祠と 蒼玉
なんで転移なんかさせてしまったんだろう?
いらない描写だった気がする。
「まさか 帰り道に転移が仕掛けられているとは」
単刀直入に言うと この状況は まずい。
帰り道を歩いていると 飛び石の中心部へ飛ばされてしまうのだ。
つまり 進めないし、戻れない。
僕達は 閉じ込められました。うん。
「前がダメ 後ろがダメなら第3の選択肢に行くか?夏場だからまだ 行けるだろ。」
湖を見ながら、レイムに提案してみる。
「先輩、先行ってください。濡れ損は 嫌なので」
思った通りの言葉が返ってきた。
「まぁ いいかぁ」
飛び石があるということは それ程深くない湖のはず。僕は 深さを確認しようと 腕を湖の中に入れてみた。
「うわぁ!」
僕は 叫び声を上げた。あまりに大きく飛びのけたので反対側から落ちそうになった。
「先輩、大丈夫ですか?」
レイムが心配する。
「今は 大丈夫。待ってもう一回やってみる。」
今度は 慎重に湖に 腕を入れる。
水に浸かっている部分から 力が抜けていき、それが段々と侵食してくる。
そして僕は意識が遠のき始めたとき 腕を戻した。
「間違いない、この湖は生気を吸うな。」
ファンタチックな ゲームだとしたら ここは 魔力と表示されるだろうが 一応ここは 現実だ。僕が今魔力を持っていない事はわかる。異世界転移とか してれば そんなことが 言えたのになぁ。
「逃げ道ないじゃ ないですか。」
「とりあえず 走ったから僕は水が欲しい。」
「水ならいっぱいありますよ。」
「そんな 危なそうなの飲みたくない。」
飲んだら最後 永遠に生気を抜かれ続ける可能性がある。
「嗚呼、折角ファンタジックな建物があるのに…」
呟いたが レイムの反応はない。
沈黙が流れる。
結構時間たったような気がするけど 今何時だろう?山についた時は確か午後三時だった。
[圏外 2:30]
2時か…さらに 圏外か…
電話は 使えないなぁ
「先輩 今時計見てましたよね。何時でしたか?」
「2時半だった。…………待て…」
僕は もう一回スマホを確認する。
[圏外 2:30]
「深夜2時半…………………………ありえねー」
太陽の向きは 普通だ。別に夜だとかそういうのでない。
だが 時計は 深夜を示している。
「先輩。それ 丑三つ時じゃないですか?」
レイムが 自分のスマホ画面を 見ながら言った。どうも彼女の時計も 深夜を指しているらしい。
丑三つ時とは いわゆる 幽霊がよくでる時間帯である。もともとは 牛の刻 四つに分けた時の三番目の刻、つまり 現代でいう深夜2時半がよく出るという話だ。
「折角 ファンタジーだと思ったら。危険な代物だったとはなぁ。」
僕は 落ちないよう注意しながら飛び石の上で寝転ぶ。
いい手は無いものか?
僕は ポケットを探ってみた。中に入ってたのは
「ナイフか…。レイム何か持ってないか?」
僕は レイムの方をみた。
「私は 手ぶらです。」
レイムは 手の内を見せるかのように 手を広げる。
もう 他に 道具はないってことか…
あと僕が持っているのは…
僕は ポケットでは なく 自分のウェストポーチを探る。
見つかったのは
メモ帳、ボールペン、ライト、マッチ、等…
役に立たねぇ…
・
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どれぐらい時間が たったのか
僕は スマホを見る。
[圏外 2:30]
そうなんだよなぁ
でも 周りの景色は黄昏ている。多分6時過ぎぐらいだろう。
もう 僕らは 諦めムードである。 色々思いつく限りを試してみた。 だけど 大体が期待を裏切る。
飛び石が 結構広いからと言っても こんな水が周りに 配置されている中で寝るのは 自殺行為だ。
そのような 会話をしていたのだが、そのようなことしか、 やることがない。
「あぁ 喉乾いた…」
僕が呟いてみる。
返事はない。
「食料ないよなぁ」
また 呟いてみる。
また返事はない。
レイムの居るべき方向を見てみる。
胡坐をかきながら 目を瞑っているレイムの姿があった。
多分 寝ている。
1人になったな………
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・
月が出ている。今日は満月らしい。
昔 中国のある人は 雪を積み重ね 月光を反射させて夜 書物を読んだらしいが、無理だと思う。真っ暗だ。
僕のウェストポーチに入ってたライトは 安物なので いつ切れるかわからない。なので 眠くなるまで使わないということになってる。
そして、暗くてよく見えないが レイムは 起きているはず。
スマホを 見てみる。
[圏外 02:30]
見飽きた…………………
相変わらず この 時間を指している。
僕は 眩しいのですぐに スマホを 閉じた。
ひとつ 言っておくと レイムとは ずっと口を聞いていない。補給等が一切できないからだ。喉乾いた。
そんなこと考えながら 何となく周りを探る。
目は多少なれてるはずだが 何故だろう ほとんど 見えない。
暗くて 何もしてないと
「眠い…」
ポーチのライトに手をかけ、スイッチを入れる。
次の瞬間 僕の手元からLEDの光が走る。
「そうですか、私は まだまだ大丈夫ですが…」
レイムは 言う。 寝てたもんね…
何となくライトで 周りを照らしてみる。そして 目にしたものから 一つの言葉が先走った。
「また 転移してたっぽいね。」
僕の言葉に レイムは 同意する。
ライトを照らした目の前には 件の祠があった。
初ブクマが 外されました…