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離縁と出会い

 牢屋に閉じ込められてどれくらい経っただろうか……何で生きているのか……なんのために産まれてきたんだろう……どうしてここにいるのだろうか……。


 目が虚ろな少女は呟いた。何度も何度も。


 少女の名前は『クリスティーナ=レーベル』

 

 通称『クリス』


 水色の瞳に肩まで伸びる銀髪、年は十歳。埃と無数の擦り傷で汚れてなければ綺麗な少女である。


 クリスは憂鬱な言葉を何度も繰り返した。そして毎回最後の言葉は両親との別れである。別れといっても感動の別れでは無かった。


 クリスは売られたのだ。自分の信じた家族に。


 そしてクリスは奴隷になった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 話しは一月前に遡る。


 クリスはごく普通の村で産まれ、活気が良く村人達からはかなりの人気があった。

 両親は二人とも茶髪に対してクリスは髪が白かった。

 この世界では白髪は魔女の象徴とされ忌み嫌われる存在なのだ。

 最初は少なからず村人からの嫌悪感は有ったが、クリスの明るさと前向きな姿勢により、それはすぐになくなった。


 そんなある日、両親が「たまには村の外に行かないか?」と提案してきた。

 クリスは今までずっと村から出たことないため、好奇心を隠しきれずに快く頷いた。

 もしここで遠慮していたら、クリスの運命は変わっていたのかもしれない。でもそれは後の祭りでしかなかった。


 クリスは両親とスラム街のようなところにやって来ると、周りにはガラの悪い輩が屯っていた。

 クリスは怖くて父親の手を両手で握る。

 すると前から黒服を着た二人組がやって来た。


「その御嬢さんが売りたいって子か?」

「ああ、そうだ」


 クリスは二人の会話を聞いて愕然とした。


(え? 今、私を売るって言わなかった? 嘘だよね?)


 クリスは今の会話を頭の中で否定した。


 しかし、現実とは残酷で非常なものである。


 クリスは黒服の二人組に連行されて牢屋に入れられた。そして嫌でも確定してしまった、自分が売られたという事実が。


(恐らくお父さんもお母さんはお金に困って仕方なく私を売ったのだ、きっと苦痛の選択に違いない)


 現実が受け入れられないクリスはそう思っていた。思うことにしたのだ。


 ――でも、お金を受け取ったときの両親の喜び様は凄まじかった。

 そして、止めに「これでまた遊んで暮らせるわ」という母の言葉が聞こえた。私は茫然とした。


 仕方なく売ったのではなく#遊楽なひと時を過ごすためにクリスを売ったのだ。


 クリスは怒りを通り越して頭が真っ白になった。それからというもの、寂しくて泣きじゃくって、黒服の奴隷商人に「うるさいっ!」と言われ、鞭で叩かれたり、両親に売られた時の記憶が脳裏に過る度に壁を殴ったりして荒れていた。


 それから暫く経って今に至る。今のクリスに感情と呼べるものは殆ど抜けてしまった。残るものは『虚無感』だけだった。


「お父さん……お母さん……何で私ばかり……」


 クリスは希望も何もない虚ろな状態で誰もいない空間にまたぼそりと呟いた。


 そんなある日、牢屋に黒服が丸っこくて太った人引き連れてきた。服装をみると恐らく高貴の人間だろうと思った。それと同時にきっとこの人の慰み者になってしまうのだろうかと脳内で想像してしまった。

 そんなことを考えていると、太った高貴な人がこちらに顔を近づけてきた。


「グヒヒ、これは上玉ですなぁ?」


 太った高貴な人は、不適切な笑みを浮かべて言った。


 クリスは鳥肌が立った。顎を指で添えながら舐め回すように見ると、奴隷商人の方へ顔を向け、こちらに指を指しながら交渉をし始めた。

 どうやら私を買うらしい。


 聞き耳を立てると内容は欲望にまみれた言葉だった。

 それと同時にこんなやつに犯されるなんて耐えられないと思った。でも、今のクリスに手段を選ぶことは出来なかった。


 太った高貴な人はまたクリスを舐め回すように観察して、顔を離すと、再び奴隷商人と取引を始めた。

 うっすらとだが、値段の値下げの交渉が聞こえた。――といっても今のクリスにはどうでもいい話であった。


 クリスは一週間後に売られることになった。その夜クリスは久々に泣いた。


(どうして私ばっかりこんな目合わなきゃ行けないの? 理不尽だよ! 横暴だよ! 私は憎い。今この時を幸せに過ごしてる奴等が憎い。殺してやりたい……)


 そんなことを思っていると、近くから音が聞こえた。


「え? なに?」


 辺りを見回してみると、排水口から一匹のちっちゃい狼のような魔物が出てきた。


 見た目は真っ黒で瞳は綺麗な銀色だった。


 小さな魔物はそのままクリスの方にかけてきた。


 クリスは距離を取ったもののすぐに壁にぶつかり、逃げ場を失った。


(嫌だ! こんなところで死にたくない……でも、売られるくらいならいっそ……)


 そう思って目をギュッと瞑ると、あとちょっとのところで小狼は倒れたようだ。

 それと同時に「グウウウ……」とお腹から音が聞こえた。どうやらお腹が減っているらしい。


 すると、クリスはもしもの非常食に取っ手おいた食べ物を懐から出して、小狼の前に置いた。


 それに気づいたのか、鼻をピクピクさせ、食べ物であると確認すると、勢いよくかぶり付いた。


 クリスはその光景を見てクスリッと笑った。気づけば、さっきまでの恐怖が嘘のように消えた。


 小狼は食べ終わると、クリスのところにすり寄ってきた。


(どうしよう、なんかなつかれちゃった……)


「ねえ? 君、どこから来たの?」


 と、クリスは聞いてみたが、小狼は不思議そうに小首をかしげて、「クーン」と鳴いた。


(まあ、わかるわけないか……でも、名前がないと不便だよね? どうしたものか……)


「君も一人? よかったら私と一緒に来ない? といっても一週間後にはここを離れることになるかもしれないけど」


 すると、小狼は嬉しそうに「クーン」とな鳴いた。


(あれ? もしかして通じてる? たまたまだと思いたい……)


「名前がないと不便だから勝手だけど付けさせて貰うね? うーん、あ、そうだ! 毛先がくるってなってるから今日からお前は『クユマル』だ! ……って安直すぎるよね……」


 クリスは小狼は新しく『クユマル』と名付けた。


 すると、手の甲から光が溢れた。


「え? なにこれ!?」


 光が収まると、狼のタトゥーが刻み込まれていた。


 そして今のクリスは知るよしもなかった。クリスが誤って契約した魔物の正体を。


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