リステック一の水産都市 ダル B
「がはははは!ではこれから、俺がどれだけ凄いのか、手取り足取り教えてやろう」
いや、頼んでませんから。
それよりも……。
「おっさん、いつの間に帰ってきたの?」
「ん、なんだ。細かい事は気にするな」
気にするな、て、いや、さっきまでシャチと戯れ……まあいいや、言われた通り気にしないで置こう。
おっさんの正体も気になる所だし。
「それではまずだな、あそこに黄色のボールが浮かんでるのがわかるか」
おっさんが指差し、ぼくはその方向に目を向けてみた。
確かに、黄色っぽいボールが、指差す場所らへんを浮かんでいる。
「あそこまで船を寄せるでな」
おっさんは船の小部屋へ入り、舵をとって船を進ませる。
急発進させるじゃないかと思って、近くにあった取っ手みたいなのを掴んで身構えていたんだけど。
ゆっくりボールに近付いててくだけ、少しガッカリした。
適度なとこまで船は進み、中からまたおっさんが出てきた。
「よし、でな、あいつを取るぞ」
「あのボールを?」
「おう」
あんなガラクタを拾ってどうするんだろ。
「……これを使うのだ」
おっさんが取り出したのは変な棒っきれ。
先っちょが丸まってる、尖がってもいる。
で、渡されてもなあ。
……いらない。
「おおおおい、捨てるな!」
おお!ナイスキャッチね。
「……全く、俺が見本見せるから、こいつを使って、な、うまく、ボールの下をすくう」
「そして捨てる」
「ティコやめろ!持ち上げるな!」
何かツマラナイんで、もう一回海に落としてみたら面白いんじゃないかな。
そんなノリでおっさんを持ち上げた、ら。
またまた船が激しく揺れるっ。
「ピー助もやめろ!」
……ピー助、たぶんあれだね。
海に居る黒い影、さっきのシャチ何度船に頭をぶつけてる。
あ、落ちた。