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「生」の条件  作者: 永谷 園
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第2話 上村さん

お久しぶりです。第1話を書いてから半年過ぎましたが、なんとか終わりまで書いてみたので見てくださるとうれしいです。全3話になります。長いこと時間がかかったわりには普通にへたっぴですが、とにかく肩の荷がようやく少し軽くなった気がします。

 上村さんは公園に住んでいて、近所の子どもたちからは「カミさま」と呼ばれ親しまれていた。


 初めてカミさまに出会ったのは、2年生の時だった。友人のトオルとテツヤが殴り合いのケンカを始めた時、ベンチに座っていたカミさまがやってきて、二人を仲裁してくれた。それ以来見かけるたびに話すようになって、次第に一緒に遊んでくれるようになった。


 カミさまは公園に住んでいるくせに妙に上品なオーラを纏っていた。小汚くなっている一張羅も、蓄えているヒゲも妙に整っていて、ちょっとした仕草などから育ちの良さというか、英国紳士のような上品さを醸し出していた。また博識で、とてもたくさんのことをよく知っていた。全体を通して、公園に住んでいるとは思えないほど人間ができていた。

 ある日、ものすごく黒くてものすごく縦に長い車が公園の前にとまった。そして、その車からでてきた偉そうなおじさんがカミさまになにやら話してかけていた。おじさんはカミさまのことを「会長」と呼んで、しきりにペコペコ頭を下げて何やらお願いごとをしているようだったが、カミさまは受け入れる気はないらしく、終始困った顔をしていた。


 いったい何者なのかは未だにわからないが、悪い人ではないと思う。たぶん。



 カミさまなら、僕のことを馬鹿にしたりはしないだろう。僕は意を決して、カミさまに質問をしてみた。

「カミさま、僕はどうして生きているんだろう」

自分でもなに言ってるんだろうと思う。カミさまはきょとんとした顔をした後、考え込んでからこう答えた。


「わからん」

カミさまはそう言って、少し恥ずかしそうに笑った。


 なんだ。カミさまでもわからないのか。

僕の落胆が顔に出ていたのか、カミさまは少し間をとってこう付け加えた。

「でも、私も知りたいなぁ。一緒に考えてもいいかい?」

おめでとう。カミさまが仲間に加わった。


「ちょっとついてきて」

そう言うとカミさまは公園の外へと歩き始めた。

こんな昼間から公園にいるような得体のしれないおじさんについていくところを知り合いに見られたら、誤解されて通報されてしまいそうだ。いや、もしかしたら誤解でない可能性だって捨てきれないが。そんな風に考えて、念のためカミさまの数歩後ろを僕が歩き、はたから見た限りでは2人が一緒に歩いているようには見えないよう移動することにした。世知辛い世の中になったものだ。と、この前テレビで誰かがぼやいていた。


 まるで江戸時代の女房のように、カミさまの3歩後ろあたりをあるいていると、だんだん周りの景色に緑が増えてきた。どうやら町の裏山のほうに向かっているようだった。山に近づくにつれて人も少しずつ少なくなっていく。もしかしたら僕は今、本当に通報したほうが良い状況下にいるのかもしれない。カミさまは、知り合いの子供たちからは謎の人気を誇っているが、世間の大人たちからは奇異の目で見られているということは僕にもわかっていた。頭の中で、いつの間にかカミさまへの信頼と不安が、戦争を始めようとしていた。


 だいぶ不安の軍勢が優勢になってきていたころ、周りはすっかり緑に囲まれてしまっていた。そしてついに、歩いている先に立ち入り禁止の立て札がナナメバッテンの形になった紐とともに現れた。カミさまはなんのためらいもなくその紐を軽く持ち上げてくぐり抜けていった。ここをくぐったら、もう後には引けない気がする。僕が躊躇っているとカミさまが言った。

「大丈夫。この山はもともと私の山だ。誰からも怒られはしないよ」

そう言ってカミさまは僕も通るように促した。僕は怒られるのが怖くて止まったわけではなかったのだが。というかここはあなたの持ち山なのですか。突然の爆弾発言の衝撃で言いたいことがうまくまとまらない。まぁ今更引き返すのもなんなので、結局くぐることにした。


 さらに少し歩くと、まるで山の中の一部を丸く切り取ったかのように、木々の中にぽっかりと空いている広場があった。

「さぁ、ついたぞ」

どうやらカミさまの目的地に到着したらしい。そのスペースからは、裏山から町全体が一望できるようになっていた。

誰かがお手製で作ったのだろうか。明らかに公的に作られたものではないような、長い木を切っただけの長椅子が置いてある。


「どうだ、いいところだろう」

カミさまは満足げに笑った。


「確かにいいところだけど……、ここでなにをするの?」

ここへきて当たり前の質問をしてみる。今更だが僕もよくノコノコとついてきたものだ。


カミさまはしたり顔でこう答えた。

「何もしないを、するのさ」


不安の軍勢の勝利の雄叫びが聴こえた気がした。

最終話は、推敲をもう少ししてからアップします。最終話だけほかのよりちょっとだけ長くなりそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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