていった。


「ふう、終わったな。そろそろ戻ろうか」


 俺は大きく背伸びをして、翠に声をかける。


 翠がこくりと頷いたのを確認して、俺は校舎の方へ歩きだした。


「あ、あのさ」


「ん?」


 背中越しに、翠が俺を呼んで歩みを止める。


 振り向くと、翠は顔を赤くして少し俯いていた。


「そ、その、お兄、さっきはありがとう」


 ……どうやらうちの妹は感謝を口にするのが恥ずかしいらしい。思春期だなあ。


 俺は恥ずかしがる妹に対して微笑ましく思わずにやりと笑ってしまった。


「お兄ちゃんだからな。 当然だ」


 これは決まったんじゃかろうか。精一杯カッコつけて言ってやると、翠は少し照れたように笑った。


「……シスコン」


 失礼な!


 相変わらずの翠の減らず口を受けて、俺はやれやれと肩をすくめた。

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「俺は、土方を選びます」

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それは私のおいなりさん〜嫁いで来たのは最強に可愛い神様でした〜

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