リステック一の水産都市 ダル 8
目を覚ましたばかりの僕に飛び込んできた光景は、どでかい顔二つ。
なんて異様な光景……。
「アンタ、急にお湯なんかぶっ掛けるんじゃないよ。この子が可哀想だろ」
「のんびり寝てる奴にゃぁ、これが一番なんだよ!」
「一体誰のせいでこんな事になってるのか分かってるのかい!?」
正方形ばばあが、おっさんの頬を抓った。
「いべべべべ……」
おっさんの顔が歪んで、目からは涙のようなものが湧き出てくる。
「うるへぇ!ひるかっ!」
多分、文句言ってる。
ばばあも、ちゃんと意味を聞き取ったみたいで、抓りにねじりを加えた。
このあまりに強烈な技に、おっさんの顔は更に歪む。
目からウロコ垂れ流し。
「ひぃーふまねえ、おっはあ!おへはわふはった!」
今のはなんて言ったのか、僕にはさっぱり分からない。
でも、ばばあは分かったみたいで、技からおっさんを解放した。
「痛えよー……」
正方形ばばあ、強っ……。
そして、ひとしきり制裁を終えたばばあは、今度は僕へと襲いかかるっ。
「ひぃぃ!ごめんなさいぃぃ!」
顔を近付けてきたばばあから、僕は恐怖のあまり、反射的に自分の顔を覆った。
「あらやだ。命の恩人にその態度、困るわぁ」
命の恩人?!
嘘だ、僕は騙されないぞ!
何故なら、今こうして攻撃受けているから……ゴホっ!
息が……息が……息がーーっ!!
「あら!また意識を………………」
生ゴミのニオイを三倍以上も濃縮されたような、とてもこの世に存在しちゃいけない、それほどの強烈な悪臭をモロに食らい、僕は二度旅立つ。
ばばあの騒ぎ声を子守唄に……。