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第八章 6



「――おおっ! あれが噂の天冥樹かっ!」


 山より高い巨大な樹木を遠目に眺め、

 九郎は激しく揺れる馬車の中で声を張り上げた――。



 ハロウィン三日目の夕方――。

 

 『改ざんの石板』と『図書神殿』の情報を入手した九郎は、

 魔法研究者マガクの研究室に駆け込んだ。


 話を聞いたマガクは、九郎とマータの魔法契約を

 同時に書き換えれば内容の変更は可能だと即座に保証。


 その言葉に喜び勇んだ九郎は中央城塞の門を叩き、ハーキーに協力を要請。


 そしてすぐに宿屋に戻り、

 三人娘の尻を叩いて馬車に乗せて、天冥樹へと出発した。


 四人はイゼロンを夜中に飛び出し、軍用馬車で朝まで走り、

 途中の村で軍馬を替えてさらに走り、休みを取らずにひた走る。


 そしてとうとう日暮れ前に、天をく樹木が九郎の視界に飛び込んできた。



「うっほぉーっ! なんだあの木は! 話に聞いていた以上にでかいじゃねーか! 上の方なんか雲に隠れてぜんぜん見えねーぞ! なあっ!」


 土煙を派手に上げて、怒涛のごとく疾走する六頭立ての馬車の中で、

 九郎は窓枠にかじりつきながら車内の床を見下ろした。



「お……おふ……」

「はひ……はひ……」

「う……む……む……」



 床に転がるオーラとクサリンとコツメが、死にそうな声をかすかに漏らした。


 三人娘は分厚い布の上に倒れたまま、

 柱に結び付けた手ぬぐいを両手で握りしめている。


 顔は真っ青。

 息は絶え絶え。

 意識を半分失いながら、何とか馬車の激しい揺れに耐えている。


「おいおい、何だよ、おまえら。元気がねーな。二日も自由行動させたんだから、体はしっかり休めただろ」


 九郎は体をガックンガックン上下に弾ませながら、さらに言う。


「ほら、オーラ。念願のダンジョンが見えてきたんだぞ。もっと喜んだらどうだ? 見た感じ、幅も奥行きもイゼロンよりでかいから、ものすごいど迫力だぞ」


「お……おふ……。そ……それより……馬車……馬車……とめて……とめて……」


「ああ、安心しろ」


 馬車の揺れに合わせてバッタンバッタン弾んでいる三人娘に、

 九郎はにっこり微笑みかける。



「このスピードなら、あと一時間ほどで着くからな」



「おふ……」

「は……う……」

「く……くるしゅい……」



 九郎の言葉に、三人は白目を剥いて失神した。



「何だ、また気絶したのか。みんなけっこう、ひ弱だな」


 九郎は呆れ顔で息を吐き出し、再び天冥樹に目を向ける。



 そして、空の彼方まで伸びる巨大な樹木を眺めながら、瞳の奥を輝かせた。




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