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第十章 7



「――よし、マータの家についたぞ」


 馬車から降りた九郎は、周囲を鋭く見渡した。



「とりあえずは大丈夫そうだけど、みんな、油断しないでついてきてくれ。何が起きているか分からないからな」


 言って、九郎は早足で前庭を駆け抜ける。

 そして素早くドアを開け、家の中に飛び込んだ。



「……誰もいないな」



 九郎は警戒しながら視線を飛ばす。



 人影は見当たらず、室内の空気は静まり返っている。



 広い居間はきれいに整えられていて、荒らされた形跡は見当たらない。

 大きな楕円形のテーブルも、

 九郎が出ていった時のままひっそりと佇んでいる。


 ドアが開くと同時にランプと暖炉に炎がおこり、

 暖かな光がソファやローテーブルを照らしている。


「こっちだ」


 続けて駆け込んできた全員に声をかけ、九郎はすぐさま寝室へと走る。


 そしてドアを開けた瞬間、思わず安堵の声が口から漏れた。



「――ああっ。よかったぁ。マータいるじゃん」



 ベッドの上には、鉄と化したマータの矮躯わいくが横たわっていた。


 九郎は駆け寄り、マータの首にそっと触れる。

 もげていた首はすっかり元通りに戻っている。

 指でなでて目を凝らしても、ひびの一つも見当たらない。


「おおっ、すげぇ。マジで傷が治ってる」



「――クロ」



 不意にコツメがナイフを抜いた。



「気をつけろ。何か奇妙な気配を感じるぞ」


「なに? 敵か?」


「うむ。わずかに殺気がある。おそらく敵だ」



 九郎は腰を低くして窓に近づき、外の景色に目を凝らす。


 マガクは周囲を警戒しながらベッドに向かう。

 

 オーラはドアの外に出て拳を構え、

 クサリンは盾の内側からステッキを引き抜いた。



「敵の人数は分かるか?」


「おそらく近くに一人。それと――」


 コツメは広い寝室の中央に立ち、意識を集中して気配を探る。


「……そうだな。少し離れた場所に二、三人。この雰囲気は戦場に似ている。もしかすると、数百人以上が近くに迫っているかも知れない」


「数百人か……」


 九郎は思案しながらベッドに戻り、鉄の老婆に目を落とす。


「コツメの読みが正しいとすると、近くに軍隊がいるってことだな。だとすると、今すぐ逃げるのがベストだ。しかし、魔法契約の変更は数分で終わる。だったら、さっさと終わらせて退散するぞ。ラノベやアニメみたいに、わざとらしくダラダラ引き延ばす必要なんかないからな。――マガクさん」


 九郎の声に、既にマータの様子を調べていた巨人が顔を上げた。


「悪いけど、超特急でオレとマータの契約書を変更してくれ」


「分かりました」


「念のため、オーラとクサリンはドアの外を見張ってくれ。コツメは窓の外の警戒を頼む。いざとなったら窓をぶち破って脱出するぞ」


「おうっ!」

「はいっ」

「うむ」


 三人は即座に表情を引き締め、配置に着いた。


 同時にマガクが、九郎とマータに灰色の手を向けて魔言を唱える。



「――パドロール」



 その瞬間、マガクの手のひらの上にどす黒い魔法陣が浮かび上がった。



 すると、九郎とマータの胸から光の塊が抜け出した。

 九郎は桃色、マータは青色に輝く光の球だ。


 光の球は二人の胸の前に浮いたまま、契約書に形を変えた。


「へぇ、オルピープの魔法じゃないんだ」


「はい」


 巨人はどす黒い魔法陣を消して、一つうなずく。


「パドロールは引き抜く魔法です。精神体に刻まれた契約書を引き抜いた方が、変更するには都合がいいのです」


「そうなんだ。それじゃあ――」


 九郎は指から改ざんの指輪を引き抜いてマガクに言う。


「早速、契約書を変更してくれ。内容は――」


「ここですね」


 マガクは契約書の一文を指さした。


「『――契約を交わしたのち、期限内にサザラン帝国の皇帝ジャハルキル・サザランの生命が絶たれなかった場合、召喚された救世主の生命は自動的に消滅する――』。この部分を書き換えましょう」


「さすがマガクさん。話が早い。それじゃあこの指輪で、この前みたいに書き換えてくれ」


「はい」


 九郎は改ざんの指輪をつまんでマガクに差し出した。

 マガクも大きな手のひらを九郎に向ける。



 するとその時、指輪が突然、宙に浮いた。



「えっ!?」



 唐突に飛び上がった指輪を見上げ、九郎は目を丸くした。


 すると、指輪の上の天井付近がぐにゃりと揺れて、御者の男が姿を現した。

 御者は天井に足の裏をつけてぶら下がり、腕を垂らして指輪をつまんでいる。


 よく見ると、両足の周囲には茶色い魔法陣が浮かんでいる。



「なっ!? 何だおまえはっ!?」



 九郎は仰天して声を張り上げた。



 御者は天井にしゃがみ込みながらニヤリと笑う。

 そして指にはめた土色の指輪を光らせ、元の姿に戻って言い放つ。



「どうやらテメーは、この指輪がないと死ぬらしいじゃねぇか」



「おっ! おまえはっ! 殺人コックじゃねーかっ!」



 九郎は反射的に棍棒を引き抜き、突き上げた。



 ギルバートはとっさに体をよじり、ひらりとかわす。

 そして再び幻影の指輪を光らせた。


 同時に空気が水面のように波打ち、ギルバートの姿が背景に溶けていく。



「へっ。俺をバカにした天罰だ。後悔しながらくたばりやがれ――」



 それは邪悪な笑みだった。



 ギルバートは一瞬で周囲の景色に同化し、完全に見えなくなった。


 九郎はとっさに腰のケースから飛苦無とびくないを引き抜き、声を飛ばす。


「オーラっ! ドアを閉めろっ! 部屋から誰も出すなっ!」


「おうっ!」


 オーラは瞬時にドアを閉めて背中を押しつけた。


 クサリンはオーラの前で盾を構え、上下左右に目線を飛ばす。

 コツメは大きな窓の前でナイフを握り、マガクは壁に背を押しつけた。


 巨人はさらに片手を前に突き出しながら口を開く。


「私が魔法であぶり出します。みなさん動かないでください。――スプリテル」


 瞬時に水色の魔法陣が浮かび上がる。


 灰色の手のひらの上に浮かんだ魔法陣は細かな霧を噴き出し始め、

 天井を覆うように広がっていく。


 するとほぼ真ん中付近に、人の形の歪みが見えた。



「そこかっ!」



 九郎は気合いを発し、組み立てた棍棒を全力で突き上げた。



 瞬間、ギルバートはギリギリで避けて床に飛び降りた。

 そしてカモフラージュを解除しながらドアの方へと走り出す。



「クサリン逃げろぉーっ! オーラは絶対にドアを開けるなっ! マガクさんっ! そいつは幻影の指輪を持ってるっ! 変身されるとまずいっ!」



 九郎はとっさに走りかけた足を無理やり止めて声を飛ばした。



 再び姿を現したコックコートはオーラに向かって突っ込んでいく。


 オーラは拳を構えてにらみつけ、クサリンはマガクの方に走って逃げる。


 マガクはクサリンとすれ違い、岩のような拳をギルバートに振り下ろした。



 瞬間――ギルバートはとっさに壁にジャンプした。



 灰色の拳は空を切り、分厚い床をぶち抜いた。


 同時にコックコートは壁を蹴り、巨人の拳に飛び降りる。


 さらにそのまま丸太のような腕を踏んで素早く走り、

 クサリンの背中に突っ込んだ。



「きゃっ!」



 体当たりされたクサリンが派手に床に転がった。



 そして慌てて立ち上がると、そこにはクサリンが二人いた。



「「えっ!? わたしっ!?」」



 二人のクサリンが同時に驚愕の声を張り上げた。


「くそっ! やられたっ! クサリンに化けやがったっ!」


 九郎はクサリンたちの前に駆けつけ、困惑しながら棍棒を振りかざす。



「クロさん! わたしが本物です!」

「いえ! わたしの方が本物です!」



 右が声を上げたとたん、左も慌てて両手を振る。


 九郎は両目を見開き、二人のクサリンを凝視した。


「くっそぉーっ! なんてこったっ! 分からないっ! どっちもまったく同じに見えるっ! だがしかぁーしっ! 本物ならばオレの質問に答えられるはずだっ! いいかっ! よく聞けっ! 今日のオレのパンツは何色だっ!」



「はいてませんっっ!」

「茶色ですっ!」



 右と左が同時に声を張り上げた瞬間――九郎は棍棒を真横にフルスイング。


「声の位置でバレバレだボケぇーっ!」


 九郎の頭の位置で真横に振られた棍棒は、右の頭上を通り過ぎ、

 左の頭上で何かに激突した。



 そのとたん白い粉が勢いよく噴き上がり、

 左のクサリンがギルバートの姿に戻った。



「……おいおい、パンツぐらいはけよ。きたねぇなぁ」



 大きな白い袋で棍棒を防いだギルバートはニヤリと笑う。


 そしてさらに袋の中身を部屋中にばら撒き始める。


 それはきめの細かい真っ白な粉末だった。

 粉は瞬時に充満し、広い寝室はあっという間に白く染まった。


「くそっ! 目くらましか! クサリン! こっちに来い!」


 九郎は駆け寄ってきたクサリンを引き寄せ、

 粉を振り払いながら後ろに下がる。



 その瞬間、手についた粉を見て、はっと鋭く息をのんだ。



「やばいっ! 全員床に伏せろぉーっ! 目と耳を塞いで息を止めるんだぁーっ!」



 九郎はとっさに棍棒を投げて窓を割り、

 床に倒れ込んでクサリンの頭を抱きしめた。



 直後――ギルバートの投げた火打ち石がマータに当たって火花が散った。




 瞬間、寝室が激しく爆発した。




 穴の開いた窓が爆風で砕け散った。

 猛烈な爆炎が外に向かって噴き出した。

 爆圧の衝撃で家が揺れ、轟音が空の彼方まで貫いた。




「……く……くそ……」




 すべてが黒く焦げた寝室で、九郎がふらつきながら立ち上がった。



 爆風と爆炎が過ぎ去った室内の家具は、ほぼすべてが破壊されていた。

 ベッドより高い位置にあった物はもれなく爆裂状態だ。



「……あー、あー、あー、よし。目も耳も大丈夫そうだな。みんな、無事かー?」



 九郎はクサリンの手を引いて立たせ、室内を見渡した。


 窓の近くにはコツメが片膝を床につけてナイフを構えている。

 ドアの前には立ち上がったばかりのオーラとマガクが

 周囲に目を走らせている。



「……おい、クロウ。今の爆発はいったい何だ? さっきのヤツの魔法か?」



「いや。あれは粉じん爆発だ」



 オーラの質問に、九郎はベッドに目を向けながら淡々と答えた。

 黒い鉄の塊は元のまま横たわっている。

 どうやらマータの体は無事のようだ。



「あの殺人コックは小麦粉を振りまいたんだ。あんなクソヤローにこんな知識があるとは思わなかったが、とにかく、ああいう細かい粉をバラまいて火をつけると爆発するんだ。だからとっさに窓を割って爆発のエネルギーを外に逃がしたんだが、全員ケガはしてないか?」


「おう、あたしは大丈夫だ」

「わたしも大丈夫です」

「うむ。苦しゅうない」


「私も無事ですが――どうやら爆発した隙に、逃げられたようですね」


 マガクの顔がわずかに歪んだ。


「たぶんな。だけど、全員その場で止まってくれ」


 九郎は左右に腕を広げ、四人の動きを制止した。


「ラノベやアニメだとこういう場合、逃げたと見せかけてその場に隠れていることがけっこうあるからな。マガクさん。悪いけど、さっきの霧の魔法をもう一度頼む。オーラとコツメは戦闘態勢。クサリンはオレの後ろでハトバクの準備だ」


「分かりました。――スプリテル」


 巨人の手のひらの上に現れた水色の魔法陣が、瞬時に霧を噴き出し始める。

 しかし床にも天井にも、ギルバートの姿は見当たらない。


「よし。ここにはいないようだな。だとすると、やはり窓から出ていったか」


 言って、九郎はすぐに窓から飛び出す。



 そして落ちていた棍棒を拾い、周囲を見た。



 裏庭は、前庭と同じくらいの広さがあり、

 うっそうと茂った森との境い目には小川が流れている。



「コツメ。あいつがどっちに逃げたか分かるか?」


「……そうだな」



 続けて外に出てきたコツメが地面を見ながら歩き出す。

 すぐにかすかな痕跡を目で捉え、裏の森を指さした。



「うむ、あっちだ。西にまっすぐ走ってる」


「やはりそうか。しかし、こいつはまいったな……」


 九郎はぽつりと呟きながら、コツメの肩に右手をのせる。

 さらにそのまま額ものせて寄りかかり、大きな息を吐き出した。



「――おう。どうした、クロウ。追いかけないのか?」



 マガクとクサリンに続いて出てきたオーラが声をかけた。


 九郎はすぐに顔を上げたが、地面を見下ろし、首を振る。


「……あの殺人コックは、見た目を自由に変えられる幻影の指輪を持っていた。しかも背景に溶け込める能力まであるみたいだから、追跡するのはかなり難しい。部屋の中ならまだしも、森に逃げ込まれたら、見つけ出すのはほとんど不可能だ」


「そんなもん、やってみないと分かんねーだろうが」


「それはたしかにそうだけどさ……」


 九郎は不意にしゃがみ込み、地面に両手をつけてうな垂れた。



「おい、どうしたクロウ――」



 声をかけたとたん、クサリンがオーラの手を引いて制止した。


 オーラが振り返ると、後ろに立つマガクも首を横に振っている。

 コツメも九郎から目を逸らし、空の彼方を眺めている。


 それでオーラもようやく気づいた。

 

 赤毛の剣士は一つ息を吐き出し、

 動きを止めた九郎から顔を背けた。




 そうして一、二分が過ぎたころ――九郎がふと呟いた。




「……これはやばい」



 九郎は慌てて立ち上がり、四人に向かって声をかけた。



「悪い、みんな。ちょっとショックを受けて頭が混乱していた。今すぐ馬車から馬を切り離すぞ。そして馬に乗って、殺人コックを追跡するんだ」


「おうっ! そうこなくちゃな!」


「いえ、少し待ってください」


 声を上げたオーラの前に、マガクが一歩踏み出した。


「どうしたんですか、クロウさん。何か気づいたことでもありましたか?」


「ああ。気づいたというより、度忘れしていた」


 九郎は腕を伸ばし、周囲を指さしながら口を開く。


「コツメがさっき、数百人以上が迫っているかもって言ってただろ? 村人が逃げ出した村に残ってるヤツらなんて、どう考えても友好的なはずがないからな。しかもさっきの爆発音を耳にしたら、そいつらは必ずここに駆けつけてくる。つまり、ここからさっさと退散しないと、オレたちまで危ないってことだ」


「なるほど。それはたしかにそうですね」


「とりあえず馬車で村の外に出よう。よく考えたら馬を切り離す時間も惜しい。マガクさんとオーラとクサリンは、このまま馬車に行って準備をしてくれ。コツメはオレと一緒に寝室に戻るぞ。マータの体を馬車まで運ぶんだ」


「うむ」


 マガクとオーラとクサリンは、すぐに家の脇を通って前庭に駆けていく。


 九郎とコツメは寝室に走り、マータの体を担ぎ上げる。

 

 そして馬車に運び込んで降ろしたとたん、

 御者台に立ったクサリンが鋭い声を張り上げた。



「――クロさんっ! 大変ですっ!」



 客車にいた九郎とコツメは顔を見合わせ、慌てて外に飛び出した。



 すると、村道のはるか彼方に土煙が上がっていた。



 マータの家の前の道は南北に伸びているが、

 そのどちらの先にも土煙が立ち昇り、不穏な気配が迫ってくる。



 九郎は目を凝らしたが、遠すぎてよく見えない。

 しかし、何やら旗のようなものがかすかに見える。



「何だ、ありゃ?」



「ふむ。あれは騎兵団だな」



 御者台に飛び乗ったコツメが淡々と言った。



「全員が銀色の鎧を着て、長い槍で武装している」


「くそ! おまえの読みが当たったか! どこの軍隊だか分かるか!?」



「――あの旗は、アルバカン王国の正規兵です」



 目を凝らしていたマガクが横から答えた。



「なんてこった! 最悪だ! コツメ! 敵の数はどれくらいだ!」


「南北合わせて、百騎ほどだ。百五十はいないだろう」


「百か……。それほど多くはないが、騎兵は足が速い。その規模だと歩兵を四百ほど連れていてもおかしくないな」


 九郎は周囲に視線を飛ばしながら考える。


(……道は既に塞がれたか。そうすると森に逃げるしかないが、どうする? 逃げるか? それとも迎え撃つか?)


「おい! クロウ! もうすぐ敵が来るぞ! どうする!」


「ちょっと待て! いま考えてるっ!」


 拳を叩き合わせたオーラに九郎は怒鳴り、思考を加速させる。


(……敵は百騎。完全武装の正規兵。武器は長槍ちょうそう。剣も持っているはず。こちらの戦力は五人。しかし、マガクさんにオヤカタと同じ戦闘力があるとしたら、勝算はじゅうぶんにある。とはいえ、無傷で勝てる可能性は高く見積もっても三割ほど。ならばやはり、騎兵では追跡しにくい森に逃げ込んだ方が生存率は高くなる……)


 九郎はすぐに腹を決め、マガクを見上げた。


「マガクさん。さっきの霧の魔法って、目くらましにも使えるかな?」


「はい。スプリテルは水を生み出す魔法ですが、そういう使い方も可能です。森の中なら、さらに高い効果が見込めます」


「さすが。考えてることは一緒だな」


 九郎はマガクとうなずき合い、すぐさま声を張り上げる。


「よし! それじゃあ全員、馬に乗って森に逃げるぞ! コツメは馬と客車をつないでいるハーネスを切ってくれ! クサリンはコツメと二人乗りだ! 先頭はオーラだ! オレが一番後ろを走る! いいなっ!」


「うむ」


 コツメは御者台から飛び降りながら小太刀を抜刀。

 素早くハーネスを切っていく。


 オーラも即座に駆け出し、先頭の馬に飛び乗った。

 マガクはクサリンを抱えて馬に乗せる。


 九郎も馬に近づき、マータの家の脇を指さして声を飛ばす。


「オーラは先に行け! 道を確認するんだ!」


「おうっ!」


 オーラはすぐさま馬首をめぐらせ裏庭へと突っ走る。

 

 しかし家の横を通り過ぎる前に突然止まり、血相を変えて駆け戻ってきた。




「――クロウ! 敵だぁっ! 森からも敵が来たっ!」




「なにぃっ!?」




 驚愕が九郎の全身を貫いた。



 直後、マータの家の左右から突如として現れた騎兵団を視認して、

 両目を限界まで見開いた。




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