どことも知れぬ田舎町の誰とも知らぬ少女の話
とある夏の昼下がり。
勢いを付けて堤防から川に向かって飛び込む。
少しの浮遊感の後、ザパーンという音がして視界が白い泡と水色で染まる。
ひんやりとした水が日に当てられ火照った身体を冷やしてくれる。とても気持ちいい。
そのまま水中に潜って景色を見ていると息が苦しくなった。
地面を蹴り、水面から顔を出すと友達がこちらを見ていた。少し心配そうな顔をしていたので、ニッコリと笑って手を振る。
「気持ちいいからみんなも来なよ!」
私がそう言うと、みんなは次々に飛び込んできた。
水面からザパーンという音とともに水の柱が何本も上がる。光を反射してキラキラと煌めくそれはとても綺麗だった。
私が見とれていると、不意に足を引っ張られて転んだ。
水中で犯人を探すと、すぐ近くに悪戯が成功した子供のような...まぁ子供なんだけど、そんな笑顔で希がいた。
私が仕返しとばかりに脇腹をくすぐると、彼女はがごぽっと口に含んでいた空気を吐き出してしまった。それがおかしくて笑うと、私も同じように空気を吐き出してしまった。
水面から顔を出すと、ふたりで顔を見合わせて笑いあった。
それからみんなで水泳鬼ごっこをした。
水泳鬼ごっこというのは簡単に言うと泳ぎありの鬼ごっこで、これが意外と面白い。
私達のプチブームだったりもする。
「じゃあ、鬼決めるよ!」
「「「ジャーンケーン ポン」」」
私がグーで、ほかの人はパーだった。うわぁぁぁ。
「じゃあ捕まったらその場で30秒だよ!スタート」
「1、2、3、4.......」
それから日が暮れるまで鬼ごっこをした。
終わった時にはみんなヘトヘトで、動けない程だった。
それからみんなで着替えをして、帰路についた。
山に沈んでいく夕日はどこか寂しげだった。