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第五章 11



「――悪いけど、おまえらとは、ここでお別れだ」


 クリアとコツメとオーラとクサリンに、

 九郎は真剣な眼差しを向けて言い切った――。



 走り去った馬車を追って九郎たち五人が街道を歩いていると、

 ぽつりぽつりと雨が降り出してきた。


 小雨はすぐに本降りとなり、

 五人は街道沿いの大きな木の下に駆け込み雨宿り。

 そして九郎の魔法で服を乾かしていると、

 不意に馬車が戻ってきた。


 再び馬車に乗り込んだ一行は、

 夜になってようやく城塞都市イゼロンに到着。


 九郎たちはそのままクリアの邸宅に招かれ、

 冷えた体を温めるために大浴場へとまっすぐ向かう。


 すると不意に九郎が入口の前で足を止め、

 四人から距離を取りながら口を開いた。



「なぜならオレは男だからだ。おまえらと一緒に風呂には入れん。オレはおまえらのあとに入るから、遠慮なく四人で行ってきてくれ」


「まあ! クロロンは男の人だったのですかっ!?」


 クリアは口元に白い両手を当てて目を丸くした。


 すると突然オーラがにっかりと笑い、九郎の左腕にがっちりと腕を絡ませた。



「おうっ! そう言えば、そうだったな」

「うむ。そう言えば、そうだったな」

「はいっ。そういえば、そうでしたねぇ」



 すぐにコツメも九郎の右腕をつかみ、

 クサリンは九郎の細い腰を後ろから押し始める。


「おっ、おいっ!? こらっ! おまえらっ! なにをするっ!」


 九郎はとっさに体をよじって振り払おうとした。

 しかし、両腕を完全にロックされているので

 一歩たりとも抜け出せない。


 三人娘はニヤリと笑い、そのまま九郎を大浴場へと引きずっていく。


「おう、クリア。悪いけどドアを開けてくれ」


「はいっ! わっかりましたわっ!」


 瞬時に三人の意図を察したクリアは、顔を輝かせながらドアを開けた。


「ばっ! バカっ! おまえらいい加減にしろっ! こういうサービスシーンは最近じゃ流行んねぇーんだっつーのっ!」


「ふむ。相変わらずクロの言うことはよく分からないが、限定盤とやらにはこういうシーンが付き物らしいじゃないか」


「テメぇーっ! コツメっ! こんな時にオレの心を読むんじゃねぇーっ! オレは限定盤を見るのは大好きだが、自分が限定盤のネタになるなんてまっぴらゴメンだっ!」


「まあまあ。いいではないか。減るモンじゃなし」


「減るよっ! めっちゃ減るよっ! オレの精神力がすり減ってゼロになって死んだ魚のような目になったらどーすんだっ! このボケぇーっ!」


 九郎は細い両足を突っ張って全力で踏ん張った。

 しかし三人の力には抗えず、とうとう脱衣所に連れ込まれた。



「おう、クロウ。服はどうする? あたしが脱がせてやろうか?」


「ざけんなオーラっ! 絶対に脱がないし、脱がせねぇーぞっ!」


「おう、そうか。だったらもう、アレしかないな」


 オーラは意地悪そうに顔を歪め、さらに奥へと引っ張っていく。


 広い脱衣所の床は大理石で、

 奥の壁には棚といくつかのカゴが置いてあり、

 無数のランプが隅々まで煌々と照らしている。


 三人娘は棚の前まで九郎を引きずり、床の上に押さえつけた。

 

 九郎は桃色の髪を振り乱して抵抗したが、両足をクリアにつかまれ、

 完全にカカシとなった。



「クサリンちゃん! アレですわっ!」


「はぁい! わかってまぁす!」


 クリアの声とほぼ同時に、クサリンがしびれ薬を九郎の顔にふりかけた。


「ぶほっ! ぼほっぶはっ! こっ! こらぁっ! クサリンっ! おまえしびれ薬なんてざけんじゃ――うきゅっ!?」


 九郎の怒声がいきなり止まった。


 その両目は限界まで見開かれ、

 血走った眼球で四人をにらみ上げている。


 しびれ薬が利いた九郎に、クサリンは心の底から楽しそうに微笑みかけた。


「大丈夫ですよぉ、クロさぁん。すぐに動けるようになりますからねぇ」


「おう、クサリン、よくやった」

「うむ。今のタイミングは苦しゅうないぞ」

「さすがですわっ! クサリンちゃんのしびれ薬はよく利きますわねっ!」


「はぁい、もちろんでぇす。それじゃあ早速、ちゃっちゃと脱がしちゃいましょうかぁ」


「うむ。仕事は迅速に済ませるのが一番だ」


 言って、コツメは九郎のローブを素早くはぎ取り、近くのカゴに放り投げた。


「ではわたくしは、ブーツとズボンを脱がせますわっ!」


 クリアはすぐさま革のブーツを脱がせ、カゴの横に並べて置く。

 それから腰の革ベルトをゆっくり外し、ベージュのズボンを引っ張り下ろした。


「おう。それじゃあ、あたしは上着だな」


 オーラはこぶしの骨を軽く鳴らし、九郎の白い両腕をバンザイさせた。


 それからセーラー服とキャミソールを

 まとめてすぽんと頭の上に引き抜いて、

 脇の下まで真っ白な細い半裸をじっくり眺める。



「それじゃあ残りの下着は、わたしが全部、脱がしちゃいますねぇ」



 下着姿の九郎を見ながら、クサリンは鼻息荒く手を伸ばす。


 まずは靴下をぱっぱと脱がしてカゴの中に放り投げる。

 お次はピンクのリボンが付いた白いブラジャーを乱暴にはぎ取り、

 ニンマリ笑う。


 そして最後に、やはりピンクのリボンが付いた白いパンティーを、

 足の下まで一気に引きずり下ろした。




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