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ワイバーン襲撃

「あわわわっ! ど、どうしよう! わ、ワイバーンが来る……! に、逃げないと! 」


 クリスはワイバーンの襲撃の知らせで混乱していた。

 村にいた時の話だが、ワイバーンは硬い鱗を持つ竜種で村一つをたった一匹簡単に滅ぼすほどの力を持っている。しかもそれが群れときた。

いくらギルドがあるとはいえ、一匹で災害レベルになる存在が来てるのは、はっきり言ってかなり危険な状態なのだ。

 外ならともかくここは都市、住民を守りながら戦うのはかなり困難と言える。戦えば必ず犠牲は出るだろう。

 ギルド内の冒険者は息を呑みながら、ワイバーンに立ち向かう準備を始めた。とはいえ、急な襲来に万全な状態で戦えるのはそう多くないかもしれない。

 そんな中、クリスはただひたすら震えていた。



『ふむ、ワイバーンか』


 しかし、クリスとは反対にクユマルは落ち着いていた。

 それを聞いてクリスは涙目で言う。


「ワイバーンだよ!? ワイバーン! どうしてそんなに平然としていられるのさ! 一匹だけで村が崩壊するほどの化け物なんだよ!?」


『たかがワイバーンごとき我の敵ではない』


 クユマルはいつもと変わらぬ口調で言った。


「……はい? と言うことは、もしかしてワイバーン殺れるの?」


 クリスは恐る恐る聞いた。


『無論だ。あんな雑魚では我の暇潰しにもならん』


(……もう、どこから突っ込めば言いかわからなくなってきたよ……)


 クリスは肩を落としながら思のであった。


「それならワイバーンを任せていい?」


 クリスは固い表情をしながらクユマルに聞くと、


『主がそう言うのなら』


 殺れというのなら何時でも行ける雰囲気を出しながら返す。


「お願いします」

『承った』


 クユマルはクリスの命令を受けると、肩に乗れるサイズから、クリスが乗れるくらいの大きさになった。


 正直急に使い魔が大きくなったら普通は驚いてなにか言いそうだったが、ギルド内は混乱に見舞われてたせいかあまりクユマルに対して突っ込みをいれる人は居なかった。


『では、主よ、戦地へ赴くとしようではないか』

「頑張ってきてねクユマ……ッ!? って私も行くの!?」


 完全にクユマルに任せて遠くから見守る気満々だったクリスは驚愕した。


『当たり前ではないか、主よ』


 クユマルは呆れたかのように言った。


「で、でも、私ひ弱だよ!? 魔法も使ったこともなければ、ほら見てよ、この平らな力瘤! 私じゃ、足手まといだよ!」


 クリスは自分を卑下しながら訴えた。


『無論、主に戦えと言っているわけではない、契約してる以上、余り遠くに居られると、魔力供給が断たれて戦いにくいのだ。だから主は振り落とされないように捕まっているだけでいい。それ以外は我がやる』


 クリスはどんよりして、


「わかった、私も行くよ……あははは……」


 死んだ魚の目をしながら乾いた声で笑う。

 こうして二人はワイバーンの群れに向かうのであった。


 後ろから「あぶねぇぞ!」「帰ってこい嬢ちゃん!」と過保護な声が聞こえたが、戦うことを余儀なくされてどうでもよくなってそれどころでは無かった。


 ギルドを出るとこっちに向かって、たくさんの住民が駆け込んできた。

 それを追うかのように一匹のワイバーンが迫って来る。


 すると、クユマルはさらに巨大化して体長が三メートルにもなった。完全に戦闘体勢である。


 クユマルが『ワオーン!』とが吠えると、ワイバーンは逃げ惑う人々からクユマルへと視線を変えて突撃してきた。


 クユマルはその場からは動かず、前足を地面に叩きつけた。すると地面から無数の氷の刃が出現し、低空飛行していたワイバーンを串刺しにした。

 それを察知したのか、周りから取り囲むようにワイバーンの群れが襲いかかってきた。今度はクユマルの周りから浮遊する無数の氷の刃が産み出され、そのまま周りを取り囲んでいたワイバーンに向けて発射された。

 氷の刃はそれぞれワイバーンの中心を貫き、飛んでいたワイバーンがドサドサと落ちていく。気づけば全てのワイバーンを討伐していた。

 呆気ないものだった、というか瞬殺だった。


 民衆は今の光景を見て、呆然としていた。それから一拍置いて、周りから歓喜の声が聞こえた。

 死ぬと思っていた絶望から解放されたのだから、喜ばない筈がない。

 だが、ずっとクユマルの背中にしがみついていたクリスは複雑な気持ちでいっぱいになった。


(この状況をどう説明すればいいの……)



 殺したワイバーンの数は10匹であった。ギルドのルール上、このワイバーンの死骸はクリスの所有物となった。ただ、こんな数のワイバーンを管理など出来るはずもなく、一匹を残してあとは全てギルドに売った。

 ちなみに、残しておいた死骸はクユマルおやつになりました。


 ワイバーン襲撃が一段落してギルドに戻ると、クリスは盛大に祝われた。なにせ、一匹で村を崩壊させるほどのワイバーン。しかも群れで現れたのにも関わらず、一人でやってのけたのだから。


 ただ、ギルドの冒険者たちは大きな勘違いをしていた。ワイバーンを倒したのがクユマルではなくクリスということになっていたのだ。当然否定しようとしたが、積極性のないクリスにはそんな度胸はない、それにこの状況下で通じるとは思わなかったため諦めた。


 そして、クリスは冒険者の間で『若き氷の魔獣使い』と呼ばれるようになった。


(はぁ、どうして私ばっかり……)


 そう思いながら頭を抱えるクリスであった。


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